第74話合流

落ち着きを取り戻しつつある王都。


その状況を見て、京太達は、旅立つことを決めた。



その日のうちに、アクセル王に面会を求めると

すぐに会う許可が下りた為、京太達は王城へと向かう。


王城に到着すると、護衛の兵士が、

王の元への案内を申し出たので、黙って従った。




兵士が案内したのは、謁見の間では無く、執務室。



「失礼します。

 京太様がお見えになりました」



「入れ」



京太達が執務室に入ると、アクセル王は既に仕事をしていた。




「失礼します」




京太が声を掛けると、アクセル王はペンを置き、

ソファーに腰を掛ける。




「京太殿も座ってくれ」




「はい、有難う御座います」




向かいのソファーに腰を掛けると同時に、

メイドが紅茶を運んでくる。


紅茶を配り終えると、メイドは、一礼をして姿を消す。




「アトラ王国に戻るそうだな」




「はい、色々とお世話になりました」




「ははは、お世話になったのは、こちらの方だ。


 儂を治したり、この国を救ってくれたではないか」




「それは、アトラ王からの頼み事でしたから」




アクセル王は、少し寂しそうに呟く。




「そうだったの、儂が先に知り合っておれば・・・・・」




「ははは・・・また遊びに来ます」




「ああ、本当に来てくれるのだな」




「はい、勿論です。


 それと、1つお知らせしないといけない事が、ありまして・・・・・」




言い難そうにしている京太。


アクセル王に促され話し出す。




「シラスの街をご存知だと思いますが・・・」




「ああ、我が国の領土だからな」




「はい、そのシラスの街の領主ですが、反王国派の人間でした」




「なんと、それは誠なのか!?」




「はい、事実です」




その言葉に、アクセル王は頭を抱えた。




「あそこは、我が国の食料をささえる【グリム領】に次ぐ農業地区なのだ」




「グリム領?」




「ああ、王都に一番近い街がある場所だ」




――それで、あの街は栄えていたんだ・・・・・




グリムの街が、栄えていた理由は分かったが、

それ以上にシラスの街の事を伝えねばと思い、話を続ける。




「その、シラスの街ですが、

 僕達が立ち寄った時に襲われましたので、つい反撃を・・・・・・」




そこまで聞くとアクセル王は、身体を乗り出した。




「もしかして、殲滅したのか?」




「はい・・・・・」




その返事を聞き、王は思わず笑顔を見せた。




「そうか!それは良かった」




「それで、現在、領主不在の状態なので、誰かを送って頂けないかと思いまして」




「では、今は誰が管理をしているのだ?」




「イライザです」




王は耳を疑う。




「誰?」




京太は、笑顔で答える。




「アクセル王も御存じのイライザ王女ですよ」



驚きと同時に、アクセル王は立ち上がった。



「何故、早く言わんのだぁ!!!」




アクセル王は、メイドを呼びつけると、

エリノア王妃を呼んで来るように伝えた。



アクセル王の様子から、メイドは急いでエリノア妃を連れてきた。



額に汗をかいているアクセル王を見て

何が良からぬ事でもあったのかと思っていると

エリノア王妃が、ソファーに座るや否や、アクセル王が口を開く。



「エリノアよ、今から儂の言う事を聞いても

 驚かないでくれ・・・」



「貴方、一体、どうしたのですか?」




「ああ、実はな・・・・・」




アクセル王は、今、シラスの街を管理しているのが、イライザだと告げると

エリノア王妃は、第2王女のマリアベル アクセルを呼びつける。




「お母様、御用でしょうか?」




「今すぐシラスの街に行きます。


 至急、荷物を纏めなさい」



「えっ?

 シラスの街ですか?」



「そうです。


 詳しいことは、後で話します。

 

ですので、今は、急いで準備をしなさい」



有無を言わせぬエリノア王妃の態度に

マリアベル アクセルに拒否権が無いことを知る。



「はい、畏まりましたお母さま」



執務室からマリアベル アクセルが姿を消すと

エリノア王妃は、アクセル王に告げる。




「貴方、今は貴族が不足していますが、シラスは大切な領地です。


 ですので、私とマリアベルで赴きます」




「だが、護衛はどうするのだ?」




「騎士団長を連れて行きますわ」




アクセル王は悩んだが、他に手が無いので、

シラスの街は一旦、エリノア王妃に任せる事にした。




「エリノアよ、至急、代理の者を探す。


 それまでの間、頼んだぞ。


 あと、イライザ王女に宜しくと伝えてくれ」




「わかりましたわ」




「それから京太殿、シラスの街迄の護衛を頼んでも良いか?」




「僕たちも行きますので、構いません」




「感謝する。

 それでは、準備が出来次第、出発してくれ」




京太は、王城から戻ると

至急出発する事を仲間に告げ、準備を急ぐ。


暫くして、お互いの準備が整うと、京太達と王妃達は王都を出発する。




エリノア王妃の一行は、

エリノア王妃の他に、第2王女のマリアベル、騎士団長ウォルフ、

メイドのキャシー、カレラ、その他に3人の兵士が同行している。



シラスの街に到着するまでの間に、

当然の様に魔獣は現れたが、

率先して倒す者たちがいたので、

予定よりも早く到着する事が出来た。




シラスの街に到着すると、

エリノア王妃は、マリアベルを連れて領主屋敷に急いで向かう。


領主屋敷に入ると、小さな子供達が一生懸命働いている姿が目に映る。




「これは、どういう事かしら?」




エリノア王妃が悩んでいると、少女が一礼をした後

近づいてきた。




「こんにちわ、お客様でしょうか?」




「貴方は?」




「私は、見習いお手伝いの【エル】と申します。


 どなたかに御用でしたら、お伺いいたします」




たどたどしくも、エルは丁寧に対応をする。




「領主様は、何処にいるの?」




「ご案内します」




エルは、エリノア王妃達を執務室へと案内をする。




「こちらです」




エルは、扉を叩いた後、そっと扉を開けた。




「イライザ様、お客様がお見えです。


 お通ししてもよろしいですか?」




「はい、構いません」




執務室に、エリノア王妃とマリアベル王女が入る。




「イライザ王女、お久しぶりですね」




イライザは、ペンを止め、顔を上げると驚いた。




「エリノア様、それにマリアベル、どうしてここに?」




「それは、こちらのセリフです。


 まさか、貴方が、この地を守ってくれていたなんて

 先日まで知りませんでしたわ」




「あはは・・・これには、理由がありまして・・・・・」




バツが悪そうに答えるイライザに、エリノアは、笑顔を向ける。




「本当に、助かりました。


 この度の国の一大事に、貴方も手を貸してくれていたのですね。


 有難う御座います」




エリノア王妃は礼を述べると同時に頭を下げた。


イライザは、慌てて止める。




「エリノア様、お顔を上げて下さい」




「フフフッ貴方は変わりませんね」




エリノア王妃は、イライザと顔を見合わせて笑った。


そんな2人の間に、マリアベルも加わると

聞きたかった事を話題に出す。




「イライザ様は、いつ、ご結婚されたのですか?」




「え!?」




「ラゴ様から聞きましたわ。

 宜しければ、出会いからとか、色々と教えて頂けませんか?」




マリアベルは、目を輝かせている。


思わずイライザは、後退った。




「それは・・・また今度で・・・ね。

 それよりも、今は、この領地について、話を致しましょう」




「そうですね。


 この地は、当分は私が見る事にしましたので

 色々とお教えいただけると有難いですわ」


 


「わかりました」




イライザが声を掛けると、アネットが入って来る。




「イライザ様、御用でしょうか?」




「明日、商人達に来るように伝えて下さい」




「畏まりました」




その後、イライザは、エリノア王妃、マリアベルと打ち合わせをし、

現状の報告を済ませた。



その日の夕食時、久し振りに全員が揃った。



皆が席に着くと、京太が立ち上がり、皆に労いの声をかける。



「王都組、シラス組、どちらもお疲れ様でした。


 アトラ王に頼まれた事も、無事に達成できたし、

 この街もイライザを始め、ソニア、セリカ、

 ラム、ミーシャ、サリーが、頑張ってくれたおかげで、平和になった。


 本当に感謝するよ。

 ありがとう」




京太の挨拶に続き、エリノア王妃が立ち上がる。




「この度は、我が国の危機に手を貸して頂き、感謝申し上げます。


 アトラ王国には、改めてお礼を申し上げようと思っておりますが

 あなた方には、 本当に、お世話になりっぱなしで、

 なんと申し上げて良いか分かりません。


 これからも、お互いの国を大切にし、友好を育めれば思います」




エリノア王妃が挨拶に続き、

第2王女のマリアベルが自己紹介を終えると、食事が始まった。




その時に京太は、初めて気付く。




「あれっ、アネット、どうしてここにいるの?」




アネットは、配膳をしながら京太を睨む。




「京太様が、私を連れて行って下さらないから、勝手に来ました!」




「そうだったの、ごめん。

 

 次から言ってくれたら、ちゃんと連れて行くから」




「本当ですね!約束しましたよ!」




アネットは、念を押すように、確認をした。


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