第172話黒の大陸 サンドベージュ王国の抵抗

会議で話し合う議題は、1つ。



「休戦しましょう」



「そんなの、わらわの国が納得しても、他国がどう反応するか分からんじゃろう」




「そうかも知れないけど、ボルケノ王国は大丈夫。


 話は、ついているから」




「だが、問題はサンドベージュ王国じゃ。


 規模が大きいだけでなく、貴族も多く、奴隷を推奨している国だからのぅ」




アイシャ ツヴェスの意見は、京太も懸念していた。


強硬派だったビース オーム子爵と、その部下の2名は、既に、この世にいない。


しかし、王都には、未だにビース オーム子爵に賛同した貴族達の他

王国の守護四聖の内、3人が残っている。



――さて、どうしよう・・・・・・




色々考えてみたが、最終的には、王族との交渉しかない。



サンドベージュの王都は、目の前にある。



京太達は、迷うことなく、サンドベージュ王国の王都に向けて出発する。



京太とその仲間達に続き、ヴァンパイア族に、

その下僕のウェアウルフにヴァンパイアブライド。



どう見ても、怪しさ満載のメンバー。



やはりというべきか、王都の手前まで来ると、大勢の兵士が待ち構えていた。




――また、この展開か・・・・・・




溜息が出そうになっていると、もっと溜息の出そうな声が聞こえて来る。




「ダァ~リ~ン!」




イケメン、ムキムキの筋肉男が、内股で走って来る。



「やはり・・・いたか・・・」



諦めたように呟く京太とは、全く別の対応を見せる仲間達。


ゲルマに手を振り、歓迎する。




「大丈夫だった?」




「ええ、勿論よ、貴方達のおかげで、無駄に兵士達を殺されずに済んだのですもの」




仲良く話をしている所に、京太は、仕方なく話しかける。




「ゲルマ、あれは、どういう事?」




「ああ、あれね。 

 あれは、ダクネス国が攻めて来るかも知れないって、待ち構えているのよ」



「誰が?」



「陛下と、その取り巻きよ。


 後は、戦争推進派」




――僕は、今からそこに行くのか・・・・・・




「はぁ~、それで、あそこは通っていいの?」




「勿論よ」




京太達は、ゲルマの案内で王都に近づくと、

待機している兵士の1人が声を掛けて来る。



「ゲルマ様、この者達は?」



「私の友達よ」



「友達と仰いますが、後ろの方達は、

 どう見てもダクネス国の者とお見受けいたします。


 ですので、此処を通す事は、出来ません。


 全員、戦闘準備!」



「ちょっと、あんた達、待ちなさい!」



必死に止めるゲルマ。


だが、彼の声は、届いていない。



「ゲルマ様は、お下がりください!」



兵士達は、何故か、やる気に満ちていた。




――取り敢えず、痛めつけて理由を聞こう・・・・・


京太が、そう思った時、合図が掛かる。


「突撃!」




兵士達は雪崩の様に押し寄せる。


しかし、この状況に、京太の仲間達が切れた。


先陣を切って襲い掛かる兵士の前に、クオンとエクスが立ち塞がる。



「絶対に、許さない・・・・・」


いつものように、飛び出す2人。


そして、衝突すると同時に、攻撃を繰り出す。


2人の二刀流が冴渡り、

殺してはいないが、兵士の手や足を、次々に切り落とす。




「ヒィィィィ!」




「痛ぇぇぇ!」




小枝が風に飛ばされたかのように、手足が空に舞う。


転げ回る兵士達を見捨てて、無傷の兵士達は、慌てて距離を取った。




そこに、イライザの、怒りの雷が落ちる。




「グワァァァァァ!」




一瞬にして、兵士達は吹き飛ばされ、再び、空に舞う。




「ヒィィィ!」



慌てて逃げようとする兵士達だったが、

いつの間にか、王都への門が凍り付いていた。



ハクの『ブリザード』による攻撃だ。



必死に、門をたたく兵士達。



「誰か!」



「開けてくれ!」



騒ぎ立てる兵士達は、成す統べなく倒されてゆく。



――もう無理だ・・・・・


幾ら叫んでも、王都への門が、開くことは無かった。


兵士達は、観念して武器を捨てる。


だが、諦めていない者達がいた。


一旦、中断したかと思われた戦闘だが、

外壁の上に隠れていた魔法士達が、姿を現し、京太達に攻撃を仕掛ける。




「兵士達よ、敵は怯んだ。


 今こそ、剣を持ち、戦う時だ!」




「【カロリーナ】様!」




「【ハイラム】様もいるぞ!」



一度、降参した筈の兵士達は、足元に捨てた武器を手に取った。


その光景に、京太は反省する。



――甘かったのかな・・・・・・



「ごめん、僕が間違っていたよ・・・・・もう、遠慮は要らないから・・・・・」




「うむ、ならば、わらわに任せよ」



「京太、私も行くね」



ラゴとフーカが、空へと上がる。




「わらわも行こう」




アイシャ ツヴェスも2人と共に、空からの攻撃を開始した。




再び正面から襲い掛かって来る兵士達には、ソニア達が立ち塞がる。




「突撃するよ」




その声に、仲間達も頷く。



「我等も同行致します」



アイシャ ツヴェスの護衛のウェアウルフ達も参戦する。




1人、その場に残った京太は、静かに、オーラを纏わせていた。




――【魔法の女神イシス】、力を・・・・・・




『アース クエイク』




京太の魔力により、効力を増大されたアース クエイクは、

地を割き、王都の外壁を破壊した。




「うわぁぁぁぁぁ!」




外壁の上に乗っていた兵士達は、崩壊に巻き込まれ、行動不能へと陥る。



しかし、カロリーナとハイラムは、ハイラムの風魔法により、

空へと飛び上がり、難を逃れたと思われたのだが

空から攻撃を仕掛けていた3人に、みつかってしまう。



フーカ、ラゴ、アイシャ ツヴェスの3人は、

発見と同時に、魔法を放ち、2人に隙を与えない。


襲い来る魔法に、成す術がない2人は、

必死に、回避を試みたが、間に合わなかった。


次々に直撃し、2人は、大きな傷を負い

地上へと落ちて行く。


それでも、3人から目を逸らさないカロリーナは、

次の攻撃に備えようとしたのだが

その行為も無駄に終わる。


何故なら、攻撃は、3人からではなく、

地上から、仕掛けられたからだ。


兵士を踏み台にして、空へと飛び上がる、クオンとエクス。


2人は、落下してくるカロリーナとハイラムに、

タイミングを合わせて、剣を振るう。


2人は、二刀流。


合計4本の剣が、カロリーナとハイラムを刻み、

地上に衝突するまでに、2人の命を奪った。


その光景を、上空から見ていたアイシャ ツヴェスは、

目を見開き、驚いている。


「あ奴らは、本当に人族なのか?」


「さぁ、どうなのかのぅ・・・」


曖昧な返事をするラゴ。


本当の事を、言うわけにはいかないので、仕方がない。



カロリーナとハイラムが倒されたことで

地上の兵士達には、隠せない程の動揺が走っていた。



「カロリーナ様とハイラム様が、やられた・・・・・」




見て取れる程、兵士達の士気も下がっている。




「もう駄目だ・・・・・」



力が抜け、再び剣を落としてしまう兵士達は、声を上げる。



「降参、降参だ!」



『これで助かる』


そう思ったのだが、 エクスは、容赦なく首を落とした。


その瞬間、兵士達の動きが止まる。



「俺たちは、もう戦うつもりはないのだが・・・・・」



兵士の誰かが、そう呟くと、

エクスが振り返り、答える。



「貴様等は、一度、降参の意を示した。


 だが、勝てると思ったら、再び剣を持ち、我らに襲いかかった。


 そんな屑の言葉など、信じるに値しない」



静かに聞いていた兵士達だが、

突然、何かが切れたように逃げ始める。




「うわぁぁぁぁぁ!」




「助けてくれ!」




だが、容赦なく襲い掛かる京太達から、逃げる事は不可能。


暫くすると、1人残らず倒され、立っている兵士は、誰もいなかった。



「このまま先に進みましょう」



京太は、ハクが凍らせた門を破壊し、王都への侵入を果たす。


京太、アイシャ ツヴェス、レオン チャニングの3人を先頭に

王城に向かって進む。



王城の入り口が近くなった時、京太は、ゲルマに告げる。




「妹さん、連れて来なよ、それと、ルーベンとソドムもお願い。

 

 ミーシャ、ラム、任せてもいいかな?」




「ええ、問題ないわ」




「任せて」




2人の了承を得ると、ゲルマ達は、

京太達から離れ、妹の所へと向かった。




暫くして、京太達は、城門に辿り着く。



やはりというべきか、ここにも、大勢の兵士達が、待機していた。



「王への謁見を求める」


そう告げた京太。


だが、返って来た返事は、最悪のもの。



「全隊、突撃せよ!」



『おー!』という声と同時に、兵士達が襲い掛かる。




――また、ですか・・・・・・



京太が、溜息を吐くと、背後から無数の影が飛び出す。


いつものメンバーだ。



襲い来る兵士達を倒しながら、城の入口へと進む。


だが入り口が近づいた時、

守護四聖、最後の1人、【ベバリー】が、立ち塞がる。


「我は、守護四聖の1人、ベバリー。


 これより先は、ご遠慮頂こう!」




京太が、武器を持っていない事を勘違いし

ベバリーは、襲い掛かる。


余程、剣技に自信があるのか、一直線に突進してきたが

2人の間に、ラゴが割り込む。



「主様が、御手を汚す程のものでは、ありませんわ。

 ここは、わらわが・・・・・」


そう告げたのだが、ベバリーは、動きを止めていた。


正確には、止めたのではなく、止まったのだ。


ベバリーの首が、ズルッと落ちると、

続いて、上半身と下半身が分かれ、その場に倒れた。



「むぅ・・・」


頬を膨らませるラゴ。


「お主ら、たまには譲らぬか」


「ごめんね、つい・・・」


「『つい』ではないわ!」


「あははは・・・ほんとにごめん」


そう言い残し、再び、兵士達との戦いに赴くクオンとエクス。



「ほう、やはりあ奴らは、凄いのぅ」



アイシャ ツヴェスは、感心している。



「ここは、あの子達に任せて、

 僕たちは、先に進もう」


京太は、そう告げて、前へと進む。


城の入り口に到着した京太達だったが、

しっかりと、鍵がされており、行く手を阻む。



「ここは、わらわに任せよ」



アイシャ ツヴェスは、てのひらに炎を浮かばせた。


「ほれっ!」


軽く投げられたファイヤーボールは、入り口を塞いでいた扉を破壊した。



砂埃が舞う中、城の中へ足を踏み入れると、無数の矢が襲い掛かる。


だが、その攻撃も、瞬時に張った結界により塞ぐ。


「今のは、何なんだ!」


「どういう事だ!?」


兵士達が、驚いている間に、

イライザとマチルダが、京太の前に出る。



「マチルダ」



「はい、お姉さま、お任せください」



マチルダが放った魔法は、ビッグウェーブ。


突然現れた大波は、隠れていた兵士共々、

海流に巻き込み、陣形を崩壊させた。


「上出来よ」


マチルダを褒めたイライザが続く。


「サンダーショック」


放たれた魔法は、

ずぶ濡れの兵士達を感電させた。


体から煙を上げる兵士達。



全滅した兵士達の間を抜け、京太達は、奥へと進む。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る