第71話反王国派

家族の前に元気な姿で現れたアクセル王に、

王妃エリノア アクセルは涙を浮かべた。




「貴方・・・・・どうして・・・」




「京太殿が、治してくれたのだ」




エリノア アクセルは、京太の方を向く。




「初めまして京太様、私は、この国の王妃、エリノア アクセルと申します。


 この度は、陛下の体を治して下さった事に、最大の感謝を送ります」




「有難う御座います。


 ですが、僕はアトラ王に頼まれただけですから・・・」




エリノア アクセルは、京太に笑顔を向ける。




「それでも、貴方が治してくれた事に変わりはありませんわ.



 流石、イライザ王女の旦那様ですね」




「え! 何故それを・・・・・」




「わらわが教えたのじゃ、駄目だったか?」




「いや、駄目な事は無いよ.

ただ、驚いただけだよ」




「そうか、良かった」




ラゴと会話をしていると、アクセル王が聞いてきた:。




「京太殿は、結婚しておるのか?」




「まぁ、そんな所です」




「主様の嫁は、11人おるぞ」




その言葉に、全員の視線が集まる。




「なんと!、京太殿は凄いのぅ、儂には真似が出来ぬわ」




アクセル王は声を出して笑った。


アクセル王は、笑い終えると、表情を変えた。




「ウォルフ!」




「はっ、ここに」




アクセル王に呼ばれた騎士団長のウォルフは、

部屋の中に入り、片膝を付く。




「今、城の中は、どうなっているのだ?」




「はい、京太殿のお仲間が、

 謀反を起こした者達を制圧に掛かっていると聞いております」




「では、京太殿、暫く力を貸して貰えないだろうか?」




「はい、構いません」




「ならば、一度、謁見の間に集まる事にしよう。


 ウォルフ、お前は兵を集めよ。


 京太殿は、仲間を集めて貰えるか?」




「わかりました」




京太とラゴは、城内に散っている仲間達を、手分けをして集める。



暫くすると、京太とラゴと一緒に、

ハク、フーカ、クオン、エクスが謁見の間に、姿を見せた。




待っていたアクセル王は立ち上がると、

壇上から下りて京太の仲間達を歓迎する。




「我が国の為に力を貸して頂いている事に、感謝申し上げる」




アクセル王が賛辞を述べていると、王妃、王子、王女は頭を下げた。



その光景に、謁見の間に集められていた兵士達は驚いていた。



王が感謝を告げ、王族が頭を下げるところなど見た事が無かったからだ。




「陛下、お気になさらずとも構いません。


 私共は、アトラ王の命を受けてこの場にいますので」




「そう言って貰えると助かる」




「それから、この者達が城で好き勝手にしていた貴族です。


 また、この者達は、国家転覆を狙い、

 王の名を騙って民を苦しめていた者達でもあるみたいだよ」




アクセル王の前に突き出された貴族達は、

アクセル王の元気な姿に驚いていた。




――一体、何があったのだ・・・・・




貴族達の動揺を無視して、アクセル王は問いかけた。




「弁明を聞こう」




最初に声を上げたのは、宰相のモーゼス サリヴァンだった。




「陛下、これは何かの間違いで御座います。


 いままでこの国に尽くして来た私が、陛下を裏切る事など、あり得ません」




「そうか、では、なぜ、アトラ王国からの使者を殺そうとしたのだ?」




「それは・・・・・」




言葉を詰まらせるモーゼス サリヴァンに、

アクセル王は、ため息を吐きながら伝えた。




「そなたが、儂に毒を飲ませていた事も、既に判明しているのだ。


 それでも罪を認める気には、ならぬか?」




アクセル王の問い掛けに、モーゼス サリヴァンは俯いたままだった。




「何も答えぬのなら、それでも構わぬ」




アクセル王が、その場を離れても、モーゼス サリヴァンは、頭を上げなかった。


それは、反省からではなく、自身の計画が失敗したことを悔やんでの事。




――どこで、失敗したのだ・・・・・私は、間違っていない・・・・・

  あと少しで、侯爵になれたのに・・・・・




モーゼス サリヴァンは、ナレシュ アクセルの息子に

国王の座を継がせる事が出来た暁には、

モーゼス サリヴァンに侯爵の地位を約束していたのだ。



宰相を務めてはいるが、モーゼス サリヴァンは男爵家の出身なのだ。


男爵とは、貴族の中では、ほぼ下っ端の爵位である。




その為、王のいない所では、他の貴族達に良いように扱われていた。


それでも、宰相を務めていれば、いつかは爵位も上がると信じていたが

実際は何年務めても、変わる事は無かった。


その事で、王を恨むようになったモーゼス サリヴァンは、

ナレシュ アクセルの侯爵にするという話に乗り、

アクセル王の殺害を企てたのだった。




モーゼス サリヴァンとの会話を終わらせたアクセル王は、

その後も1人1人に話かけた。


そして、最後にロイス アヴァロンと向き合った。




「ロイス、父と母の事を語ってくれぬか?


 あの2人は、何故、突然死んだのだ?」




アクセル王の口から出た言葉に、誰もが理解出来なかった。


だが、観念したのか、ロイス アヴァロンは話を始める。




「アイツらが、悪いのだ。


 俺に説教ばかりしやがって!」




大人とは、思えない口ぶりでロイス アヴァロンは続けた。




「あの2人を殺したのは俺だ。


 俺が、闇ギルドに頼んで殺して貰ったんだよ!」




アクセル王は肩を落とす。




「やはり、そうだったのか・・・」




ロイス アヴァロンの父、【ロディ アヴァロン】とアクセル王は、

子供の頃からの知り合いでもあり

通った学園もクラスも同じで、友人という間柄だった。




その為、ロディ アヴァロンが死んだと聞かされた時は、

ショックを受けたと同時に疑問に思う事があった。



それは、ロイス アヴァロンの事だった。



幼い頃から、我儘で色々と事件を起こしていた息子の事を、

ロディ アヴァロンは心配し、アクセル王に相談していたのだ。


その為、夫婦そろっての突然死だと聞かされた時には、

ロイス アヴァロンの仕業では無いかと疑っていたが、

証拠が無かった為に諦めていた。



だが、事実を知り、亡き友人の事が悔やまれる。




――もう少し、儂が・・・・・・




いたたまれない気持ちで話を終えたアクセル王は、貴族達に告げる。




「お前達の屋敷、財産は没収、並びに爵位を剥奪の上、打ち首に処す」




貴族達は下を向いたまま、兵士達に連行され、牢に送り込まれた。




アクセル王は、京太に向き直る。




「色々と世話になった、この先は儂らでなんとかしよう」




「まだ、主犯の貴族や、反王国派の貴族が多く残っていますよ」




「分かっておる。


 だが・・・・・・・・」




アクセル王の話の途中で、爆発音が響いた。




そこに、兵士が駆け寄り、アクセル王に報告をする。




「何者かが、城内に攻め込んで参りました」




その報告を聞き、京太はアクセル王に告げる。




「この件が、片付くまで手伝うよ」




「すまない・・・」




アクセル王の言葉を受け、京太達は城の正面に向かった。


そこでは、先程、貴族達を牢に連れて行った筈の

騎士団長ウォルフ カレルが戦っていた。


京太は、敵を倒しながら、ウォルフ カレルに近づく。




「ウォルフさん、貴族達は、どうしたのですか?」




「すまない、逃げられた。


 突然襲われて、こいつ等が攫って行ったんだ」




その言葉に、今、城に攻め込んでいるのは、反王国派の者達だと確信する。



京太は、仲間に次々と命令を出す。




「クオン、エクス!


 逃げた貴族を追いかけて!」




「フーカ、空から探して!」




「ハク、遠慮は要らない、薙ぎ払え!」




京太の命令を受け、皆は、それぞれに動き出した。


クオンとエクスは、敵の集団を抜けると、

逃げる馬車を追う。


フーカは、その馬車を上空から追跡を始める。


ハクは擬態を解き、ホワイト バイパーに戻ると、

攻め込んでいた兵士達と貴族を薙ぎ払い、ブレスで氷漬けにする。



その攻撃を喰らい、瞬く間に敵は殲滅され、

城内から一掃された。



その後、ハクは人の姿に戻ると、京太の命令で、アクセル王達の護衛につく。




京太は、ウォルフ カレルから、

ナレシュ アクセルの屋敷の場所を聞き出すと、

城を飛び出し、全力で駆ける。




到着したナレシュ アクセルの屋敷の前には、

三百を超える武装した兵士達と、貴族達が待ち構えていた。



その様子に、京太は足を止める。



そして、屋敷に向かってゆっくりと歩き出した。



その時、上空から京太の後を追っていたラゴが降りてくると

京太の腕に抱き着く。


体を押し当てるようにして、上目使いで京太に迫る。



「主様、そんな鈍らな剣では流石にあの数は無理ではないかのぅ・・・

 どうじゃ、わらわを使ってみないか?」




「いいの?」




「今回だけ、特別だぞ!」




「わかった、頼む」




ラゴは、京太から離れると優雅に一礼をする。




「わらわの意思、主様と共に・・・」




ラゴは光輝き、京太の前で『ドラゴン ソード』へと変わった。


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