第108話シーワン王国 合流


敵のいなくなった屋敷の中をラムとイライザが調べると、

そこには、捕らえられた亜人達が、鎖に繋がれたまま残されていた。




「今、助けます」




2人で手分けして鎖を切る。


全員の鎖を切り終え、屋敷から出ると、

そこには、フーカもいた。




「フーカ!どうして此処に?」




「うん、上空から偵察していたのだけど、

 もの凄い光が見えたから、見に来たの」


 


――たぶん、あの爆発の事かな・・・・・・




ラムが掻い摘んで現状を説明すると、フーカが切り出す。




「私、京太のところに、行って来るよ」




「待って!私は、大丈夫だから・・・・・」




フーカを引き留めようとするミーシャ。


そんなミーシャにフーカは言い放つ。





「相手は、逃げたんでしょ!


 それに、仲間が、こんなことされたと後から知った方が、

 京太は、悲しむと思うよ。


 だから、知らせに行くの」




判断の難しい所だったが、京太の気持ちを考えて

皆はフーカの意見に従った。




「私達は、一旦、竜人族の里に戻るわ。


 フーカ、気を付けてね」




「うん、任せて!」




そう言うと、フーカは飛び立ち、京太達の元へと向かった。






空に上がり、皆の姿が見えなくなると、唇を噛み締めるフーカ。


皆の前では平静を装っていたが、怒りで狂いそうだったのだ。




――絶対、許さない・・・・・・




湖の近くで、ハクと暮らしていた頃は、

楽しくないと言えば嘘になるが、何か物足りないと感じていた。


そんな中、京太に出会い、一緒に旅をする事になった。


ハク以外の者・・・・・・最初は少し警戒もしていたが、

一緒に生活するうちに、皆が

仲間よりも家族に近い存在になっていた。



その家族を傷つけられたのだ、許せる筈がない。




フーカは、今迄以上の速さで、京太達の元へと飛ぶ。




山脈を抜けようとしたところで、地上に敵の部隊を発見する。


どうやら、まだ、情報が届いてないらしく、

猫人族の里か鳥人族の里に向かっている様だ。




フーカは、無言で近づくと、敵の上空で止まる。




――50人位か・・・・・




フーカは、両手を広げて、呪文を唱える。




「かの者達に、無慈悲なる制裁を・・・・・『メテオ』」




京太の加護を受けて辿り着いた範囲型極大魔法の1つ、

『メテオ』を敵の部隊に放った。



上空に炎を纏った隕石が現れ、敵の部隊を目掛けて落下して行く。




轟音と共に迫りくる炎を纏った隕石は、

悲鳴など上げる暇も与えず、敵を成す統べなく焼き潰した。



壊滅した事を見届けると、すぐさまその場から去るフーカ。



シーワン王国領内に入り、大きな街が見えて来た時、

フーカの正面に小さな物体が佇んでいる事が確認できた。




「ラゴ!」




「フーカ、お主は、何をしているのだ」




フーカは、鳥人族の里で起きた事を話すと

ラゴの表情が変わる。




「皆は、本当に無事なのだな!」




「うん・・・・・でも、ミーシャの腕が・・・・・」




それだけで察したラゴは、方向を変えた。




「ついて来るのじゃ」




ラゴは、一気に速度を上げると、京太の元へと向かった。


2人が辿り着いたのは、ボロボロの家屋が立ち並ぶ場所。


ラゴは、フーカと共に地上に降りると

その家屋の端にある家の扉を開けた。




「主様、大変じゃ!」




扉を開けて入って来たラゴは、開口一番、そう言い放つ。




「ラゴ、お帰り、どうしたの?」




振り向いた京太の近くには、ロープで縛られた男達が転がっていた。




「主様、こ奴らは?」




「ああ、なんか見張っていたから尋問中・・・・・んっ、フーカ?」




京太の姿を見た途端、フーカの感情が爆発する。




「きょうたぁぁぁ!」




フーカは、京太の胸に飛び込み涙を流す。




「どうしたの?」




フーカは、泣きながら謝罪を繰り返すばかりで、話しにならない。


見兼ねたラゴが、代わりに説明をした。


平静を装っているが、京太の雰囲気が変わるのを、ラゴは肌で感じている。




「そっか・・・・・フーカ、君は悪くないだろ」




「『グスッ』・・・・でも、光が見えた時にもっと早く向かっていたら、

 『グスッ』・・・・・」




フーカは、最初に爆発の光を見た時に、呑気にしていた自分が許せなかったのだ。


京太は、フーカの頭を撫でる。




「皆の元に行くから・・・・・」




「うん・・・・」




捕らえていた男達をそのままにして廃屋を出ると、

フーカとラゴを引き連れて、竜人族の里に向かって飛び立つ。


普段なら、街の上空を飛ぶような事はしないが、

今は、最短距離で向かう為に気にせず、突っ切っる。




地上では、京太達の姿を見つけて指を差している者もいたが、

京太は、ただ、前だけを見ていた。




廃屋を出た時は夕方だった為、既に日は落ち、暗闇に包まれている。


それでも京太達が休む事は無い。




深夜、京太達が竜人族の里に到着する。


里の中に突然降り立った事に、周囲の者達は驚いたが、

その人が京太だと分かると近づいて来た。



その中にいた兵士に声をかける京太。




「僕の仲間は?」




「こちらです」




兵士に案内され入った屋敷の中には、

イライザ、マチルダ、ラムの姿があった。




「京太!」




ラム達も到着したばかりだったのか、ボロボロの服のまま近づいて来る。


身体の傷は直っているが、

服は焼け焦げ、その時の状況を語るには十分な姿だった。




――酷いな・・・・・




そう思っていると、足音と共に、ミーシャが姿を見せる。




「ごめん、京太さんの声が、聞こえたから・・・・・」




ミーシャは、他の者達より怪我が酷かった為に奥で寝ていたのだ。



ゆっくりと歩くミーシャを、京太は抱きしめる。




「無理をしないで」




「すいません、ミスを犯しました」




京太の胸に、なんとも言い表せない感情が込み上げた。




「今すぐ、治すよ」




京太は、ミーシャを抱きかかえると、近くのソファーに寝かせた。




――【知恵、医術、魔法の神、イムホテプ】力を・・・・・・・




京太の体全体に可視出来る程のオーラが現れる。




「リカバリー」




オーラが京太の手を伝わり、ミーシャへと流れ込む。


ミーシャの体を包み込むと、次に、失くした右腕に集中する。


すると、失った右腕の形にオーラが変化し、

光が収まった時、右腕が戻っていた。




「終わったよ、それと、内臓もやられていたから治しておいたからね」




ミーシャは、頷いた後、右腕の感触を確かめる。




「うん、前より調子がいい・・・・・」




その後、残りの3人にも、『リカバリー』を使い完全に回復させた。




「いつ見ても凄いね」




「あははは・・・・」




皆に笑顔が戻り、京太は『ホッ』とした。


そして、気が付いていた事を口にする。




「ところで・・・あの・・・そろそろ、

 着替えた方が、良いと思うけど・・・・・・」




本人達も忘れていたようだったが、『エクスプロージョン』を受けたせいで

服が焼け落ちていた為に、色々と大事な所が見えていたのだ。




「バカッ!見るな!」




慌てて体を隠すラム、その場にしゃがみ込むイライザとマチルダ。



だが、ミーシャは違った。




「京太さん、もう、見慣れていますよね」




そう言いながら、京太に抱き着き、腕を首に回す。


その光景を見て、ラゴが悪乗りをする。




「なら、わらわも脱ぐかのぅ」




そう言うと、ゴスロリ服を脱ごうとした。




「ラゴ、止めて!」




その間に、ミーシャは、ラムに引き剥がされていた。


2人が言い合ういつもの光景に京太は安堵した。

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