第103話亜人連邦  決着

竜魔族を倒した京太達は、

その後、地竜討伐にも参加した。



暫くして、全ての敵を倒し終えることは出来たが

各部族の兵士は数える程しか残っていない。



戦い終えた者たちは、里に向かって歩き出すが

足取りは重く、武器を杖代わりにして歩いている者が殆どだ。


そんな状況とは知らず、

監視していた斥候から勝利の報告を受けた里は

勝利に沸いた。



そんな騒ぎの中に、辿り着いた兵士達。


当初、歓声に沸いていた里だったが

辿り着いた兵士達を見て、言葉を失った。



アーチボルトが呟く。



「これだけしか、生き残らなかったのか・・・・・」



兵士達の背後には、京太達の姿が見えている。


その状況からも、生き残った者は

ここにいる者達だけだと誰もが理解できた。


生き残りは、どの部族も10人にも満たない。


そして、誰もが傷を負い、フラフラの状態で歩いている。




族長達は、慌てて同族の兵士達の元に駆け寄った。



「大丈夫か、もう歩くな、休め。


 よくぞ、帰って来てくれた」



各族長たちは、褒め称えた後

同族の民に声を掛け、急いで救護室へと運び込んだ。




そんな中、最後に里に辿り着いた京太達。



「京太様!」


声を掛けたのはジョゼ。


ジョゼは、京太達の前まで来ると、労いの声を掛ける。



「この度は、有難う御座います。


 既に、報告は受けておりますので、ごゆっくりなさって下さい」




「うん、ありがとう」




この惨状の中でも、京太達は、誰も怪我を負っていない。


そのことに、ジョゼは内心驚いている。




――この方々は、一体、どれ程の強さをしているのだ・・・・・・・・



そんな事を考えているジョゼに、京太が話しかけた。



「ジョゼ、もし必要なら、兵士達の治療をしようか?」



その言葉に、驚きながらも、丁寧に断りを入れる。



「そちらは、救護の者達がおりますのでお任せ下さい。


 それよりも、今は屋敷でお休みください」

 


「わかった。

 

 そうさせてもらうよ」




京太の返事を聞き、ジョゼの側に控えていたメイドが一歩前に出る。



「ご案内いたします。


 どうぞ、こちらへ」



メイドに案内された大部屋には

既に、ベッドと食事が準備されていた。



「御飯~♪、御飯~♪、御飯~♪」



フーカは、変な歌を口遊みながら、

テーブルに置いてあった果物を頬張る。



それを見ていたクオンとエクスも席に着くと、食事を摂り始めた。


2人に続き、皆も食事を摂り始める中、

京太は汚れた衣服を脱ぎ、楽な格好になると、

ベッドに横たわる。




――これからどうするんだろう・・・・・・




どの部族も、今回の戦いには、

16歳以上の男性を徴集していた。


その為、里に残っている殆どが、女性、子供、老人。


それに、滅んだ部族もある。


生き残った部族も、適齢期の男性は

5人から10人程度しか生き残っていない。



京太は、ベッドに横になりながら、

連邦の今後の事を考えると同時に

改めて竜魔族の恐ろしさを実感していた。



そんな事を考えていると、突然、ベッドが軋む。




「主様、何を難しい顔をしているのじゃ?」




京太の横に、下着のような格好をしたラゴが座る。



「ああ、『禁呪』の恐ろしさっていうか、

 竜魔族の起こした被害の事だよ」




「確かに、今後は大変じゃのぅ」




そう言いながら、京太の体の上に乗ると、

そのまま体を合わせるように抱き着いた。



そして、京太の首に腕を回すと、耳元で囁く。




「主様、それよりも、今は休むと良いぞ」




「ああ、そうだね、少し休むよ」




その言葉を聞き、ラゴも幸せそうに目を瞑った。




しかし、その様子に気付いたフーカが飛んで来る。


文字通り、部屋の中を飛び、ラゴを引き離しにかかった。




「ちょっと!


 1人だけ、なにいい思いしているのよ!」




「やめるのじゃ!


 主様とわらわの大切な時間を奪うではない!」




その騒ぎで、他の仲間達も気付く。




「ああっ!」




透かさずクオンがベッドに飛び乗り、京太の隣で横たわる。




「クオン、わらわの場所を奪うでない!」




上空で手足を『バタバタ』させながら、ラゴは叫ぶが、


フーカに持ち上げられている為に何も出来ない。 


その間に、クオンの反対側を奪ったのは、エクス。




「主の隣は、私の場所です」




京太の両側が埋まり、皆が騒いでいると、

静かに近づいて来たミーシャが、

京太の上に乗り、体を重ねるように寝そべる。



「私は、ここで十分です」



「「あーー!」」




一同が、思わず声を上げた。




「フーカ、いい加減話すのじゃ!」




「嫌よ、京太の横が取られるでしょ!」




「よく見ろ、もう取られておるわ!」




「えっ!」




突然、手を離されたラゴは、

そのままミーシャの上に落ちた。




「「グフッ!」」




ベッドの上で、ラゴのボディプレスを受けた京太とミーシャは、

あり得ない声を上げた。



その声を聞き、ラゴの顔が真っ赤に染まる。




「わらわは、そんなに重たくないぞ!」




その後、ベッドの上で言い合いを続けていると、

部屋の扉が叩かれた。




「失礼致します」




扉を開けて入って来たメイドの動きが止まる。




「・・・・・・し、失礼しました」




部屋から出ようとするメイドを、京太は慌てて止めた。




「違う!


 待って、誤解だから!」




何とか騒ぎを治めた京太は、ベッドの上で座る。




「コホンッ、族長の方々が会議室でお待ちです。


 一緒に来て頂けますでしょうか?」




「わかった、直ぐに行くよ」




京太は、服を着替えると、メイドと一緒に会議室へと向かった。


会議室に入ると、空いている席に座る。




「お待たせしました」




「いや、こちらこそ疲れている所を呼び出してすまない。


 それで、今回の報酬なのだが・・・」




アーチボルトは、そう言うと、テーブルの上に袋を置く。




「ここに金貨200枚を用意した。


 他に、何か欲しい物があれば言ってくれぬか」




「では、商業用の通行手形を頂けませんか?」




亜人連邦は、人族との取引は、あまり盛んに行ってはいない。


その為、人族が街に入る時は、

荷物や取扱い商品などを細かく調べれ、税を多く徴収している。


しかし、竜人族(亜人連邦)の発行する通行手形を持っていると、

税はかからず、調べられることも無くなるのだ。




「その様な物で良いのか?」




「はい、それを頂ければ有難いです。


 ただ、名前はアルゴ商会でお願いします」




「わかった、直ぐに準備をしよう。


 それと、今夜宴うたげを催すので、是非、参加して欲しい」




「わかりました、皆にも伝えておきます」




京太は、金の入った袋を受け取ると、会議室を後にした。





その日の夕方、

早めに会場に行き、竜人族の族長を呼び出す。




「京太殿、どうかなさいましたか?」




「ええ、アーチボルトさんが代表者を降りる件ですが、

 当分の間、保留になりませんか?


 今、降りられると、この国は壊れてしまいますよ」




「我が国の事を考えて頂き、有難う御座います。


 もう暫くは、全力で務めさせて頂きます」




アーチボルトは、深々と頭を下げた。




その後、京太達は宴に参加する。


分かっていた事だが、宴の参加者に男性の姿は少なく、

殆んどが女性や老人、子供だった。




――これからどうするんだろう・・・・・



この先の事を考えると、京太は宴を楽しむ気にはなれない。


それは、、族長達も同じだった。




翌日、京太達は竜人族の里を旅立ち、

エルフの里に向かった。




数日後、予定通りにエルフの里に到着すると、

その足でロウの屋敷へと向かう。



その屋敷の前では、長老と長達が京太達を出迎える為

待機していた。




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