第83話武装国家ハーグへ

王都を出てから数ヵ月後、京太達は、シャトの街に戻って来た。


屋敷に到着すると、いつもの様にスミスが出迎える。




「お帰りなさいませ、旦那様」




「ただいま、留守の間、何かあった?」




「いえ、御座いません。


 ただ、ナイトハルト様のお屋敷が完成致しました」




「それなら、後でお祝いを届けよう。


 それと・・・・・・」




京太は、そこまで言うと、馬車から子供達を降ろした。




「この子達が見習いの子だから、頼むね」




スミスは子供達を見た後

京太へと向き直る。




「この子達は、私の方でお預かりして構いませんか?」




「うん、スミスに任せた方が良いと思うから、お願いするよ」




その返事を聞き、スミスは控えていたメイドに指示を出した。




「この子達をお風呂に、それと着替えをお願いします」




メイドは、一礼した後、子供達を連れて行く。




「子供達の衣類、此処にあります!」




サリーは慌ててメイドを追った。




屋敷に入ると、京太はアイテムボックスに入れていた

個人の購入品を渡した後、

スミスや他のメイド達にお土産を配った。




その後、夕食までのんびりと過ごした。


夕食を終え、風呂で1人で寛いでいると、ラゴが入って来る。




「主様、湯加減はどうじゃ?」




「うん、水浴びばかりだったから、気持ちいいよ」




「なら、わらわもお邪魔するぞ」




ラゴが湯船へと入って来た。




――ああ、今日は、ラゴの番だったのか・・・・・




ラゴは、自分が京太と寝る時は、風呂も一緒に入る事が多かった。


その為、最近は京太も慣れている。




2人で風呂で寛いでいると、扉が開く。




「お兄ちゃん、私も一緒に入る!」




クオンが入って来た。


すると、当然の様にエクスも入って来る。




「主、背中を流します」




「もう、身体は洗ったから!」




「では、もう一度」




エクスは京太の手を引き、湯船から上がらせる。




「ここに座って下さい」




仕方なく京太が従うと、エクスは背中を洗い出した。


その様子に、ラゴが文句を言う。




「お主ら、今日は、わらわの番じゃぞ!」




「それは、寝室の話です。


 お風呂は違います」




「むう・・・・・確かにそうだが・・・・」




その後も、3人は『ガヤガヤ』しながら、

京太を囲んで風呂を

楽しんだ。



翌日、京太はアルゴ商会に向かう。




「おはよう、アルゴは居る?」




その声を聞きつけたアルゴとナタリーが顔をだす。




「京太様、お帰りなさいませ、どうぞ、屋敷の方にお越しください」




2人に誘われて、屋敷に上がり、お茶をご馳走になる。




「アルゴ、頼まれた物、買って来たよ」




「有難う御座います。


 では、後程、お願い致します」




「わかった」




京太は、お茶を飲んだ後、屋敷の庭で商品を取り出す。



すると、奉公人達が、前回の様に木箱を持って並び始めた。


頼まれた商品を次々に出していくと、

奉公人が木箱へと分け、その横でナタリーが帳簿に付け始める。




奉公人達は、まだ店は開いていないのに、既に汗を掻き始めていたが

まだ序の口。


その後も商品を出すと奉公人たちが木箱に詰め分けを繰り返す。



そして、京太が全てを出し終えると、やっと一息ついた。



「これで全部だね」




「はい、確かにありました。


 それで、おいくらだったでしょうか?」




京太は、金額を伝えて、代金を受け取る。



それから、頼まれてはいないが、珍しい物を取り出す。



「あと、こんなのを買って来たんだ」



アイテムボックスから、取り出したのはミカンの様な物。




「これも果物ですね」




「そうだよ、『かん』って言うらしい。


 中々美味しかったよ。


 それから、これは『しな』、

 前に買って来た『ような』に似ているけど違う果物だよ」




『かん』は皮を剥き、『しな』は切り分けて、2人は味見をする。




「んっ!この甘さは、いいですね。


 それに『しな』は、前の『ような』より、歯応えがあるが、

 瑞々しさがあり、とても美味しい」




2人は、切り分けた全てを食べた。




「ところで京太様、これらは、どの位お持ちですか?」




「前の『ような』と同じ位だよ」




「あの・・・・・お売り頂けるのでしょうか?」




「勿論、気に入って貰えたのなら、渡すよ」




それを聞くと、ナタリーは、再び奉公人を呼びつける。



奉公人たちは、先程の倍の商品を運ぶことになり、

開店前なのに全員が疲れ切っていた。




京太は代金を貰うと、アルゴ商会を後にして、屋敷に戻った。


屋敷に戻った京太は、イライザを呼んだ。




「京太様、如何なされましたか?」




「ナイトハルト様の所に、新築祝いに行こうと思うけど、一緒に行く?」




「勿論です」




京太はイライザを連れて、ナイトハルトの屋敷を訪ねた。


屋敷で出迎えてくれたナイトハルトとフィオナに、お土産を渡す。




「いつも、旅に出る度に管理を任せてしまって申し訳ありません」




「ははは、そんな事気にしないで欲しい。


 俺達が、この街に住めたのも、京太殿のお蔭ではないか」




「そう言って頂けると、助かります」




「ところで、お願いがあるのだが・・・・・」




「何でしょうか?」




「実は、これなのだが・・・・・」




ナイトハルトは、一通の手紙を渡した。


京太は、その手紙を開き、読み始める。




手紙は、アクセル王国の北に位置する武装国家ハーグからの手紙だった。


内容は、半年後に行われる記念武闘大会への招待だった。




京太は、ナイトハルトに手紙を返す。




「それで、どうされるのですか?」




「武装国家ハーグは、アクセル王国の隣国でもある。


 それに、アクセル王国とは、貿易も行っているので

 参加しない訳には行かないのだ」




「それで、頼み事とは?」




「京太殿に護衛を頼みたい」




――そうだろうな・・・・・・




京太は、行った事のない国と言う事もあり、この依頼を引き受ける。




「わかりました、ただ、道案内の出来る者の同行をお願いします」




「わかった」




ナイトハルトとの話を終えて屋敷に戻ると、

武装国家ハーグに行く事を伝える。




「時期は、約半年後、仕事の内容は、ナイトハルトとフィオナの護衛」


 

皆は頷いた。


今回は、半年の時間がある為に、急いで準備をしようとはせず、

ゆっくり休む事を優先する。



その為、当分は自由行動となった。


翌日からは、冒険者ギルドで、依頼を受ける者、

訓練に出掛ける者、遊びに行く者、皆が自由に過ごした。




京太は、屋敷の中を見回っている。


すると、メイド服に身を包んだ少女達が、目についた。


少女は京太に気付くと、手を止めて、一礼する。




「頑張ってね」




京太が、声を掛けると、笑顔で頷いた。




――連れて来てよかったなぁ・・・・・・




そんな事を思いながら、執務室に入ると、

溜まっていた書類に目を通す。



街に戻り、落ち着きを取り戻した頃、

京太は、スミスと話す。




「それで、結婚希望者の事だけど、何時頃になりそうかな?」




「はい、その事ですが、当分の間は、仕事を続けると言っていますので

 その間に、出来るだけあの子達に仕事を覚えて貰おうと思っております」




「わかった、


 ところで、結婚したら王都に住むの?」




「いえ、本人達は、この街を希望しております」




「そうか、住む所は?」




「まだ決めていないようです」




「えっと・・・・・結婚するのは、何人かな?」




「3人です」




「わかった、ならお祝いに家を建てよう」




その言葉に、スミスは顔色1つ変えず、返事をする。




「畏まりました。その様に手配致します」




「出来るだけ本人達の希望を聞いてあげてね」




「はい」




家の件は、スミスに任せる事にし、

京太は、王宮に行き、お土産を渡したり、

街の仕事を片付けたりして過ごした。



そうして過ごしているうちに

ナイトハルトとフィオナの護衛で、武装国家ハーグに向かう日となった。




今回は、ナイトハルトも旅に出るので、街の事をどうしようか悩んでいたが、

王妃のエヴィータ アトラと

第2王女のマチルダ アトラが屋敷に住むと言い出したので

任せる事にした。




ただ、スミスにその事を伝えたら、メイド達を集め、大掃除を始めた。




そして、王妃のエヴィータ アトラと

第2王女のマチルダ アトラが屋敷にやってきた翌日、

京太達は、ナイトハルトとフィオナを連れて、武装国家ハーグに向けて旅立った。




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