第189話京太の夢?


食事を終えても、夢の事を考えていた。




――最後の声は、間違いなく、アトゥムだよな・・・・・


  それに、『負の遺産』って、何だろう・・・・・・




京太は、受け継いだ記憶の中から負の遺産について思い出そうとしたが、

中々思い出せない。




「どうしてだろう?・・・」




1人悩む京太に、救いの手を差し出したのは、

そこに現れたアイシャ、ラゴ、エクスの3人だった。




「主、何を考えているのですか?」




京太は、昨日の夢の事を話す。




「昨日の夜、夢と言うか・・・・・・

 記憶なんだけど

 不思議なものを見たんだ」




「はい」




「だけど、思い出そうとしても、上手く思い出せないんだ」




「それは、どの様な夢なのでしょう?」



「うん、上手く思い出せないけど・・・・・」




京太は、3人に、ゆっくりと思い出しながら話す。


話を聞き、アイシャは答えに辿り着く。




「それは、『バーレン』の事ではないかのぅ?」




「えっ!」




バーレンの名を聞いた途端、京太の頭の中に、記憶が蘇る。




――これは!・・・・・・



「主、思い出せたのですか?」



「うん、その名前を聞いた途端に、ある程度の事は、思い出せたよ」



その返事を聞き、『では』と、

エクスは、当時を語り始める。



「先ずは、バーレンと神について話しましょう。


 バーレンは、元々獣人達が暮らす大地でした。


 ですが、当時、絶大な力を持つ竜魔人の軍が攻め込み、

 その地で暮らす者達を全滅に追い込みました」




話を続けるエクス。



「ここからが、このバーレンという大地が、

 厄災と言われる始まりです。」



そう、前置きをしてから語る。



「この地を制圧した竜魔人達は、

 獣人の死体を使い、神を召喚のする為の儀式を始めました。


 ですが、この儀式で召喚されるのは、

 主の知っている知識と力などを与えた神ではなく、

 神をかたった上位悪魔です。


 竜魔人達により、召喚された上位悪魔は、

 更に、獣人の死体を使い、新たな仲間達を召喚し始めました。


こうして、数を増やそうとしたのですが、

我らの神の耳に届く事となり、

地上で、悪魔が闊歩することを許さない創造神アトゥム様は、

【魔法の神イシス】様、【大気の神シュー】様、【太陽神ラー】様の

3名に命令し、悪魔退治と儀式破壊の任を与え、地上へと送り出したのです。


ですが、バーレンに辿り着いた時には、既に儀式が始まっており

3人の神は、儀式を破壊する為、悪魔の討伐に向かいました。


しかし、圧倒的な数で立ち塞がる竜魔人に対して、こちらは3人。


その結果、思うように儀式破壊も出来ず、新たな召喚を許してしまわれました。



そこで、今すぐ、倒す事が難しいと判断した大気の神シュー様と、

太陽神ラー様は、魔法の神イシス様の魔法に望みを託し、

迫りくる竜魔人達の対処をしながら、お2人が時間を稼いで

魔法の神イシス様の魔法で

バーレン全体を、結界内にを閉じ込める事に成功させたのです」



こうして、閉じ込める事に成功した神々は、

もう一つの策も施す事に決める。


それが、バーレンを、この世界から消す。


正しくは、その場には存在しているが、光の屈折などで、見えなくした。


そして最後に、2人の魔力も借りて、

この世界で生活している者達の記憶から、

バーレンという存在を消し去ったのだ。



それから、数百年後、この世界の事を京太に託し、神達は消滅した。


その時、全てを受け継いだ筈の京太が、思い出せなかった理由・・・

それは、京太が、記憶を受け継いだのは、神にこの世界を託された時。


全ての能力と記憶を引き継いでいても、

直ぐに発揮できるものではない。


その証拠に、この地上に降り立ち、

初めて、人族に天罰を与えた時は、

感情だけで魔法が発動したこともあった。


それは、能力だけに留まらず、記憶も同じ。


深い場所に、あるものほど曖昧で、

全てを思い出すには、

切っ掛けが必要なのだ。


今回のケースでは、夢とアイシャの発した地名。


2つが揃い、京太は、深い所にある記憶を、呼び起こせたのだ。




だが、話を聞き終えた京太には、疑問がある。



「それなら、エクスは、なんで、そんなに詳しく知っているの?


 それに、この事を知っている事も不思議に思うのだけど・・・・・・」




当然の質問に、エクスを始めとする3人が答える。




「主、私は、その場にいました。


 それに、私には、記憶の消去は、効きません」



衝撃の発言。



「エクスは、そのバーレンでの戦いの時に、参加していたって事?」




「はい、私は、魔法の神イシス様の腰に、ぶら下がっていましたから。




「そうだったんだ」




見た目と年齢のギャップに驚く京太。




――エクスは、クオンの事、

  『お姉ちゃん』って呼んでるけど幾つなんだろ?・・・・・・・

  聞かないかない方が、いいよね・・・・・・




そんな事を考えていると、ラゴと目が合う。




「ん、わらわが知っている事も、不思議なのか?」




「まぁ、そうなんだけど・・・・・」




「わらわは、当時、ふざけた力を持つ若者達と旅をしていたからじゃ。


 皆からは、『勇者』と呼ばれておったぞ」




「ええっ!」




京太だけでなく、周りで聞いていた2人も驚いていた。




――勇者がいたんだ・・・・・




「ラゴは、勇者の前で、人型にならなかったの?」




「うむ、わらわにだって選ぶ権利がある。


 それに、奴には、他に愛用していた剣があったからのぅ・・・・・」




ラゴは、話しをを続ける。




「あ奴が愛用していた『デュランダル』は、我儘なやつでのぅ、

 勇者が、王国に借りておったあの剣を返上した後、

 保管されていた宝物庫で、勝手に人型に変身して、

 何処かに行ってしまったのじゃ」




「勇者に、会いたかったのかなぁ?」




「わからぬ、だが、そうかもしれぬ。


 もし、そうであったなら、今なら奴の気持ちが、少しは理解出来る」




「ん?」




「・・・勇者とて、無限の力を持っていたわけでは無い。


 それに、わらわ達と違って、寿命が長いという事もなかったのじゃ。


 この地に偶然生まれ、正義感が強く、人望もあり、

 勇者と呼ばれるに、ふさわしい素質を持っていただけの

 人族最強の男。


 そんな男でも、最後には仲間達とも別れ、何処かに行ってしもうたがの。


 デュランダルは、そ奴を探しに行ったのだろう・・・・・」



少し、重苦しい空気中、ラゴが続ける。



「話が、それてしまった。


 わらわが知っていることについてだな。


 それは、もう理解していると思うが、

 勇者は、この世界の悪を滅ぼす存在。

 

 そのような者達と一緒にいれば、記憶を消そうが

 勝手に真実に辿り着いてしまうからじゃ。


 まぁ、勇者自身も、一度は、バーレンに向かおうとしたのだが、

 人族の寿命は、短すぎた。


 それだけは、あ奴も心残りだったかもしれぬのぅ・・・」



話を終えたラゴは、少し寂しそうに見えた。


そんな中、京太は、もう1人の人物にも問う。




「アイシャも覚えているんだよね?」



「うむ、わらわ達もこの世界では、異質な存在だからのぅ

 記憶の消去など、知らぬ」




確かにヴァンパイアは、異質な存在だ。


永く生きていれば、色々な事を、知っていても不思議ではない。




――だったら、他にも記憶を持っている者がいるかも・・・・




そう考えてた時、

あの夢が何かを予言していたかのように、事態が動き始める。



突如、建物が揺れた。



地震だ。



「ちょっ!」


グラグラと大地を揺すり、建物も揺する。


そして、棚に飾ってある物を、床へと叩きつけ

人々を恐怖に、おとしいれた。



だが、そんな状況も長くは続かず、暫くして、地震は収まる。



「ちょっと、いまのは何、どういう事!?」


ソニアやセリカ、サリーを含めて、この世界の者達が驚いている。


その様子から、この世界の人々が、

地震に対して、免疫がないという事が理解できた。



だとすれば、この地震は・・・・・



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