第176話京太の秘密

京太と、仲間達は、新しい屋敷の応接室に集まった。


ソファーに座ると、視線が集まる。




「先ずは、話を聞いて欲しい」




京太は、そう言って切り出した。



「僕は、この世界の人間ではなく、他の世界から来た『転生者』なんだ」



「・・・・・・」



京太の話を聞いても、皆は、うんうんと頷くだけで、驚きも動揺も無い。




「あの・・・・・『ええっ!』とか『本当に!?』なんて反応は?・・・・・」




「ん?した方が良い?」




「あ、いや、結構です・・・・・」


 


京太は、話しを続けた。




「この先は、場所を替えて話をしようと思うけど、引き返せないよ」




ここで断る人はいないと思うけど、一応、念の為、聞く。


だが、予想通り、頷くだけで、引き返そうとする者はいない。




「じゃぁ『ゲート』」




かざした右手の先には、『転移の鏡』に似たような物が現れる。




「ついてきて」




そう言うと、京太は『ゲート』を潜った。



「お姉ちゃん、行きます」



「あ、うん」



続いて、エクスがクオンの手を引き、ゲートを潜る。




「わらわ達も行くとするか・・・・・」




「うむ」




ラゴとアイシャが潜ると、その後に、ハク、フーカ、イライザ、と順に皆が続く。


その後は1人ずづ潜り、最後に、ソニアがゲートを潜った。




「ここは何処なの?」




ラムやミーシャは、肌に触れる神気の多さから、この場所が何処なのか分かる。




「そんな・・・・・ここは・・・・・」




いつもは、はしゃぐラム、フーカでも、借りてきた猫の様な状態。


だが、そんな雰囲気を壊す者がいる。


エクスだ。


彼女は、この神殿の壁に飾られていた。


その為、彼女には、単なる里帰りでしかないのだ。



クオンの手を引き、神殿内を走りまわるエクス。



京太は、2人を放置し、残った仲間達を連れて歩き出す。


仲間達は、キョロキョロと不思議そうに辺りを見渡している。




「ここ、どうなっているの?」




「わからない、でも、どう見ても私達の世界と違うよね・・・・・」




ミーシャやラムが、戸惑うのも無理はない。


足元は、継ぎ目のない大理石の様な床。


天井がある筈なのに、空が見えている。


また、空気は、神気を纏っているのか、ひんやりとするが寒くはない。




「何処なのでしょう」




なんとなく気付いているが、言葉にするのも、おこがましく感じる。


そんな空気を感じた京太が、答える。




「ここは『天界』。


 かつては、繁栄をみせた都だよと言っても、

 僕が来た時には、今の状態だったけどね」



「!!!天界!」



仲間達の驚きは、凄まじかった。


だが、そう語った京太の表情は、少し寂しく見える。


その為、皆は『天界』よりも京太が心配になった。




「京太さん・・・・・」




「京太・・・・・」




「あれ、どうしたんだろう?」




京太の目から、何故か涙が流れていた。


同時に、忘れられていた記憶の波が京太を襲う。




その記憶は、まだ、悪魔との戦闘が起きる前のこの地。



天使族や下級神、他には、種族など関係なく、

神に、認められた達が暮らしており、

明るい声が響いている。



その中に・・・・・・



――ああ、そういう事だったんだ・・・・・・



京太も知らなかった事実。



この場で、開かれた記憶の中に、今の仲間達に似た姿があった。


正確には、何百年、何千年前の祖先達の姿。


地上での生活を終え、肉体を失った後、

この地で暮らしていたのだ。




京太が旅を始め、自然と知り合った仲間達。


それは、偶然では無かったのかも知れない。


よくよく思い返してみれば、彼女たちは、

出会った時から、京太の事を信用してくれた。


全ては、神々の記憶と、彼女達に、繋がりがあったからなのかも知れない。



そんな事を思いながら、動きを止め、

涙を流していた京太の周りに、自然と仲間達が集まってきていた。



その仲間達に『大丈夫』と告げ、先に進む。



京太の案内に従い、奥に進んで行き、とある部屋の中へ入る。



その部屋の中は、12本の柱が立つ大きな広場だった。


柱の周りには、綺麗な花が咲いている。



フーカが柱に近づく。




「なんか書いてあるけど、読めない」



「ホントね」



「こっちにも何か書いてあるよ」



自由に、柱を見てまわる仲間達。


その光景を見ながら、京太は、心の中で神様達に話し掛ける。




――只今、戻りました。


  貴方達が知る者達の子孫です・・・・・・




その言葉が、聞こえたのか一本の柱が光った。




「ええっ!!」




驚く仲間達。




だが、柱の下に眠る者の残留思念なのか、光りは、京太を包み込んだ。




『頑張っているようじゃな、儂らは、ここで見守っておるぞ』




そう言うと、京太の頭を優しく撫でる。




――アトゥム・・・・・・






暫くすると、何事の無かったかのように光が消えた。




「何だったの?」




光りを放った柱を見つめる仲間達に、京太は近づく。




「あれは、アトゥムだよ。


 この柱の下に眠るアトゥムが、僕に語り掛けてきたんだ『お帰り』ってね」




仲間達の動きが止まる。


ソニアが聞く。



「京太・・・・・アトゥムって・・・・・」



「うん、創造神。


 この柱に書かれているのは、それぞれの神様の名前。


 さっき言ったよね、『ここは、天界だよって』」




「えっと・・・・・ごめん!


 京太が、あんまりにもサラっと言うもんだから・・・・・


 それに、その、京太の方が、心配で・・・・・・」



――あの時か・・・・・・



思い出した京太も恥ずかしくなり、話を逸らす。



「12人の神様の事は、知っているよね、

 その神様達は、ある戦いで、この世界を救い、命を失くした。


 でも、命を失くす前に、僕に記憶と知識、全ての力をを託し、

 この世界の神になるように告げたんだ」



「神様は、死んだの?・・・・・・」



何時の間にか戻って来ていたクオンが、京太に聞く。




「う~ん、天界での肉体は失ったけど、記憶も知識も力も、僕が持っているから、

 精神的には、この世界に僕を通じて残っているかな」




「そうなんだ、なら、お兄ちゃんが神様なんだね!」




「まぁ、そういう事なんだ」




納得したのか、クオンは喜んでいる。




「京太さん、私も聞いていいですか?」




ミーシャが、申し訳無さそうに、手を上げる。




「いいよ」




「12人の神様の中のアトゥム様は、京太さんに託した訳ですよね」




「うん」




「では、残りの11人の方々は?」




「ここだよ」




京太は、自身の胸に手を当てる。




「えっ!?」




「12人の神様の力、知識、記憶は、僕が持っているよ」




仲間達の動きが、時間が止まった様に、シンクロして止まった。




「あれっ、どうしたの?」




動き出した、仲間達の行動は、様々だった。


ラムとミーシャは、神に使える事を夢見ていたエルフだけに、

自身が、本当に神に仕えていた事を知り、

涙を流しながら、片膝を付き、待機の姿勢。



人族であるソニア達は、茫然と立ち尽くしたまま、動きを止めていた。



だが、エクスから説明を受けた、クオンは、エクスと遊んでいる。



ラゴは、京太に喜びながら抱き着くアイシャを、引き離そうと必死になっている。




フーカとハクは、念願が叶い、踊っていた。




――なんか・・・・・カオス・・・・






全員が落ち着きを取り戻した後、本来の目的である『成長』について話す。




「皆は、僕の眷属になったから、肉体の成長が止まったんだ」




「でも、それって条件が、あるんだよね」




京太は、記憶の中の言葉を使う。




「うん、信頼と忠誠なんだけど」




「信頼と忠誠?」




「僕のお嫁さんになった事が、忠誠にあたるみたいだよ」




「それなら、クオンが成長しているのは?」




――やっぱり、そうきたか・・・・・・




京太は、クオンだけが成長を続ける理由に、心当たりがあった。


しかし、恥ずかしくて、言いたくなかった。




「京太、なんか、隠しているよね」




ソニアが、詰め寄る。




「あははは・・・・・うん・・・・・」




覚悟を決める。




「えっと・・・・・皆は、僕と一緒に寝ているよね・・・・・」




その言葉に、殆んどの者達が気がつく。




「そういう事ね・・・・・」




「うん・・・・・」




一部の者達は、赤面しながらも、理解をしたが、

 若干2人は、頭に『?』を浮かべている。



クオンとエクスだ。



「エクスも私も、一緒に寝ているよね」





クオンが京太と寝る順番の時、ほぼ、エクスも一緒。


逆にエクスの時もクオンが、ついて来る事が多い。




その為、2人とは、そういう関係ではないのだ。


エクスは、元々、京太の剣なので、どちらでも問題は無い。


しかし、クオンに関しては、信頼関係は成り立っているので、

力の強化はされているが、肉体的な行為は、していないので

『お嫁さん』であっても、成長を続けているのだ。



その事をやんわりと説明した後、

京太は、女性陣に、後の事は任せた。



皆が、理解したと思ったのだが、1人だけ、不満を口にする者がいた。



アイシャだ。



「わらわは、成長しておらぬ。


 それに、力の強化というのも、受けておらぬぞ!」



そう言って、駄々をこねるアイシャの頭を京太は撫でる。



「アイシャ、大丈夫。


 力は、もう得ているよ」



「なんじゃと・・・・・」




アイシャは、精神を集中し、全身に魔力を流してみると

今まで以上の力を感じる事が出来、思わず微笑む。



「おお!


 わらわは、気が付かなかったぞ」



「地上に戻ったら試そう」



「うむ、そうするぞ。


 後は、今晩じゃ!」




満面の笑みで、京太に抱き着くアイシャ。


それを見て、すかさずラゴが、やって来る。




「隙あらば、主様に抱き着くのを止めるのじゃ!」




「良いではないか!


 京太も、満更ではないぞ」




「そんな事は・・・・・!


 主様、もしかして、その様なまな板が・・・・・」




「だれが、まな板じゃ!


 まだ、成長期じゃ!」




「無理、そこが限界。


 可哀そうにのぅ・・・・・」




2人は、京太に抱き着いた状態で、喧嘩を始めた。




――そろそろ、地上に戻ろうか・・・・・・




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