第148話アラアイ教国 それぞれの選択

アラアイ教国の一件から、3ヵ月が過ぎた。




あの後、各国の教会は、本部が無くなった事に動揺していたが、

京太が力を使い、全ての教会に滞在している巫女に伝えたおかげで、

それ以上の騒ぎにならなかった。




また、京太に助けられた巫女達は、崩壊したアラアイ教国に戻った。


神殿と神教の街は失ったが、信徒の街と民の街は残っている。


その為、再び街に戻って来た者達も多く、

2つの外周の街だけで生活する事を決めたのだ。


ただ、中心部は、このまま立ち入り禁止とし、

二度と過ちを犯さない為の戒めとして残す事に決めた。




アクセル王国のマリアベルは、1ヵ月程シャトの街に滞在し、

フィオナとの生活を楽しんでいたが

シラスの街から、帰って来るようにとの手紙が

再三、届くようになった為、渋々帰る事にした。




最後に、アリエル、ハミエ、ラティの3人だが、

エヴィータ王妃が本当に娘にしてしまった。



天使だと知れば、流石のエヴィータ王妃も諦めると思い、

京太は、仕方なく彼女達が人族でなく、

アラアイ教国で大巫女を務めていた天使達だと告げたのだが・・・・・




「本当なの!?」




「ええ、事実です」




3人をマジマジと見つめたエヴィータ王妃は、席から立ち上がった。


そして、そのまま3人に近づくと、纏めて抱きしめる。




「本当に天使だったのね!


 嬉しいわ、アリエルちゃん、ハミエちゃん、ラティちゃん、

 これからは私がママよ。


 宜しくね」




「エヴィータ王妃、話を聞いて頂けましたよね・・・・・」




「ええ、勿論よ、イライザちゃんもマチルダちゃんも

 京太ちゃんのところに、お嫁に行ったから、寂しかったのよ。


 それに、私は、もっと娘がほしかったのよ!」




「しかし、陛下が・・・・・」




京太が心配事を口にするが・・・。




「それなら大丈夫よ。


 もう、会わせたから、それにあの人も喜んでいたわ」




――国王・・・・・反対してよ・・・・・




結局、反対する者も無く、

アリエル達も、何故かしてエヴィータ王妃を母親として、受け入れていた。


その為、京太は、3人に最も大切な選択を迫る。




「今までは、僕の言葉を受ける為に、

 全てと言っていい程の魔法を犠牲にして来たけど、


 これからは、どうするの?


 その力を手放せば、元の様に魔法が使えるようになるよ」




「それは、本当ですか!」




「うん、姫として生活するなら、魔法は必要になる。


 それに、今までの様に聞く事は出来ないけど、

 僕が念じれば個人的に伝える事は出来るよ」




それを聞いた3人は、『魔法を使えるようにして欲しい』と頼んで来た。


京太は、その日の内に天使としての力を返した。




「これで、天使としての全属性の魔法を使えるようになったけど、

 当分は、練習が必要だから、無理をしない事だよ」




「「「はい、有難う御座います」」」




今後、3人の名前は、アリエル アトラ、ハミエ アトラ、

ラティ アトラを名乗る事になった。


これで、3人の件が終われば良かったのだが、もう一波乱あった。




3人の娘が出来た事に、エイリーク アトラは大喜びだった。


しかし、3人はエヴィータ王妃と、シャトの街に住む為に、

中々会えない事が不満に思った国王が、

京太に『何とかして欲しい』と伝えて来たのだ。




「陛下、無理を言わないで下さい」




「京都殿、いや、我が息子として頼む、何とかならんか。


 もし、無理なら、京太殿が、この城に住んではどうだ?」




「は!?」




「儂は、今すぐ引退する。


 それで、後を京太殿に任せる。


 これで、儂は、娘達と過ごせるではないか」




――駄目だ・・・・・この夫婦・・・・・・




京太は、仕方なく提案をする。




「この城の中で、王族しか・・・・・

 いや、陛下しか入れない部屋を用意して下さい」



この要求にエイリーク アトラの目が輝く。



「何か手段が、あるのだな、

 よし、今すぐついて来てくれ」




京太は、エイリーク アトラについて歩く。




「ここだ」




辿り着いたのは、国王専用の部屋だった。




「入ってくれ」




エイリーク アトラに連れられて部屋に入り、扉を閉めると、

壁に向かって指輪を翳した。




すると、指輪から光が伸び、壁が動いて隠し部屋が現れた。




「この中なら、儂しか入れん。


 どうだ!?」




京太は納得し、『転移の鏡』をその部屋に設置して魔力を流した。




「これで、いつでも会えますよ」




「転移の鏡か!」




「はい、僕の屋敷の一部屋に繋いであります。


 ですので、この扉を潜れば、毎日会えますよ。


 ただ、急用で呼ばれた時の手段は、ご自身で考えて下さい」




「それは、大丈夫だ、用件を宰相に伝えれば、

この指輪で連絡が取れるので問題ないぞ」




エイリーク アトラは、満足そうに京太に伝える。




「では、行って見ようではないか」




エイリーク アトラは、『転移の鏡』を潜り抜けた。




「ほぅ、本当に転移したのだな」




エイリーク アトラが感心していると、メイド長のスミスが姿を見せる。




「陛下、出迎えが遅れて申し訳御座いません」




スミスは、頭を下げる。




「いや、気にしなくて良い。


 それよりも、今後、儂も世話になる。


 宜しく頼む」




「畏まりました、それで、お部屋は如何なさいますか?」




「ああ、娘達の部屋の近くに頼む、

 家財や準備にかかる代金は、儂が持つので頼んだぞ」




「畏まりました」




「では、娘達のもとに、案内をしてくれ」




スミスは、エイリーク アトラをエヴィータ王妃と3人の娘の所に案内をした。




その頃、王の私室で待っていた京太だったが、

いくら待っても戻って来ないエイリーク アトラを放置して、

市場に買い物に出掛ける事にした。




王族の家族騒動も落ち着いたと思っていた頃、

京太は、屋敷の応接室でエイリーク アトラから相談を受けている。


だが、その席には、イライザとマチルダ、

それに、エヴィータ王妃と3人娘の姿もあった。




「3人のお披露目パーティーを開きたい」




切り出したのは、エイリーク アトラだった。




「それで、僕に何を?」




「各国から色々な者達を招待するので、変わった料理を頼みたい。」




「それって、お婿さん募集の為ですか?」




冗談で言った京太だったが、国王と王妃の目が、殺気を孕む。




「京太ちゃん・・・・・・冗談でも、そんな事言っては駄目よ」




「はい・・・・・ごめんなさい・・・・」




――怖ぇ~・・・・・




京太は、この話題に触れない事を誓った。




その後、話し合いを行い、料理や日程などを決め、

期日が決まってからは、決められた獲物を狩る為に、

京太の仲間は、積極的に森に入った。


また、イライザとマチルダは、招待客のリストや招待状の作製に取り掛かる。




エヴィータ王妃と3人娘は、スミスともう1人のメイドを引き連れて、王宮に戻り、

服屋を呼びつけて、ドレスの作製を行った。




そして半年が過ぎ、とうとうパーティーの日が訪れる。




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