第141話アラアイ教国 ホグル屋敷

突然、目の前に現れた4人の王女と背後に控える者達。


それと、大男に担がれているボードンと聖騎士。


この状況に、いつもなら、高圧的な態度で追い返す聖騎士達も

戸惑いを隠せない。



「いつまで待たせるつもりですか!」




マリアベルに叱咤され、

完全に飲みこまれた聖騎士は、余計な事までも伝えてしまう。




「ただいま、ホグル様に聞いて参りますので、暫くお待ち下さい」




「そうなの・・・・・ホグルは、中にいるのね」




マリアベルが皆に伝える。




「中にいるそうよ」




その言葉に、自身の失態に気が付いた聖騎士は、

慌てて道を塞いで、剣を抜いた。




「この先に進むことは遠慮願う。


 もし、進もうとするなら、それなりの覚悟をしていただく!」




そう言い放つ聖騎士は、目で合図を送り、

他の聖騎士に、ホグルのもとに向かうように伝えると

合図を送られた聖騎士は、屋敷に向かって走り出す。





しかし、それを見逃すほど、甘いメンバーでは無い。




ホグルの元に向かった聖騎士が、屋敷の扉に手を掛けようとした瞬間、

突如、吹き飛ばされた。



「ぐはっ!」



道を塞いでいる聖騎士達は、何が起こったのかわからないまま、

吹き飛ばされ意識を失った聖騎士を見た。




「何が起こったんだ・・・!?」



「あれ、大丈夫か?」



口々に、言葉を漏らす聖騎士達だが、

扉の前に立っている少女に気が付く。




「いつの間に・・・」


扉の前に立っているのはフーカ。




「道を塞がれても、関係ないもんね」




「貴様ぁぁぁ!!!」



フーカを睨みつけ、襲い掛かろうと走り出した聖騎士だが

フーカに辿り着く前に、突如、蹴り飛ばされる。



蹴り飛ばしたのは、ラゴ。



ラゴの蹴りを後頭部に受けた聖騎士は、

フーカの横をすり抜け、屋敷の扉を破壊して止まった。



「わらわの方が飛んだぞ」



「そんなことないよ~」



扉の前で、言い争いを始めるフーカとラゴ。



――何を争っているの・・・・・・



京太が、そんな事を思っていると、2人に聖騎士達が襲い掛かる。


そのおかげで、道がく。


その隙をつき、聖騎士達の背後から京太達が襲い掛かり

あっと言う間に、殲滅に成功した。



屋敷の前に聖騎士達は、もういない。



目の前には、扉が破壊された屋敷。



「行こうか」



京太は、屋敷に向かって歩き出した。




屋敷の中に入ると、物音に気付いた聖騎士や、

メイド達が集まって来る。



「抵抗しなければ、危害は加えません。


 こちらの指示に従って下さい」




イライザは、皆に聞こえるように大きな声で伝えた。



すると、屋敷の中の聖騎士が、剣を抜く。



「貴様は、何を言っているんだ。


 此処を何処なのか分かっているのか!」



聖騎士は5人。


全員が剣を抜き、構えている。



その近くで怯えているメイド達。



「皆は、ホグルを探して来てくれるかな。


 僕も、直ぐに向かうから」



京太は、そう言うと、聖騎士達との間合いを一気に詰めた。



「このガキ!」



剣を振り下ろす聖騎士。


京太は、それを躱すと同時に、顔面を殴り飛ばした。


吹き飛ぶ聖騎士。


その光景に驚き、動きを止めている他の聖騎士達。


その隙を京太は、逃さない。



1人、2人と倒す。




「うげっ」



「ぐはっ!」



一瞬にして3人が倒された。


京太は、残りの2人に向けて歩き出すが、

残った2人の聖騎士は、武器を捨て、両手を上げた。




「えっ!・・・・・・」



聖騎士は、『ニヤニヤ』しながら、京太に伝えた。




「降参だよ。


 俺達は、武器も持っていないし、降参したんだ、攻撃するなよ」




――これで、あのガキは、攻撃してこない・・・・・

  隙を見つけて逃げてやる・・・・・・




聖騎士達は、未だに『ニヤニヤ』しながら、

辺りを見渡している。



「取り敢えず、拘束しますか?」



そう言って来たのはディーノだった。


京太の仲間達は、ホグルの探索に向かったが

4人の王女とディーノとドワイドは、この場に残っていたのだ。


「あれ、みんなは、残っていたんだ」



「ええ、直ぐに終わると思って、あなたを待っていました」

 


「そうなんだ。


 なら、ディーノとドワイド、そいつらを任せよ」


「畏まりました」



ディーノとドワイドが、降参した聖騎士に近づくと

ニヤついている聖騎士達は、口を滑らす。



「こんな大男より、あっちの女にお願いできないかな?」


ふざけた事を言いだす聖騎士達。


その言葉が、ドワイドの逆鱗に触れた。


聖騎士の頭を鷲掴みにするドワイト。




「おい、もう一回、言ってみろ」




『ミシミシ』と音を立てながら、握り潰されそうになる頭骸骨。


言葉にならない悲鳴を上げる聖騎士。




「うごっ!


 ががが・・・・・づびば・・・・でん・・・・・」




脳汁が垂れたかと誤解されそうなほど、

涙と鼻水を流しながら、謝罪を口にするが、

何を言っているのかが分からない為、ドワイトが力を込める。




「ドワイト、死ぬぞ」




「あ、ああ・・・」




ディーノに言われ、ドワイトは手を離す。


床に落ちた聖騎士は、ぐったりとしたまま動かなかった。




「動かないのか・・・・・なら丁度良い。


 このまま、縛ってしまおう」




ディーノとドワイトは、聖騎士を縛り上げにかかる。


先程の光景を見ていた為に、

もう1人の聖騎士は微動だにせず、大人しく縛られた。



その頃、屋敷を探索していた仲間達は、色々と発見していた。


地下牢を発見したクオンとエクスは、そのまま進み

牢の中に捕らえられている人を発見する。




「どうして、捕まっているの?」




クオンは近づき、話かける。




「貴方は誰ですか?」




「お兄ちゃんの奥さんだよ」




「え?」




「お姉ちゃん、それでは分かりません。


 私達は、この屋敷のホグルに用があって来ました。


 それで、貴方達は、どうして此処に閉じ込められているのですか?」




エクスの問い掛けに、牢の中の女性は答える。




「私は、枢教院、ベンゼスの娘の【ニオ】です。


 ホグルの部下に捕らえられて、ここに入れられました」




「なら、出る?」




クオンの問い掛けに、ニオは、安堵の表情で答える。




「助けて頂けるのですね」




「いいよ、でも、此処から出たら、少しの間は従って貰うよ」




「はい、構いません」




2人は、牢の鍵を探そうとしたが、その時、門番がいなかった事を思い出す。




「そういえば、見張りは?」




クオンが、ニオに問いかけると同時に、

通路の先から、『ファイヤーボール』が飛んで来た。


2人は、狭い通路だったが、ギリギリ回避する事に成功する。




「あははは・・・・・残念。


 もう少しだったのに・・・・・・」




通路の先から現れたのは、少年のような風貌の男だった。




「僕の名は、【スカルス】。


 ホグル様直属の護衛隊長だよ。


 でも、仕事は面倒だから、ここの門番をしていたんだけど

 先程から、騒がしいのは、君たちが原因なのかい?」



スカルスは、問いかけながら、クオン達に杖を向ける。



「子供なの?」



「ははは・・・・・僕は、魔力が強すぎて、その影響で、

 見た目の成長が止まっただけだよ。


 だから、君達よりは大人だよ」



スカルスは、聞いていない事も、何でも『ペラペラ』と話す。




「貴方が、馬鹿で良かったです」




エクスの言葉に、スカルスは反応する。




「僕は、馬鹿なんかじゃない、馬鹿にするなら殺すよ!」




スカルスは、再び『ファイヤーボール』を放った。


クオン達は、『ファイヤーボール』を躱し、

接近を試みるが、何かの壁に阻まれた。



「痛っ!」



クオン達は、転がりながらも体制を整える。




「お姉ちゃん、向こうまで行けません」




「うん、壁があった」




2人の会話を聞き、スカルスは、満足したように笑う。




「あっははは・・・・さっき伝えたのに、忘れたの?


 僕は、魔力が強いって言ったのに・・・・


 だから、同時に魔法を使う事なんて簡単なんだよ」




クオン達には、あの防御を破らなければ、攻撃の手段が無いように思えた。


しかし、エクスがクオンに耳打ちをする。




「ごにょごにょ・・・・・・」




話し終えると、2人は行動に移す。


先程と同じ様に、突撃を開始する。




「同じことをしても無駄だよ」




スカルスは、『ファイヤーボール』を放つ。


クオン達は、『ファイヤーボール』を躱すと、その場で立ち止まる。




「何?突撃しないの?


 なら、僕が攻撃するよ」




スカルスは、続いて『ファイヤーボム』を放った。



狭い廊下でのファイヤーボムは、爆発と同時に周りも破壊する。



当然、クオンとエクスも、爆発に巻き込まれ、

怪我を負った。



それでもその場にとどまり、何かを待っている2人。



爆発の余波で、天井が崩れ始めた。




「今です!」




ファイヤーボムにより、負傷した2人だが、

この崩壊に便乗して、壁や天井を破壊し始める。




「お前達、何をするんだぁぁぁ!」




クオン達が全力で破壊したおかげで、

スカルスを閉じ込める事に成功した。




「今の内に脱出しましょう」




クオンとエクスは、鉄格子を破壊し、牢の中の女性達を救出すると、

来た道を引き返し、地下からの脱出に成功した。


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