第104話進軍

屋敷に到着した時、京太達を出向変えたのは

長老と長たちだけではなく、多くのエルフ達も集まってい。



「お帰りなさいませ京太様」



「ただいま」



次々に京太達が馬車から降りた後、最後にジョゼが姿を見せる。


長老は、ジョゼに歩み寄った。



「ジョゼ、亜人連邦への長旅ご苦労だった。


 ロウの屋敷に料理を用意させてもらった、そこで話を聞かせてくれまいか」




「わかりました」




長老を先頭に、皆がロウの屋敷の中へと入る。



最後まで残っていたのは京太。


ロウとレイドは、歩み寄り、膝をつく。




「京太様、この度はエルフの代表を務めて頂き、有難う御座います。


 長旅でお疲れでしょうから、

 暫くは、この屋敷を我が家だと思ってお使い下さい」




「ロウ、レイド、気を使ってくれて有難う。


 お言葉に甘えさせて頂くよ」



京太の友好的な言葉に、安堵する2人。







ロウとレイドと共に、屋敷に入る京太。



全員が席に着くと、長老から感謝の言葉が述べられた。



その後、ジョゼから、

亜人連邦の情報と現在の状況が伝えられると

長老や長達は、驚きを隠せない。




「この先、亜人連邦は、どうなるのだ?」




「わかりません。


 復興するにも人手の問題もありますので・・・


 それに、今後の事については、あちらが決める事ですので」




「では、死んだ我が同胞に対しては・・・」




「それもわかりません・・・・・」




本来、戦などでは戦勝国に手を貸した場合、敗戦国の1部を貰ったり、

それ相応の対価を貰ったりするのだが、今回は内部抗争とも取れるので

その様な物が支払われる可能性は低い。


それに、勝ったと言っても被害は大きく、

亜人連邦が支払えるとも思えなかった。




その為、長老は先陣で送り出した100人のエルフの家族や一族に

何も払えない可能性が大きい。




「どちらにしろ、このままでは赴いてくれた同胞に、

 申し訳が立たない。


 建て替える形にしてでも、

 こちらで、準備するしかないな・・・・・」



ここまで話を聞いていた京太が、

アイテムボックスから袋を取り出した。


テーブルの上に、その袋を置く。



「ここに、僕達が得た報奨金があります。


 これを皆で分けましょう。


 サリー、これを均等分配してくれる?」




「はい、わかりました」




サリーは、京太から袋を受け取ると、それを見て

慌てて止めようとするアーチボルト。



「京太様、それは、貴方方の報酬の筈では・・・・・」




「でも、無いと困るでしょ。


 それに、このお金は亜人連邦から貰った物だから

 これを分ければいいよ」



「申し訳ない。


 京太様、感謝致します」



立ち上がったジョゼが頭を下げる。


すると、長老やその場にいたエルフ達も、席から立ち上がり

同じように頭を下げた。




「感謝致します」




会議を終えた後、ジョゼにエルフの里から出兵した詳しい人数を、

サリーに伝えるように、お願いしてから

食事へと移った。




翌日、サリーとセリカ、イライザ、マチルダは、

ジョゼから聞いた人数と京太達の人数分に、

金貨200枚を分ける作業を始めた。




その間、ラムとミーシャは、

久々に、それぞれの自宅へと戻ることにする。




ラムが自宅に戻ると、鬼の形相をした母【サラ】が待っていた。




「ラム、お帰り。


 この間は、ゆっくり話せなかったけど、

 今日は、時間あるわよね」




「・・・・・えっと・・・・・」




ラムは、お土産を持ったまま逃げようとしたが、

先回りしたサラに押さえ付けられた。




「母様、痛い!」




「貴方は勝手に里を抜け出して、

 どれだけ心配したか、分かっているのですか!


 挙句の果てに、勢いに任せて『里を抜ける』とか言い出して・・・・・」




「勢いとかじゃないよ、あれは本心!。


 だって京太の事、信用しないだけじゃなくて、

 嘘つき呼ばわりしたんだもん!」




「確かに私も、あの子達の態度には腹が立ったわ」




「でしょ、だ・か・ら・・・・・

 許してくれると嬉しいな・・・・・とか?」




ラムは、サラに甘えたそぶりを見せるが

サラは許さなかった。




「その事と里を抜け出した事は、関係ありません!」




「・・・・・・ごめんなさい」




サラが溜息を吐く。




「もういいわ、きちんと謝ったし、

 それよりも、旦那様とは上手くやっているの?」




「うん、やっているよ。


 だから、そろそろ押さえつけるの止めてくれると嬉しいかな」




サラは、押さえつけていたラムを開放する。




「すっかり忘れていたわ」




「もう・・・・・」




「そんな事より、私は色々な話が聞きたいのよ。


 中でお茶でも飲みましょ」




完全にサラのペースに巻き込まれているラム。



素直に従い、久しぶりの我が家へと入って行く。






その頃、ミーシャも自宅に到着していた。




「・・・ただいま」




ミーシャの姿を見つけた妹の【テイラー】が飛び着いて来る。




「お姉ちゃん、お帰り!」




「うん、ただいま」




ミーシャに頭を撫でられ、テイラーは、満足そうに笑顔を見せた。


すると、奥から母【シャーリー】が顔を出す。




「ミーシャお帰り。


 そんな所にいないで、中に入りなさい」




ミーシャはシャーリーと共に、家の中に入っていくと、

父親の【コーデル】が座っていた。




「お父様、ただいま帰りました」




「お帰り、しっかり鍛えているようだな」




「はい、鍛錬は毎日行っています」




「それなら、何も言うことは無い。


 久しぶりの我が家だろ、ゆっくりしていきなさい」




「はい」




その日、ラムもミーシャも自宅に泊まり、一家団欒を楽しんだ。




戦闘に参加したエルフ達への慰労金も支払われ

日々の暮らしに戻り始めた頃、

エルフの里に、1人の竜人族が訪ねて来た。




「こちら京太殿は、まだ、ご滞在でしょうか?」




竜人族の男の身に着けている防具はボロボロで

見た感じから疲労困憊であることが分かる。


その状況に、疑念を抱いたエルフの警備兵が尋ねる。




「事情は分からぬが、まずは名前を聞かせてくれまいか?」




「そうでした。


 私は、【ジェラート】と申します。


 竜人族の族長からの伝言を京太殿に届ける為に、

 此処まで来ました。


 会わせて頂けないでしょうか?」




「暫くお待ち下さい」




警備をしていたエルフは、急いでロウの屋敷まで走る。


屋敷に到着すると、京太に竜人族のジェラートと名乗る男が、

竜人族の族長の伝言を持って、訪ねて来ていると伝えた。




「ここまで、連れて来てくれる?」




「畏まりました」




京太が暫く待っていると、ジェラートを連れて戻って来る。


ジェラートは京太の姿を見つけると、

急いで駆け寄り、膝と両手を地面につけた。




「京太殿、先だって助けて頂いたばかりですが、

 どうか、どうか、もう一度お力をお貸しください」




竜人族が来たという話は直ぐに広まっており、エルフの他

屋敷の中にいた京太の仲間達も集まって来ていた。



──この状況だと、話辛いよな・・・・・



「取り敢えず、お話は聞きますので、どうか頭を上げて

 中に入って下さい」




京太はジェラートを起こすと、屋敷の中へと誘う。


応接室に通した後、

ジェラートを落ち着かせてから、話を聞く。


ジェラートは、息を整えてから話始めた。



「京太殿と、そのお仲間達が帰った後、

 隣国の『シーワン王国』が攻め込んで来ました。


 目的は、空いた領土の占拠と、

 亜人族の女、子供を攫って奴隷にする為です。


 奴らは、私達が疲弊し、男が少なくなった事を知っていたようで、

 全滅した鳥人族の領土と、猫人族の領土から、侵攻して来ました。


 私達も人数を搔き集め、出来る限り対抗していたのですが、

 次々に敗れて、捕虜にされてしまいました」






シーワン王国、正式名称『海洋国家シーワン王国』は、

名前の通り、海に面した国家で、

海産物などの貿易の他、

奴隷売買で儲けている国家である。


国が奴隷売買を許可をしている為、

裏では、他国に赴き人を攫っているなどの噂が絶えない国でもあるのだ。



その理由は、この国が海賊王の【ワン】が設立した国というのも関係している。



海賊が作った国家なので、

他国では法に触れる様な事でも、国は許可をしていた。




「京太様、どうか、お力をお貸し下さい」




京太は、同じ人族が亜人を捕らえて、奴隷にする事が許せなかった。


犯罪を犯したり、借金を返済する為に奴隷になったのなら、

怒りを覚える事は無いが、

今回の様に、

隣国が弱っているからと戦争を起こし、捕らえた者達を奴隷にする事は、

京太の許せる範囲を完全に超えていた。




「いいですよ、力を貸します。


 ただし、前回同様、僕達のやる事に口を出さない事を約束して下さい。


 それから、何が起きても他言無用でお願いします」



ジェラートは、頷く。



「はい、必ず族長に伝え、約束を守ります」




「では、竜人族の族長に

 『僕達は手を貸します。


  貴方達は、里の防衛だけを考えて下さい』と伝えて貰えますか?」




「分かりました。


 戻り次第、伝えさせて頂きます」




京太は、ロウに頼んで、ジェラートに馬を貸し与え、

竜人族の里に伝言を持ち帰らせた。




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