第177話告白

地上に戻った京太達。


その後は解散し、それぞれの仕事に就く。




だが、部屋に戻ろうとする京太の後ろを、アイシャが、ついて来る。


その後ろには、ラゴがいる。



「アイシャ、どうしたの?」




「どうしたのではない!


 わらわの力の事じゃ!」




「そうだったね、じゃぁ、行こうか」




「うむ」




嬉しそうに京太の腕に抱き着くアイシャ。


対抗するように反対側の腕に、ラゴが抱き着く。


『ムッ』とするアイシャ。




「わらわは、京太と用事がある。


 貴様は、ついてこなくて良いぞ」




そう言い放つと、アイシャは、牙を見せてニヤリと笑う。




「わらわの事は、気にするでない。


 どこぞのまな板が、主様のご迷惑にならぬ様に、監視しておるだけじゃ」




「ぐぬぬぬ・・・・・」




睨み合う二人を連れて、京太は、屋敷の庭へと向かう。


庭に到着すると、アイシャに離れてもらい、指示を出す。




「力と言っていても、徐々に身体に馴染んで強くなっていくから、

 判り難いと思うけど、先ずは、体全体に魔力を巡らせて、具現化してみよう」




「うむ」




アイシャは、ゆっくりと魔力を放出し、体全体に浮かべる。




「次に具現化」




「う、うむ」




アイシャの周りに、黒いオーラが広がる。




「明日も、同じことをしてみてよ、そうすればわかるよ」




「そうなのか・・・・・まぁ、明日もやってみようぞ」




アイシャがオーラを消し、満足したように頷く。




「まぁ、精々精進するのだ」




ラゴの投げかけた言葉に『ムッ』とした表情になる。




「貴様は、どれ程のオーラが出せるのだ!」




「その言葉を待っていたラゴは、笑みを浮かべる。




「フフフ・・・・・」




「ラゴ、全力は駄目だよ」




「主様、ご心配無く」




そう言うと、ラゴは、一気にオーラを浮かび上がらせ、纏う。




「なっ!」




驚くアイシャに、満足したようにオーラを消す。




「少しは、姉を敬う気になったか!」




「わらわは、これからじゃ!」




そう言いながら、2人は、練習を始めた。




――この2人、喧嘩してるけど、いつも一緒だな・・・・・






2人を放置し、京太が屋敷に向かって歩き出すと、ラムとミーシャが呼び止めた。




「京太様、お時間頂いても構いませんか?」




――『京太様』?・・・・・

   今までは、『京太さん』って呼んでいた筈だけど・・・・・・



「うん、別にいいよ」



京太は、2人を連れて、屋敷の応接室に入る。


ソファーに腰を下ろすと、何時の間にか現れたメイドが、

お茶を配り、何事も無かったかのように、部屋から出て行った。




お茶を飲み、一息ついたところで、

ラムとミーシャがソファーから離れて、床に片膝をつく。




「京太様、我々エルフは、貴方様に忠誠を誓います」




突然の事に、驚く京太。




「一体、どうしたの?」




「貴方様が、この世界の神だと知りました。


 ですので、改めて忠誠を」




「そんなの要らないから、

 今まで通りでいいから!」




「えっ、エルフは、必要ないと・・・・・」




ラムの勘違い。




「違う、違う!


 今まで通りでいいよ、僕は、それがいいんだ!」




京太は、2人をソファーに座らせる。



「ラムは、僕が神だと知って、今までの様に接してくれないの?」



「それは・・・・・」



「ミーシャ、僕は、君に今迄の様に傍にいて欲しいと思っているよ。


 でも、それは、ダメなの?」




「京太さん・・・・・」




「これまで通りで、お願いしてもいいかな?」




「はい!」




「それから、他のエルフには、黙っていてね」




「勿論です!」




2人の了承を得た後、応接室から出ると

そこには、、ゲルマとメルロが立っていた。




「ダーリン、ちょっといいかしら?」




ゲルマの話は、仕事が欲しいという事だったので、

黒の大陸では、護衛のような仕事をしていたことを思い出し、

警備の話を勧めてみた。




「兵舎だと、メルロも気を使うと思うから

 家に住むのはどう?」




「それって・・・・・」




「うん、今建てている家があるから、そこに住めばいいよ」




「ダーリン、愛しているわ!」




イケメン筋肉が、京太に抱き着く。


柔らかさなどなく、ただ、締め付けられる京太。


「ゲルマ・・・苦しい・・・」




なんとか逃れる事が出来た京太は、

2人を連れて、ナイトハルトの屋敷に向かう。


屋敷に到着すると、ナイトハルトは、引っ越しの最中だった。



――あっ、いた・・・・・・



京太は、ナイトハルトを呼び止め、

ゲルマを紹介し、警備の仕事に就く事を話す。




「それは、有難い。


 私は、ナイトハルト アトラ、この街の警備隊の隊長だ、宜しく頼む」



ナイトハルトの顔を眺めていたゲルマの目は、ハートだった。



「あなた、良い男ね、こちらからも、お願いするわ」




そう言うと、ゲルマは、ナイトハルトの差し出していた手を無視し、

抱き着き、頬にキスをした。


油断していたナイトハルトは、防ぐ事が出来ず、硬直。



「あっ、言い忘れていたけど、この人、男好きだから・・・・・・」




そう告げた京太は、その場から走って逃げた。


抱き着かれているナイトハルトは、身動きが取れない。




「京太殿ぉぉぉぉぉぉ!!」




――後の事は、ナイトハルトに任せよう・・・・・・






屋敷に戻った京太は、その足で自室へと向かう。


屋敷内も、まだ、引っ越しの準備が終わっておらず、

メイド達は、慌ただしく働いていた。





それから、一週間が過ぎ、引っ越しも終り、

それぞれの部屋が、割り当てられ、落ち着きを取り戻しつつあった。




「スミス、屋敷が大きくなったけど、メイドの数は、足りている?」




「はい、その件ですが、コーデリア様とレイン様が、

 メイドを、お連れ下さっておりましたので、

 その方々に、この屋敷で働いて頂くことになりましたので、ご安心ください」



 

「そっかぁ、なんか、思った以上に屋敷が大きくなったから、心配だったんだ」



その言葉を聞き、スミスは微笑む。



「私は、あの盗賊の砦で、一生を終えるものだと思っておりました。


 ですが、旦那様に救われ、人生が、180度変わり、

 今では、このような名誉ある職を与えられております。


 仕事に、遣り甲斐を感じておりますので、本当に、幸せで御座います」


感謝を述べたスミスは、まだ若い。


なので、好きな人でも出来たら、歓迎してあげたい。


京太は、そう思いながら、スミスと視線を合わせる。




――あれっ、スミス・・・・・




京太は、スミスも外観の成長が止まっている事に気が付いた。




「スミス、ちょっと来て」




京太は、スミスを自室に呼び、他の仲間達と同じことを話した。




「では、私は・・・・・」



スミスは、涙を流した。



「ごめん、でも、もう・・・・・・」



スミスは、涙を拭う。



「いえ、誤解なさらないでください。

 これは、その、嬉しくて・・・・・ですので、お気になさらないで下さい」




泣きながら微笑むスミスの表情に、安堵すると同時に、疑問が浮かぶ。




――スミスとは、そういう事、してないのだけど・・・・・




何か他の条件がある事に気がついたが、その条件は、わからなかった。



だが、話しの中で、そういう関係の事を話した時、

スミスが、『私もお願いします』と言って来たのだ。


確かに、メイド長としても、頑張ってくれているスミスを無下には出来ない。


それに、成長の止まったスミスを、放置する事など出来る訳がない。


京太は、スミスを迎い入れることに決めた。


その後、スミスに、魔力や力の事を話すと、

『メイドとして、力が付く事は、有難い』と喜んだ。



その日の夕食後、京太は仲間達を集め、スミスの事を話した。



「皆様、改めて宜しくお願い致します」




皆は、スミスを歓迎した。


その中でも、元メイドのサリーは、大喜びで、スミスの手を取る。



「私も、お手伝いを致しますので、頑張りましょう!」



「はい、宜しくお願い致します、サリー様」



「『様』は、止めて。


 私達だけの時は、要らないから」




『うんうん』と他の仲間達も頷き、スミスも了承した。




そして、その日の夜・・・・・・


京太のベッドには、サリーとスミスの姿があった。




「これは・・・・・どういう事かな?」




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