第174話帰還 シャトの街の変化

シーワン王国の港に戻って来た京太達は、王城に向かう。



その道中、京太は、禁呪について考えていた。



ウルド ツールが乗っ取られる原因となった書物とは・・・


どこで、発見したのかとか、他にもあるのかとか・・・



禁呪自体については、神の記憶にも残っており、

ある程度の事は、わかってはいるが

この地上の何処にあるかは、わからなかった。



――この先、何も起こらなければいいけど・・・・・



そんな事を、考えていると、あっと言う間に、王城に到着していた。




「京太様ぁぁぁぁぁぁ!!」




駆け寄ってきたのは、勿論、この国でずっと待っていたレイン。




「お帰りなさいませ!」




一目も憚らず、京太に抱き着く。




「ずっとずっと、お帰りをお待ちしておりましたわ!」




「あ、うん・・・・・ただいま」




その時、京太の襟元から、一匹の蝙蝠が飛び立つ。




「蝙蝠・・・・・」




蝙蝠は、京太の周りを飛び回ると、

『ポンッ!』と音がしたかのような感じで

人型へと変化した。




「「「アイシャ!?」」」




「あ~長旅で疲れたぞ。


 わらわは、お茶を所望するぞ」




アイシャ ツヴェスは、何事も無かったかのように話す。




「アイシャ、どうして此処に?


 それにダクネス国は?」




「ん・・・・・レオンに任せた。


 あ奴は、人望がある。


 なので、心配は要らぬ」




無い胸を張り、自信満々に答えるアイシャ ツヴェスに、

ソニアが一言。



「だったら、変身なんかしないで、素直に、ついてくればいいのに」



「・・・・・」



「ねぇ、京太、どうするの?」



「別に、構わないよ」



その言葉に、アイシャ ツヴェスは、満面の笑みを見せた。




「流石、京太じゃ、わらわの気持ちをわかっておる。


 それにじゃ・・・・・あ奴らが良くて、わらわが駄目な訳が無かろう」




アイシャ ツヴェスが差した方向には、ゲルマ、メルロの2人がいた。




「あら、私達は、ちゃんと許可とったわ」




ゲルマに隠れるようにしているメルロも『うんうん』と頷く。




「今、わらわも許可をもらったから、同じじゃな」




そう言って、ケラケラと笑うアイシャ ツヴェス。




「あの・・・1つ、言いたいことが・・・」




そう言って、サリーが手を上げた。



「なんじゃ」



アイシャ ツヴェスは、不思議そうな顔をする。




「うん、ラゴとアイシャって、キャラ、被っているわよね」




「!!!」




ラゴとアイシャ ツヴェスは、お互いの顔を見合わせた。




「「聞き捨てならんのぅ・・・・・」」




2人は、お互いの格好を見比べている。




「そう言われれば、背丈とか、服装とか、話し方とかそっくりよね。


 違う所って、髪の色だけかな・・・・・色も白いし・・・・・」




その言葉に、皆も頷く。




「 もしかして・・・・・・姉妹?」



冗談で発した言葉に、2人が喰いついた。



「なら、わらわが姉じゃ」



自信満々に、答えるアイシャ ツヴェス。



「何を馬鹿な事を、わらわに決まっておるだろう」



言い返すラゴ。




「「わらわが、姉じゃ!!」」




無駄な争いが、延々と続き、皆からは、溜息しか出ない。


本当に、長く続いたのだ。


とうとうソニアがキレる。


「あんた達、いい加減にしなさいよ!


 いつまで、その争い続ける気なの、もう、日が沈むよ」



昼を過ぎた頃から、言い争っている為、

そう言われても仕方がない。


今だに、睨み合っている2人に、溜息しか出ない。



「京太ぁ、いい加減に止めた方が良いと思うよ」



フーカの言葉に頷き、嫌気がさしていた京太も、2人の仲裁に乗り出した。



「双子でいいんじゃないかな・・・・・

 それで、姉と妹を決めるのは、恨みっこ無しのじゃんけんで・・・・・」



「じゃんけんだと・・・」


2人の目に炎が宿る。



「一生に一度の姉妹を決める勝負、わらわに負けは、許されぬ」



「主様の前で、わらわに敗北など、あってはならぬこと。


 覚悟するのじゃ」




どうでもいいという雰囲気で、皆が見守る。




「お姉ちゃん、お腹、空きました・・・・・」



「エクス、我慢よ、もう少しの辛抱だから」



クオンは、エクスを宥めている。




「「ジャンケン!」」



タイミングよく、扉が開く。




「皆様、お食事の用意が整いましたわ」


室内に響き渡る明るい声。


新たに、仲間に加わったレインが、食事に誘いに来たのだ。


注目を反らされている間に、勝負が決まる。


2人の手には、『グー』と『パー』が・・・・・




「フフフ・・・・・


 わらわが姉じゃ」




愕然とするアイシャ ツヴェス。



「わらわが、負けただと・・・・・」



「約束だからのぅ・・・・・」



満面の笑みで、アイシャ ツヴェスを見ているラゴ。



「ぐぬぬぬぬぬ・・・・・」



「言って見せよ、ラゴお姉様と・・・



「く・・・ラゴ・・・・・おね・え・・・様・・・・・」




「うむ、今日の所は、それで勘弁してやる。


 だが、明日からは、きちんと呼ぶのだぞ、我が妹よ」




ラゴは、レインの連れて来たメイドと一緒に、食堂へと向かう。



その背中を、ジッと見つめているアイシャ ツヴェスが呟く。




「決まった事だ・・・・・だが、いつか妹にしてやる・・・・・」




不貞腐れたアイシャ ツヴェスも、後を追い、食堂へと向かった。



その後、シーワン王国で一泊した後、キーラ女王に挨拶をし、

レインを連れてシャトの街へと旅立つ。




旅の途中で、野宿をすることになったのだが、

ゲルマは、ラムとミーシャと仲良く料理を作り、

メルロは、クオンとエクスと遊んでいた。


2人は、すっかり溶け込んでおり、

今後も、問題なさそうに思える。


最後に、例の2人だが、

一緒に、狩りに出掛け、捕らえた獲物を自慢し合っていた。


文句を言いながらも、どこか、楽しそうに見える。



「わらわの狩った獲物の方がデカい」



「いや、価値は、わらわの方が上じゃ!」




『やいやい』と文句を言いながらも、獲れた獲物を、皆の前に引き摺ってくる。



暫くの間、野宿を楽しみつつ進んでいると

シャトの街が見えて来た。


のだが・・・



「あれは、シャトの街よねぇ・・・」


「ええ、間違いないわ。


 だけど・・・」


京太も、御者を務めるソニアとミーシャの間から

顔を出して、正面に見える街を眺めた。


「・・・こんなに大きかった?」


「いえ、そんな事は、無いと思います」


「取り敢えず、行ってみよう」


「そうだね」


ソニアは、シャトの街へ向けて、馬車を走らせた。


そして、街に到着したのだが、

門を潜ると、想像以上の人の多さに驚く。



「これ、どういう事?」


「分からないけど、屋敷に急ごう」


屋敷に到着すると、いつもの様にスミスが出迎えてくれた。


「ご主人様、お帰りなさいませ」



「うん、ただいま。


 変わった事無かった?って聞きたいけど、そんな訳ないよね」




「はい、詳しくは、エヴィータ様から、お聞きください」




「わかった、それと、この3人に部屋の準備を頼む」




「畏まりました」




屋敷に入ると、京太は、急いでエヴィータ王妃のもとに向かった。



階段を上がり、エヴィータ王妃の、部屋の扉を叩く。



「どうぞ」




「失礼します」




京太がエヴィータ王妃の部屋に入ると、

アリエル、ハミル、ラティの3人が、

エヴィータ王妃とお茶を楽しんでいた。



「只今、戻りました」


「ご苦労様」


「ありがとうございます。


 今日は、エイリーク国王は、いないのですね」




「ええ、なんでも、予定があるとかで、

 文句を言いながら城に行ったわ」



「そうですか・・・・・ところで」



京太は、この街の人口が増えている訳を聞いた。



「それは、貴方のせいですよ」



「え!?」



理由は、単純。


京太が、アルゴ商会に卸していた魔獣の肉や、珍しい果物が、

中々手に入らないので、早く情報を仕入れ、手に入れる為に、

家を建てる商人達が続出したのだ。


次に、家や畑が無償で与えられるとのことを聞きつけた

家を失った者達や、作物の育たなくなった領地から、移動してきた者達が

この街に、住み着いたことも原因の1つ。


他には、料理が美味いとかの話が広まり

各地で、調理を専門に働いていた者達が

調理法を知る為に、集まって来ている。


そのおかげで、料理が向上し、

宿屋も増え、旅の者達の殆どが、

この街を、利用するようになったのだ。



「では、土地が足りていないのでは・・・・・」




「それについては、相談があります」




エヴィータ王妃は、テーブルの上に、地図を広げる。




「これは!・・・・・」




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