第142話アラアイ教国 出会い

屋敷内を探索中のソニア達は、宝物庫を発見していた。




「なんか凄いね」




「うん、前に見たお城の宝物庫とあんまり差がないよ・・・」




「でも、殆どが金貨なんだね・・・・」




「でも、これだけの金貨をどうやって集めたんだろう・・・・・

 宗教って、本当に儲かるんだね」




その言葉を、サリーが否定する。




「全うにしていたら、儲かる訳ないわ。


 それだけ、信者のお金を自分の物にしていたのよ」




「やっぱり最悪の男だわ」




「当然でしょ、エリカを捕まえようとしたり、

 私達の街の教会まで自分の物にしようとしたんだよ」




「そうよね」




3人は会話を終えると、宝物庫を後にする。




その頃、屋敷の2階を探索していたラムとミーシャの前には、

武器を持ったメイド達が通路を塞いでいた。



だが、メイド達の手足は震えている。




「あのさぁ、一応、言っておくけど、歯向かったら殺すよ」




ラムの言葉に、メイド達は怯む。




「強制されたのなら、武器を捨てなさい。


 貴方達は、私達が助けます」




ミーシャの言葉に、1人のメイドが返事をした。




「私達には、家族がいるんです。


 私達が逆らえば、家族が殺されます!」




何となくだが、察しがついていたラムが話しかける。




「それなら、家族と一緒に私達の街に来る?


 仕事も紹介するし、食べる物にも困らないわよ」




「そ、それを信じろとでも言うのですか?」




「うん、私達、その街の領主の奥さんだから、安心してよ」




「え・・・・」




「事実です。


 私も、その方の妻です」




メイド達の雰囲気が変わる。




「本当に、家族を連れて行って頂けるのですか?」




「勿論。


 ここに本人も来ているから、心配ないよ」




「領主様も来ておられるのですか?」




「後で会わせてあげるから、武器を捨ててくれるかな」




ラム達の言葉を信じ、メイドの1人が武器を手放す。


すると、次々に、武器を手放した。




「1階に下りたら、入り口に仲間がいるから、降伏した事を伝えてね」




「は、はい・・・・・家族の事、お願いします」




メイド達は素直に従い、屋敷の入り口に向って走り出した。






京太達が、屋敷内に侵入している事を知ったホルグ。


既に逃げ道を失っているかのように思えるが

諦めるつもりはない。




「このままで終われるか!」




ホルグは、自室を飛び出し、隣の部屋に飛び込んだ。




「こういう時の為に、準備はしてある」




ホルグは、壁に手を当てる。


すると、指輪が光り、壁が静かに動き出す。




「此処にいれば、大丈夫だな」




壁の中に飛び込むと、再び指輪を当てて、壁を閉じた。


壁の中には、小さいが、豪華な部屋があり、

食料から酒まで準備されていた。




「当分は、此処で寛がせてもらうとしよう・・・・・」




フカフカのソファーに腰かけると、用意したワインに口をつける。




隠し部屋の事など知らない京太達は、

屋敷の隅から隅まで探すが、

当然、ホルグの姿は見つからず、入り口に集まっていた。




「何処にもいないね」




「でも、メイドさん達は、この屋敷にいたと証言しているんだよ」




「そうね、ここから逃げたとは、思えない」




ミーシャもラムに同意する。


先程迄、同意していたソニアだったが、過去の事を思い出す。




「隠し部屋!!」




京太は、『サーチ』を使い、ホルグを検索。


すると、反応があり、屋敷の一カ所を示した。




「見つけたよ」




京太の言葉に、皆の視線が集まる。




「今から、捕らえて来るけど、ついでに神殿に行って来るよ」




「私達も、ついて行くよ」




「いや、僕一人で行って来るから、此処で待っていて欲しい」




「どうして・・・・・」




ソニアが、何か言おうとしたが、エクスとラゴが止める。




「主に任せて下さい」




「わらわも、エクスと同じ意見だ。


 同行したい気持ちは、わらわとて同じだが、主様を信じてここに残るぞ」




皆は、何か事情がある事が分かったので、それ以上の事は口にせず

信じて待つ事にした。




「京太、戻って来るわよね・・・・・」




「ソニア、帰って来るから心配しないで」




「うん、分った」




京太は、皆と挨拶を交わした後、ホルグの捕獲へと向かった。




1人、のんびりと隠し部屋で過ごしていたホルグだったが、

壁が破壊される音を聞き、焦りの表情を見せる。




「この部屋が、見つかったのか!?」




それを証明する様に

破壊された壁の方角から、足音が近づいて来る。




――チッ!

  ここが、バレたのか・・・・・・




ホルグのいる隠し部屋に、逃げ道は無い。


焦るホルグの前に、京太が姿を見せた。




「お前が、ホルグ?」




「ああ、そうだ!


 貴様、枢教院の私に、こんな事をしてタダで済むと思っているのか!」




言葉では、強気な発言をするホルグだったが、

体は『ジリジリ』と後退りをしている。




「貴方を捕らえます」




武器を持っていなかったホルグは、殴られて意識を失わされると

あっさりと捕らえられた。




「さてと・・・・・・」




京太は、隠し部屋から出ると、窓から見える神殿に向かって、

ホルグを掴んだまま飛び立った。






アラアイ教国の中心にある神殿は聖域とされ、

認められた者以外の立ち入りを許されていない。



その神殿の入り口に、京太は、ホルグを掴んだまま降り立った。




「ホルグ様!」



警備をしていた神殿聖騎士達は、

ホルグの哀れな姿に気付き、京太を敵と判断する。




「我が国に敵対する者に慈悲など無い!」




神殿聖騎士は、剣を抜くと同時に、京太に襲い掛かった。


京太は、ホルグを放り投げると、神殿聖騎士の1人は、慌てて受け止めようとする。


その隙に接近し、蹴りを放つ。




「うがぁ!」



ホルグを受け止める為に、武器を手放していた神殿聖騎士は、

京太の蹴りを喰らい、ホルグと共に、壁に衝突する。




ホルグは、神殿聖騎士がクッションになり、生きてはいるが、

助けに向かった神殿聖騎士は、

体中の骨が砕け、既に息絶えていた。


その後に、怯んでいたもう1人の聖騎士を、あっさりと倒すと

京太は、再びホルグを掴み、神殿の中へと入って行く。



途中で、すれ違う巫女や巫女見習い達は、

京太の放つオーラに押され、手出しが出来ず、見守るだけ。




京太が、ホルグを引き摺りながら歩いていると、声が掛かる。




「お待ちください!」




京太は立ち止まり、声の方向に向き直る。




「何か御用ですか?」




「私は、神官のオルゴと申します。


 そちらのお方は、枢教院のホルグ様とお見受けいたしますが、

 何かご無礼があったのでしょうか?」




京太は、ホルグを手放す。




「この国に来て、初めて聞いて頂けました。


 僕は、京太。


 アトラ王国、シャトの街の領主です。


 この男が、エリカを捕らえ、

 自分達のいう事を聞けと脅して来たので返礼に来ました。


 それと、アクセル王国でも、同じような事をして、抗議の手紙を送った筈ですが」




「抗議の手紙・・・・・それは、誠ですか?」




「嘘を吐いても、何の得にもならないのに、嘘を吐く理由がありません。


 それに、アクセル王国第2王女、マリアベル アクセルも

 この国に抗議の為に来ています」




「な、なんと!・・・・・申し訳無いが、少し、お待ち頂けないだろうか」




「分かりました」




京太の了承を得たオルゴは、丁寧に応対し、

京太を応接室へと案内をする。




「こちらで、お待ちください」



オルゴは、応接室を出ると、同じ神官のエマとイングラに、相談を持ち掛けたが

やはり判断が出来ず、大神官の【カロリーナ】へと話を通す。




「カロリーナ様、申し訳御座いません。


 私共では判断が出来ず、相談させて頂きました」




「わかりました。


 詳しくお話しください」




オルゴは、京太から聞いた話をカロリーナへと伝える。




「・・・・・枢教院のホグル・・・・・」




カロリーナは、少し考えた後、京太に会う事に決め

オルゴに伝えた。





「私が、直接会いましょう。


 それから、今後の事は、その方の言い分と、

 ホグルの言い分を聞いてから判断致します」




「畏まりました。


それでは、ご案内いたします。」




オルゴの案内で応接室に向かうカロリーナだが

その途中で大巫女の【アリエル】に出会った。



アリエルは足を止める。




「カロリーナ、先程の騒ぎは、何があったのですか?」



大巫女に、嘘や隠し事は出来ず、正直に伝える。


話を聞き終えたアリエルは、最近の神の言葉の事も気にかかり、

カロリーナに同行を申し出た。




「私も同席致します。


 案内を・・・・・」




カロリーナとオルゴは、アリエルと付き人の【ハミエ】と【ラティ】を引き連れ、

京太の待つ、応接室へと向かった。




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