第72話反王国派 壊滅

京太は、『ドラゴンソード』を軽く振ってみる。


すると、『エクスカリバー』を振った時と同じような空気の振動を感じた。




――これなら・・・・・




「ラゴ、行くよ」




京太は、隊列を組み、待ち構えている兵士達に突撃を敢行する。


京太が近づいた瞬間、

兵士達が一斉に槍を突き上げたが、

京太はジャンプして躱し、、そのままの体勢で『ドラゴンソード』を振った。




『ブウッン』と風の鳴る音と同時に、風圧が刃のようになり、

兵士達に襲い掛かる。





「うわぁぁぁぁ!」




叫び声を上げながら、風圧で切り刻まれた兵士達の間に着地すると

まだ生き残っていた兵士を倒す。





「なんだ、こいつは、化け物か!」




恐怖を感じ、兵士達は身体の動きが鈍くなる。


その隙を逃さず魔法を唱える。




『ダークプレス』




重く圧し掛かる力に、鈍い音を響かせ兵士達が潰れた。




「う、うわぁぁぁぁぁ!」




「ひぃぃぃぃぃぃ!!」




京太が、『ダークプレス』を連発すると、

あちらこちらで同じ様な叫び声と悲鳴が木霊した。



その阿鼻叫喚とした光景に、兵士達は完全に戦意を失い、武器を落とす。




「駄目だ・・・・・無理だよ・・・

 なんで俺は、こんな奴を相手にしているんだ・・・・」




『ガシャン、ガシャン』と武器を落とす音が響く。




「戦う意思の無い者は、武器を捨てて此処から去れ!


 だが、ここに居る者は、敵とみなし遠慮はしない!」




京太の言葉が響き渡り、兵士達の耳に届くと

一瞬の静寂の後、兵士達は武器を手放し、走り出した。




「貴様ら、逃げるな!」




指揮をしていた貴族は、慌てて引き留めようとしたが、

兵士達の耳には届かなかった。



当初、三百名以上いた兵士達だったが、倒された者や逃げ出した者が大半を占め

残りは、百名足らずまで減っていた。



彼らは、貴族の親類や実家や本人が何らかの恩恵を受けているため

逃げるという選択を選べなかった者達だ。



だが、京太に、そんなことは関係ない。




『エクスプロージョン』




京太の放った魔法は、残った兵士達の真ん中で、大爆発を起こすと

残っていた兵士達を吹き飛ばした。


大半が焼かれ、蠢いている状況下でも

京太は躊躇する事なく、生き残っている兵士達に襲い掛かる。



呆気なく倒される兵士、鬼人の様に大暴れする少年。



その蹂躙劇を隊列の背後から見ていた貴族の1人、

【ミハイル エンデ】子爵は呟く。




「私達は、何を引き寄せたのだ・・・・・・・」




ミハイル エンデ子爵は、本心を語れば

この戦いに参加したくは無かった。


だが、エンデ家は、古くからアヴァロン家の下に付く貴族。


所謂、アヴァロン家の子にあたる貴族家なのだ。


その為、逆らう事が出来ず、今回の反国王派に加わっていたが、

今更ながら後悔していた。




「参加するべきではなかった・・・・な・・・」




勝ち目が無い事を悟ると、絶望し、自然と体の力が抜ける。


そして、武器を落とす。



目の前まで迫っていた京太は、ミハイル エンデに戦意が無いとみなし、

無視して通り過ぎた。




「・・・助かったのか・・・・・」




ミハイル エンデは、京太の『戦う意思の無い者は、武器を捨てて此処から去れ!』

という言葉を思い出し、大声で叫ぶ。




「兵士諸君!

 生き残りたければ武器を捨てよ!」




子爵家の兵士は、その言葉に従い、慌てて武器を手放した。


それに見習うかのように、周りの兵士も武器を捨て始める。




当初、三百以上いた兵士達だったが、

今では数える程しか、生き残っていない。



それも、戦意を失い、武器を捨てた者達だ。




戦闘が止んだ屋敷の周辺は、多くの死体で埋め尽くされていた。



だが、兵士達を盾に、戦況を見ていただけの貴族達は、

我先にとナレシュ アクセルの屋敷に逃げ込んだ為、生き残っている。




「ラゴ、行こうか」




京太は、『ドラゴンソード』に笑顔で話かけると、

ナレシュ アクセルの屋敷に向かって歩きだす。


屋敷の入り口を開けると、兵士とは思えない3人の男が道を塞ぐ。




「小僧、此処から先は、通行禁止だぜ」




男達は、構えていた剣を振りかざし、京太に襲い掛かる。


京太は立ち止まったまま、何かを呟き、剣を横に振った。




『ウインドカッター』




襲い来る男達は、身体が二つに分かれ、倒れた。


だが、放たれた魔法はそこで止まらず、

ナレシュ アクセルの屋敷の1部を破壊する。




「あっ・・・・・まぁいいか・・・」




京太は再び歩き出す。


すると、2階のエントランスから

京太を睨み付ける男の姿があることに気付く。



男は進み出ると、見下したような態度を見せながらも

京太を睨みつけている。




「なんだ・・・子供ではないか、

 だが、貴様が我が兵達を倒し、

 此処に来た事は間違いの無い事実だから遠慮はしないぞ」




男はそう言うと、片手を上げた。


その合図に従い、屋敷のあらゆる所から、

兵士とは思えない男達が次々と姿を現した。



エントランスから見下ろす男は、

この状況に、勝つことを確信しているのか

自信満々で語りかけてくる。




「ここは、私、ナレシュ アクセル公爵の屋敷だ。


 貴様のような愚民が屋敷に勝手に入り込む事は、万死に値する。」




ナレシュ アクセルは、男達に命令を下す。




「殺せ」



襲い掛かる男達。




そんな状況下、京太は、静かに呟く。




――【創造神アトゥム】の力を・・・・・・




京太が、全身にオーラを纏うと、それを一気に開放した。


可視できる程のオーラが、男達に波のように押し寄せて、衝突する。




「ぐっ・・・グワァァァァァ!!!」




息も出来ず、言葉も発せられないまま、壁まで吹き飛ばされると

受け身も取れなかった為に、足、腕、首があらぬ方向に曲がっていた。




「何だ、今のは・・・・・」




驚くナレシュ アクセル。



そこに、転移したと思えるほどの速さで、京太が近づいた。




「貴方を、アクセル王の前に連れて行きます」




「ふんっ、出来る者なら・・・・・・ぐっ・・・」




ナレシュ アクセルは、剣を抜こうとしたが、

京太に鳩尾を殴られて、意識を失う。


剣を取り上げると、

意識の飛んでいるナレシュ アクセルを柱に括り付けてから、

屋敷に残っている残党狩りへと向かった。




屋敷の中を回ると、2人の貴族が、部下を従えて部屋に閉じ籠っていたが、

京太の相手になる筈も無く、あっさりと倒された。


2人の貴族を引き摺り、ナレシュ アクセルの所まで戻ると、

『ドラゴンソード』と化しているラゴに話し掛ける。




「ラゴ、ありがとう。


 君のおかげで、迷わず剣が振れたよ」



その言葉を聞き、ラゴは、光を放つと、

『ドラゴンソード』から、ゴスロリ服を着たラゴに戻る。




「やはり、わらわは、こちらが方が良い」




「うん、僕もそう思うよ」




「そう思うなら、主様、もう少し甘えさせてくれるかのぅ」




ラゴは、そう言うと京太に抱き着いた。



京太は、優しくラゴの頭を撫でる。




「後でね、それより今は・・・・・」




「わかっておる、今は、こ奴らを城に運ぶのじゃろ」




ラゴは、京太から離れると、貴族2人の襟首を持ち、

引き摺りながら屋敷から出る。


同じく京太も、ナレシュ アクセルを担いで屋敷の外に出ると、

空を飛び、王城へと向かった。





一方、逃亡した貴族達が乗る馬車を追う3人は、民家が無いところまで来ると

上空から、フーカが光の矢を放ち、御者を倒して馬車を止めた。



その間に、クオンとエクスが追いつき、

護衛していた者達を倒すと、逃亡した貴族達を捕らえて王城に連れ帰った。




京太達が、王城に戻った時には、クオン達も戻っており、

謁見の間には、貴族達が縛られ、一列に並ばされていた。




壇上の椅子から、立ち上がったアクセル王は、貴族達に近づく。




「ナレシュよ、本来ならお前は他国へ婿に行く筈だった。


 しかし、お前は我儘を言い、この国に残ったが、

 その理由がこの様な事だったとは・・・・・」




アクセル王は、嘆きともとれる言葉を発しながらも、

国王としてのケジメを言葉にする。




「ナレシュ アクセル。

 公爵という立場でありながら今回の事を企てた罪は重い。


 その為、屋敷、財産は没収の上、国家反逆の罪で死刑に処す」




王は、残った貴族にも死刑を言い渡した。




事件は、まだ解決していないが、

アクセル王は、今回の出来事を早急に国民に説明する事を優先し、

同時に、貴族達の処刑を広場で行う事も発表した。




国民は、今迄の事は全て貴族の仕業だった事を知り、

国民の怒りは、全て貴族へと向く。



その為、今回の件で関与しており、

未だ裁かれていない貴族達は、街に出ることも許されず

引きこもった毎日を送る破目になった。




その後の捜査は、アクセル王が直々に指示を出し、

アクセル王の信頼を持つ騎士団員だけで調査したので、

不正が行われる事も無く、捜査は順調に進み、貴族だけに留まらず、

教会で神の啓示と嘘をついた偽の神父と巫女も捕らえる事が出来た。






数日後、京太達はアクセル王の呼び出しを受ける。


謁見の間に通され、正面を見ると

壇上のアクセル王の横、宰相の位置には、

第1王子のフリック アクセルが立っていた。



フリック アクセルが書面を読み上げる。



「この度の我が国の危機に駆けつけてくれた事に感謝し、これを送る」




国王から差し出されたのは、金貨100枚。



それと同時に、『他に欲しい物は、無いか』と問われたが、

思い当たらず保留にさせてもらった。




その後、フリック アクセルから今後の事について説明があり、

当分の間は税を下げ、国民の生活を安定させる事を優先させると伝えられた。




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