第59話村の復興と領地

村から戻った後、京太とイライザは王城に出向き、

レッドオーガの討伐の報告と言葉を話すレッドオーガが生まれた経緯を報告した。



それを聞き、国王は、3の村近くのダンジョンは厳重に警備することにし

兵士を常駐させるようにした。


また、レッドオーガの進化と生まれた経緯については

表に出ないように手を打ち、村人にも口外禁止をいた。



同時に、襲撃のきっかけとなった事件については、

数十年前の事なので、二度と起こらない様にとの厳命にとどめる。







その後、1の村、2の村、3の村を訪れた兵士たちは、

3の村に兵士の宿舎などの建築を始め、

仕事の無い村人たちを人夫と雇い、生活に困らない様に手を打った。








レッドオーガの件から数ヵ月が経った頃、

京太の街では、レッドオーガに捕らえられていた女性達や

テントを貸し出した親子は、それぞれの家に住み始め、

落ち着きを取り戻しつつあった。



彼女達の仕事は、農業が中心だが、

手先の器用な者達は、小物を作ったりしている。



その作物の全てを、アルゴ商会が、買い取ってくれるおかげで

彼女達も安定した生活が送れるようになっている。




破壊された街だったが、少しずつ発展していくと、

他所の街や村から、人々が集まり始め、

徐々に、活気を取り戻しつつある。


だが、それに比例して、悩みごとも増えた。




その中の一つが、京太が連れ帰った女性達を目当てに、

王都や他の町や村から出稼ぎに来ていた

建築関係の者達がこの街に住みたいと言い出した事。



この街で仕事をしている間の食事は

京太の屋敷のメイド達が準備をしているのだが

出来上がったそれを、

働いている人達の元に届ける役目を、助けた女性達が担っていた。



その時に少しながらも話をする機会があったらしく、

彼女達に意中の人や、許嫁がいない事がわかると、

出稼ぎに来ている男達は、

こぞってアピールをする様になっていた。



勿論、ここで働いている者達は、彼女達の生い立ちについては

噂で、多少の事は知っているが、気にするそぶりも無かった。



その証拠に、暇を見つけては、京太の元に押しかけ、

『嫁に』と頼み込む日々を送っている。



そして、今日も・・・・・



「旦那、俺をこの街に住ませて貰えませんか?」



『俺に』と言っているが、

本日も、京太の元を訪ねて来ているのは

一人ではない。



男の背後には、順番を待っている男たちの姿があった。




「・・・・・本当に、毎日頑張りますね」




「これからもこの街の為に働きますから、お願いします」




「でも、彼女達は、やっと落ち着いて生活が出来る様になったんだ。

 それを、荒らされたくない気持ちもわかるよね」




「勿論です、俺にそんなつもりは、ありません。

 ただ、あの子の力になりたいんだ」




――いや、嫁にしたいだけだろ・・・・・でも・・・




京太は、彼女達の今後の事も考えて、

彼らにこの街に住む事を許す。




「わかったよ。

 但し、彼女達に対して、強引な事はしないと約束をしてくれないかな」




「勿論です、そんな奴は、俺の手で追い出してやります!」




「なら、もう言う事は無いよね。

 本人の意思に任せるよ」




「はい!有難う御座います!」




この話は、男の背後で、

順番を待っていた男たちの耳にも届いており

歓声が上がった。



彼らは、口々に京太にお礼を述べると

その場から去って行った。



男たちが去り、一息ついていると

屋敷に兵士が到着する。



「京太様、これを・・・」



兵士の差し出した手紙は、

王城からのもの。



屋敷に入り、

封を開けてみると、『相談があるので来て欲しい』とだけ記してあった。



ただ、それだけ。

端的過ぎて、理由がわからない。



隣に座っていたイライザに尋ねてみる。




「イライザ、何の事か分かる?」




「・・・・・多分ですが、兄の事だと思います」




「兄って、第1王子?」




「ええ。

 ナイトハルト兄様は、

 友好の為に、隣国から、もうすぐ妻を娶る事になっています。


 相手は、子供の頃から知っている人物ですから

 問題は、無い筈ですが・・・・・」




ナイトハルト第1王子の相手は、

隣国アクセル王国の第1王女【フィオナ アクセル】。



両国は、昔からの友好国なのだが、最近は交流も少なくなっていた。


だが、この結婚を期に、

再び強固な結びつきを持とうという話になっているのだ。




「そんな人の事で、僕にどうしろと・・・・・」




「多分、顔見せですわ。

 京太様は私の旦那様だから、お父様は紹介したいのでしょう。


 なので、いつもの恰好で王城に行く事は、お止め下さいね」




「え・・・・・」




京太は気配を感じ、後ろを振りかけると、

そこにはスミスを筆頭に、3人のメイドが待機していた。




「旦那様、お召し物を着替えて頂きます」




スミスはそう告げると、メイド達と一緒に、

京太を着替え部屋へと強引に連れて行った。






その頃、ソニア、セリカ、サリー、クオン、エクスの5人は、

王都から、少し離れた場所で、大量に魔獣を狩り、

馬車に詰め込んで帰ろうとしていた。



その時に、後ろから猛スピードで走ってくる馬車を見つける。




その馬車は、急いでいるのか

速度を落とさずソニア達の横を通り抜けた。




「もう、危ないなぁ!」




クオンが呟いたと同時に、もう一つの集団が視界に入る。



先程の馬車と同じ様に速度を落とす気配すらない。


10頭の馬に乗った者が、ソニア達の横を通り過ぎる。


ただ、馬に乗っていた者達の服装が、

護衛兵というよりも盗賊に近いように思えた。




「・・・・・ねえ、あれって・・・」




「追われているみたいですね」




淡々というセリカに、ソニアが慌てたように告げる。




「なら助けないと駄目じゃない!!」




「走る?」




クオンの一言を不思議に思いながらも、ソニアは聞き返す。




「・・・追いつけるの?」




「う~ん、時間がかかっていいなら馬車にも追いつけるけど、

 馬の人達なら、直ぐに向かえば大丈夫」




自信満々に告げるクオン。




「なら、先に追ってくれる?

 私達も出来るだけ急ぐから」




「わかった」




そう言うと、クオンは、エクスと一緒に走り出す。


もの凄い速さで駆け抜けて行く2人を見て、ソニアは呟く。




「あの子達、どれだけ恩恵を受けているの?」




「わからないけど、あの子達って

 用事が無い時は、毎日訓練をしているよ。


 それに、2人で山に入って、魔獣を狩ったりもしているし・・・」




それを聞き、ソニアは2人が恩恵を生かす為に、

努力していた事を知った。




「そうなんだ、私達も負けていられないわね」




その言葉に、セリカとサリーは笑みを浮かべて頷く。




「負けていられませんね」




「同感です」




その頃、馬を追ったクオンとエクスは、

山の中を駆けていた。



暫くすると、声が聞こえてくる。



予想より早く、馬に乗った男達に追いついたのだが、

その理由がすぐに分かった。



馬車が追い付かれ、襲われていた。




「お姉ちゃん、追いついたけど、どうするの?」




馬に乗った男達は、攻撃を仕掛け、馬車を止めようとしている。


クオンの決断は早い。



「助けるよ」




「わかった」




2人は山中から道に出ると、剣を抜き、一気に距離を詰める。




「1人は残してね、ソニアさん達が色々聞きたいと思うから」




「うん!」




エクスが返事したと同時に、馬車が道を外して、止まってしまう。



男達は馬からを降りると、馬車に近づく。



ジリジリと距離を詰めていると、突然馬車の扉が開かれた。

飛び出して来たのは短剣を持ったメイド。




「お嬢様には、手出しはさせません!」




男達は笑ったが、メイドは真剣だ。



短剣を男達に向ける。



「この命に代えてもお嬢様は、私がお守りします」




「そんな物で、俺達に敵うと思っているのか!」




男は、メイドに切り掛かる。




――間に合わない!・・・




そう思ったクオンは、剣を持ち替え、石を拾うと、男に投げつけた。



石は、襲い掛かろうとしていた男に命中する。




「痛ぇ!」




男達は、一斉に石の飛んできた方向を見ると、

剣を持った少女2人が、すぐ近くまで迫っていた。



「このガキ!」


睨みつける男たち。


だが、クオンとエクスが、足を止めることはない。



2人 は、男達に追いつくと、戦闘という名の蹂躙を開始する。


「ぎゃぁぁぁ!!!」



「こ、こいつら、なんなんだよ!!!」



抵抗を許さない強さで、男達を屠る。



メイドの視界に映るのは、10歳位の少女たちが両手に剣を持ち、

大人達を蹂躙するという光景。


言葉を失い、立ち尽くすのみ。


呆然としていると、戦いは終わっていた。




クオンが近づき、話し掛ける。




「メイドさん、大丈夫ですか?」




「あっ!

 えっ、ええ、有難う、助かったわ」




メイドは、未だに心臓が高まっており、上手く喋れない。




「本当に大丈夫?」




顔を覗き込むエクス。



その愛らしさに、メイドは少しづつだが、落ち着きを取り戻した。




「ありがとう、本当に助かったわ」




「先程聞きました。


 お礼は、2回目です」




「そ、そうだっったわ、ごめんなさい、私気が動転していたようで・・・」




「そうですか、なら仕方ないです」




男達を放置して、会話をしていると、

ソニア達が追いついた。




「本当に、追いついていたのね」


「はい」


「当然です」



ソニアは、2人の頭を撫でる。



「本当に凄いわね・・・」



満面の笑みを見せるクオンとエクス。



ソニアは、クオンとエクスと共に、

メイドから話を聞こうとした時、

馬車の扉が開き、綺麗な衣装を着た女性が降りて来た。




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