第144話アラアイ教国 捕獲

カロリーナは、アリエルの後を追う。



「アリエル様、お待ちください!」



アリエルに追いついたカロリーナは、正面に回り込む。



「この地を去って、何処に行こうと言うのですか!?」



「心配なさらなくても、決まっています。


 私は、神のもとに参ります」




「神のもと・・・・・ですか?」




「はい」




アリエルは、そう言い残して、再び歩き出した。






その頃、会議場では、ホグルが解放されていた。




「ふぅ~助かった」




「ホグル殿、お怪我はありませんか?」




「ああ、大丈夫だ。


 それよりも今後の対策を考えねば・・・」




「そうでした、大巫女様が、この地を去ると仰られていますからな」




「その事だが・・・・・・・」




ホグルは、枢教院の者達を集める。




「今、大巫女様に、この地を離れられたら、民の多くも去る事になる。


 それは、どうしても阻止せねばならない。


 少し、手荒な方法ではあるが、

 大巫女様には、地下でのんびりと過ごして頂くことにしよう」



この話を聞いているベンゼスは、この話を聞き

本心は、今すぐにでも逃げ出したいと思っていた。


だが、そんな心を見透かすようにホグルが、命令をする。




「ベンゼス、悪いが、大巫女様を呼んで来て貰えるか?


 多少手荒くなっても問題ではないので、頼んだぞ」


 

「しかし・・・・・」


躊躇するベンゼスの前に、ホグルは、餌をぶら下げる。



「そうだな、今回の事が、上手く行けば、娘を返そうではないか」




ベンゼスの娘は、既に京太達により、助け出されているのだが、

その事を知らないベンゼスは、

ホグルの指示に従う道を選び、会議室から出て行く。




同時刻・・・



荷物を纏めたアリエルは、ハミエとラティを従い、

神殿の外に向けて歩き出していた。




「外で、京太様が待っていて下さるそうですよ」




神(京太)に仕える事が出来る喜びを、胸に抱きながら歩いていると、

突然、目の前に聖騎士達が現れ、道を塞いだ。




「大巫女様、少し、お話したい事が御座います。


 ご同行願えますか?」



「ベンゼス、これはどういうつもりですか!?」



「それも、後ほど・・・・・







道を塞いだベンゼスとホグルの手下の聖騎士達が、荷物を奪い取る。


力を使えば、振り払う事も可能かも知れないが、

やはり、今まで守ってきた民に対して、

そのような行いにでる事が出来ない。



「さぁ、ご案内致します」




大巫女の手を強引に掴み、引っ張ろうとしたが、ハミエが止めに掛かった。




「お止め下さい。


 もう、アリエル様は、この国の巫女ではありません。


 その手を離し、道を開けて下さい」




抵抗するハミエだが、聖騎士に殴られて、床に倒される。




「只の付き人の癖に出しゃばるな!」




この瞬間、ハミエ達に視線が集まり、隙が出来た。


ラティは、アリエルが掴まれていた腕を振り払う事に成功する。




「アリエル様、お逃げ下さい!」




「ラティ!」




「早く!!」




「必ず、助けるから!」




アリエルは、出口に向かい走り出す。




「逃がすな!追え!」




アリエルの後を追い、聖騎士達が走り出した。


聖騎士達の方が、断然早く、あっという間に距離を詰められた。




――このままでは・・・・・




アリエルは、咄嗟に叫んだ。




「京太様ぁ!」




その瞬間、アリエルは、聖騎士に追いつかれ、背中から服を掴まれた。


そのまま地面に押し付けられ、身動きが取れない。




「大人しくしろ!」




――京太様・・・・・・



アリエルも覚悟を決め、力を使おうとした時、

聖騎士が、突然の衝撃で吹き飛ばされた。




「うがっ!」




解放されたアリエル。




「大丈夫?」




アリエルの目の前には、京太が立っていた。




「京太様・・・・・・」




「うん、外で待っていたけど、声が聞こえたから

 迎えに来たんだ」

 



「有難う御座います」




「先ずは、あいつらをどうにかするよ」




そう言うと、京太は、ハミエとラティを助け出す。



そこから始まったのは、一方的な戦闘。



あっと言う間に、聖騎士達は、地にひれ伏す形になった。




そして、最後には、ベンゼスだけが、取り残されていた。




「この人は、枢教院の人?」




「はい、ベンゼスと言う者です」




「ベンゼス・・・・・・ベンゼス・・・ベンゼス!!!」




京太は、ホグルの屋敷に捕らえられていた女性の名前を思い出した。




「ベンゼスって、ニオって娘のお父さん?」



娘の名前を呼ばれたベンゼスは、京太に自ら近づく。



「娘をご存知なのですか?」



「ホグルの屋敷の地下牢に、閉じ込められていたから助け出したよ」



その事を聞いた途端、ベンゼスは、崩れ落ちる。



「良かった、良かった・・・・・無事だったんだ・・・・・」




ベンゼスの瞳には、涙が浮かんでいた。




「ベンゼス様、娘さんに会いに行きませんか?」




ベンゼスを誘ったのは、アリエルだった。




「大巫女様、数々の御無礼お許しください」




ベンゼスは、立ち上がらず、そのまま頭を下げる。




「貴方にも理由が、あったのですね」




「はい、私とヨンドは、

 ホグルに人質を取られていまして、従うしかなかったのです。


 ですが、犯した罪は、消えません。


 私は、この街を去り、新しくやり直そうと思います」




「厳しいかも知れませんが、頑張って下さい」




「有難う御座います」




その後、神殿を抜けた京太達は、皆の待つホグルの屋敷へと向かった。




ホグルの屋敷に到着すると、ベンゼスは、娘との再会を果たす。



その横で、京太は、仲間達に囲まれていた。




「京太、これ、どういう事?」




「別に何も無いよ、この国で巫女をしていた人達で、僕が助け出したんだ」




「それだけですよね」




「勿論だよ、だから、ミーシャ、その目を止めてくれないかな・・・・・」




何故か、睨まれている京太は、必死に弁解をしている。



その時、遅れて出て来たエリカが、巫女達を見て声をあげる。




「アリエル様!それに、ハミエ様にラティ様まで!」




「エリカ、久し振りですね」




ソニアが、エリカに聞く。




「エリカ、知り合いなの?」




「はい、巫女見習いの時に凄くお世話になった方々ですし、

 この国の一番偉いお方です」




「フフフ・・・・・エリカ、実はですね、私は、大巫女の地位を捨てました」




「えっ!?」




「どういう事でしょうか?」




「詳しくは、後程お話させて頂きますので、今は、少し、休ませて下さい」




エリカは、アリエル達を引き連れて寝室に向かった。




エリカとは別に、京太は、この度の神殿での出来事を皆に説明を始めたのだが

その時、屋敷の周囲が、騒がしくなって来た事に気付く。




「京太さん、聖騎士が集まって来ています」



窓から、外を除いていたミーシャの言葉に、

警戒を強めず、何故か、笑顔で手を上げる者達がいた。




「お兄ちゃん、今度は、私達だよ!」




「私達も行くわよ」




「京太、私も行く!」




・・・京太は、クオン、ラム、フーカの意思を尊重する。




「・・・・・わかった、任せるよ」




許可を貰った3人は、相方と言える仲間を引き連れ、屋敷の外に飛び出した。




「出て来たぞ!」




屋敷の周りに集まっていた聖騎士から声が上がる。




「全員、抜剣!」




急いで、剣を抜いたが、その時には、京太の仲間達は、既に接近していた。




「遅いです」




聖騎士の集団の中に飛び込んだクオンとエクスは、

両手に持つ剣を自在に操り、乱舞するように切り刻む。




ラムは、ミーシャを連れて飛びだすと、聖騎士達と距離を取ったまま立ち止まる。




「エクスプロージョン」




聖騎士達の中で、大爆発を起こし、吹き飛ばす。




「エクスプロージョン」




ミーシャもラムと同じ魔法を放ち、聖騎士達を再び吹き飛ばした。


爆発音と共に、聖騎士達が木の葉のように舞う。




2カ所同時に攻撃を仕掛けられ、

浮足立ったところをフーカとハクが攻撃を仕掛ける。


ハクが、ホワイト バイパーに戻り、『ブリザード』を放ち凍り付かせると、

上空から、フーカが、雷の魔法で、聖騎士達を感電死させた。




あっという間に、聖騎士達の数が減り、陣形も崩れた。


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