第60話王宮での出来事

馬車から降りて来た女性は、クオン達に近づいて来た。




「この度は、助けて頂き有難う御座います。


 私はアクセル王国第一王女、フィオナ アクセルと申します。


 それと、この子はメイドの【ナンナ】です」




フィオナが紹介すると、ナンナも頭を下げた。





「私はソニア。

 それから貴方達を助けたのは、クオンとエクス。」




クオンとエクスは、笑顔を見せる。




「後はセリカとサリー、全員冒険者だよ」




ソニア達の態度に、ナンナの表情が歪む。




「貴方達、フィオナ様に対して、その態度は何ですか!


 膝を付き、頭を下げなさい!」




「あ、ああ、ごめん、つい、いつもの調子で・・・」




「いつもの調子?何を言っているのですか!?」




ナンナが続けて何か言おうとするが、

フィオナが止める。




「ナンナ、良いのです。


 この方達は、命の恩人なのですから」




「はい・・・・・」




ナンナは、フィオナに諭され、後ろに下がった。




「ナンナが失礼しました」



「気にしていないから、別にいいよ」



「ちょっ!」



ソニアの物言いに、再びナンナが口を挟もうとしたが

フィオナが、手で制した。



押し黙るナンナ。



フィオナは、ナンナを制した後、ソニア達にお礼を述べると同時に、

お願いを申し出る。




「私達の馬車は、壊れてしまいましたので

出来れば、王都まで送って頂きたいのですが・・・」




「荷台には、獲物が乗っているけど構わない?」




「それは勿論です」




「じゃぁ、乗って」




フィオナとナンナは、馬車の荷台に向かう。



しかし、荷台の中は、殆ど魔獣で埋まっていた。




「フィオナ様、本当にこれに乗るのですか?」




「そうよ、仕方ないでしょ」




フィオナは、荷台に乗り込むと、魔獣の上に座る。




「ここに乗れば、問題ないわよ

 それに、ふかふかしているから

 お尻も痛くならないわ」



フィオナは、そう言って笑った。



ナンナは、恐る恐る魔獣の上に座る。




「なんか、生暖かいのですが・・・」




「でも、お尻は痛くならないわよ」




そんな会話をしていると、ソニアの声が聞こえてきた。




「出発するわよ」




2人を乗せた馬車は、生き残った護衛の兵士と共に

王都に向かって走り出した。






その頃、京太とイライザは、王城の奥にある

王宮にて国王と面会をしていた。




国王の隣には、王妃と第一王子のナイトハルトの姿がある。




「あの・・・今日は、どういう集まりですか?」




京太の質問に答えたのは、王妃の【エヴィータ アトラ】だった。




「今日はね、ナイトハルト君の許嫁が来るのよ」




「母上、人前で、私を君付けで呼ばないで下さい」




「あら、ここは公の場ではないから、いいじゃない。

 それに家族の集まりなのよ」




「でも、京太殿が、いるじゃないですか!」




「京太ちゃんは、イライザちゃんのお婿さんよ、家族だわ」




――僕は、ちゃん付けなんだ。

  それにしても、この人、砕けているなぁ・・・・・




エヴィータの言動と態度に

京太が思っていた王妃のイメージが崩れた気がする。




『キョトン』とした顔をしている京太。




その姿を見ていたイライザ。



少し、『ムッ』としている。




「京太様、何故お母様に見惚れているのですか!?」




「違うから!」




慌てて否定する京太に、エヴィータは喜ぶ。




「私も、まだまだ現役ね」




そう言って、国王の肩にもたれ掛かった。



国王も満更ではない様子だったが、

皆の視線に気付くと、慌てて襟を正す。




咳払いをしてから、王は話し始めた。




「今日来て貰ったのは、先程もエヴィータが言った通り、

 ここにナイトハルトの許嫁が来るのだが

 京太殿にも、一度会っておいて欲しくて呼んだんだ」




「分かりました。


 ・・・・・けど、僕がいても良かったのですか?」




「勿論だ。

 京太殿は、第1王女であるイライザの夫だ。


 これから親戚になる人物には、会っておいて欲しい」




王の言葉に納得し、同席させてもらう事にした。






京太が、国王達と会談をしていた時、王城の前には、

フィオナを乗せた馬車が到着していた。




だが、豪華な馬車ではなく、魔獣を大量に積んだ馬車だったので、

警備兵は、通行させていいものなのか悩んでいる。




そこに、豪華な衣装を纏った女性が、メイドを伴い

荷台から降りてきた。




「私は、アクセル王国第1王女、フィオナ アクセルです。


 こちらに向かう途中、私どもの乗っていた馬車が壊れてしまいまして・・・・・


 それで、 助けて下さった方の馬車に乗せていただき、

 こちらまで送って頂いたのです」




「そうでしたか。

 理由は、分かりましたが・・・・・」




警備兵は、万が一の事を考え、丁寧に対応しながらも、

フィオナの衣服を見渡す。




「こ、これは、ちょっとした事故があって・・・・・」




フィオナは、襲撃に遭った事を、話そうとはしなかった。


その事に、ソニア達は疑問を持ったが、

この場で聞こうとはしない。



しかし、このままでは埒が明かないと思い、警備兵の元に近づく。




警備兵の前に立つソニア。

その横に、クオンとエクスがいる。



先に口を開いたのは、エクスだった。




「ここに主が来ている筈です。


 会わせて下さい」




「主?」




戸惑う警備兵に、クオンが話しかける。




「お兄ちゃんがいます。


 早く会わせて下さい!」




「お兄ちゃん?」




警備兵は、戸惑うばかり。



見かねたソニアが、ため息を吐きながら警備兵に伝える。




「京太の事よ、イライザと王宮に来ている筈よ」




その名前を聞いた途端、警備兵は慌てて門を開けた。




「どうぞ、お通り下さい」




「ありがと」




ソニア達と一緒にフィオナも門を潜ったが、

疑問に思う事が出来た。




――京太って誰?・・・・・




馬車を兵に任せると、

ソニア達はメイドの案内で、王城にある応接室に通される。




「こちらでお待ちください」




メイドが出て行くと、フィオナは、すかさずソニアに問う。




「先程の京太という方は、どういう方なのでしょうか?」




「他の国の人なら知らなくて当然よね、

 京太は、イライザの夫よ」




フィオナは驚く。




「イライザ王女は、結婚されていたのですか!?」




「まあね・・・・・」




「それで、どちらの御家の方でしょうか?」




「え?」




「失礼しました。


 どちらの貴族家の方でしょうか?


 もしかして、何処かの国の王族なのかしら?」




フィオナは、言葉を訂正しながらも、

京太の出身を聞こうとしている。




「主は、盗賊の砦から来ました」




「えっ!」




驚くフィオナに、クオンが訂正を入れる。




「エクス、それだと誤解を受けます。


 お兄ちゃんは、盗賊ではありません。

 私達を助けてくれて、生活する場所もくれた人です」



──答えになっていないわ



改めて問い直すフィオナ。




「どちらの御家の方なの?」




「知らない・・・」




クオン達は、本当の事が言えない為、知らない事にする。



フィオナは、納得がいっていない。



もう一度、問い直そうとした時、

応接室の扉が叩かれた。




「お待たせいたしました、こちらへどうぞ」




案内されたのは、謁見の間。



そこには、国王を始め、王妃、第1王子、イライザ、京太が揃っていた。




フィオナは、前に出て膝を付く。




「エイリーク アトラ国王様、ご無沙汰しております。


 アクセル王国第1王女、フィオナ アクセル、ただいま参りました」




膝を付き、頭を下げたフィオナに対して、国王は話しかける。




「フィオナ王女、長旅、さぞ疲れただろう、ゆっくりと休んでくれ。


 ナイトハルト、案内をしてあげなさい」




「はい、父上」




フィオナは、ナイトハルトに案内されて、

謁見の間から出て行った。



残ったのは、京太の仲間達。



京太は、驚いている。




「どうしてソニア達と一緒なの?」




「うん、それなんだけど・・・・・」




ソニア達は、襲撃の事を京太に話すと

横で、その話を聞いていた、王と王妃は、難しい顔をした。




「国王は、何かご存知なのですか?」




京太の質問に、王は口を開く。




「噂でしかないのだが、アクセル王国の貴族の中に、

 良からぬことを企む者がいると言うのだ」




「なら・・・」




「ああ、フィオナ殿から詳しい話を聞かねばならぬな。


 それで、京太殿、話を聞く時に同席して貰えないか?」




「はい、僕で良ければ」




国王との話し合いの結果、

翌日フィオナから話を聞く事になり、今晩のフィオナの歓迎会の後、

そのまま王宮に泊まる事になった。


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