第49話得たもの

――なんで?・・・・・




京太が、空いている椅子に腰を掛けた。


昨日の一件で、宰相の姿は無い。


その為、誰が仕切るのかと思っていたら、王妃が話を始めた。




「まず先に、ご挨拶をさせて頂きます。

 私は、【エヴィータ アトラ】、国王エイリーク アトラの妻です。

 それから、第二王子のハーリー アトラ、第三王子のライナス アトラ、

 最後に第二王女の【マチルダ アトラ】です」




エヴィータの挨拶の最中、子供達は、名前を呼ばれると軽く会釈をした。




「僕は、京太。

 冒険者です」




京太が、自己紹介を終えると、早速本題へと入って行った。




「昨日の事ですが、京太様には、大変ご迷惑を掛けた事をお詫び致します。

 貴方を捕らえようとしていたフェルナンは、

 宰相の任を解き、牢に入れて反省させております。


 また、殺そうとしたナイトハルトは、腕の治療の為、部屋で監禁しております」




「わかりました、敵意がないのであれば、それで構いませんよ」




「そう言って頂けると助かります。


 それから、1つ言い忘れておりましたが、

ナイトハルトは王位継承権を放棄させました」




「そうですか」




「はい、イライザの報告を受けて、昨日の内に調査致しました。

 その結果、 全て事実と判明いたしましたので、

 国王になるには、相応しくないと判断致しました」




「その辺りの事は、お任せします」




京太は、誰が王になろうと関係無いと思っていたので全てを丸投げにした。




「それから、お詫びの件ですが・・・・・」




そこまで言うと、イライザが立ち上がった。


それを見て、エヴィータが話を続ける。




「この子を、嫁がせて頂きます」




「え? えぇぇぇぇぇぇ!」




静かな雰囲気の中、京太は、思いっきり叫んでしまった。




「勿論、嫁入り道具やなども持たせます。

 それに、順番も問いません」




「順番?」




「はい、誰が正妻だとかは、気にしません」




エヴィータの横で、『うんうん』とイライザが頷いていた。


京太は、疑問をぶつける。




「どうして、こういう事になったのですか?」




「はい、この度の事ですが、宰相の兵、ナイトハルトの発言、

 この二つは、許されない事だと理解しております。


 ですが、それは国王としての考えでもなく、

 まして国としての総意でもありません。


 私どもは、京太様と争う意思がないことをご理解いただければと思います。


 ですが、この度のことについて、何らかの証明をしなければと思い

 第1王女でもありますイライザを、

 京太様に嫁がせて頂ければとの考えに至りました。


 このことを以って、争う意思が無いことが証明出来るかと・・・」




「確かにその通りですけど・・・・・」




「それに、この話は私共が強制した訳では無く、本人の意思なのです。

 どうか、汲んでは頂けませんか?」




悩んだ挙句、京太は本人に聞いた。




「僕は冒険者だけど、いいの?」




その質問に、笑顔で答える。




「勿論です。

 もし、結婚が早いと思うのならば、まずは一緒に行動しませんか?」




――なんか、断りずらいな・・・・・




京太は溜息を吐き、諦めた。




「わかりました、まずは一緒に行動しましょう」




「はい!有難う御座います」




満面の笑みで、喜ぶイライザ。

エヴィータも、頷いている。



「決まったみたいですので、話を続けさせていただきます」




この場は、完全にエヴィータが仕切っている。


京太は、ふと、国王に視線を向けた。


国王は、俯いたまま視線を合わせようとはしない。

それどころか、頭が上がらないのか、完全に存在を消していた。




――おい・・・・・・・




続いてエヴィータから語られた話は、

イライザも知らない事だった。




「イライザ、貴方には、シャトの街を領地として差し上げます」




「お母様!?」




「貴方の領地という事は、夫である京太様の領地です。

 貴族では無いので、嫌なしがらみも、仕事もありません。


 しいて言うなら王族の関係者ですので、

 自由にして頂いて構いません」




京太は呆気に取られている。


その間もエヴィータの話は続き、次々に、全てが決まっていく。




――この人、怖い・・・・・・




「街の復興には、国から資金が出ますので、何の心配はいりません。

 イライザ、分かりましたか?」




「はい、お母様、有難う御座います」




あっという間に決まり、話し合いは終わった。



最終的に、イライザの願いは叶えられ、シャトの街が京太の領地になった。




話を終えると、王族達は席を立つ。


部屋から出る前に、国王は、京太の方に向き直った。




「京太殿、色々と迷惑を掛けた事は詫びる。

 出来る事なら、これからは仲良くして頂きたい。


 それと、イライザの事を宜しく頼む」




王は、そう言って頭を下げた。




――この人達・・・・・なんであんな事をしたんだろう・・・・・




京太は、話を聞いたりしている内に、王族が悪人とは思えなかった。


なので、一つの提案をする。




「あの、今後僕達に、敵対しない事と

 本人に反省の意思があるのならば、第一王子の腕を治しますよ」




その言葉に、国王と王妃は、顔を見合わせた。


そして、驚きを隠さずに聞き直す。




「京太殿、どういう事か説明して頂けないか」




「京太様、その様な魔法があるなど、聞いた事が無いのですか・・・・・」




京太は、2人の様子が可笑しくて笑いそうなったが、我慢をして答えた。




「僕の固有魔法を使えば治せますよ。

 ですが、あまり言わないで頂けると有難いです」




「勿論だ、ここに居る者達だけの秘密にしよう。

 それから、あ奴には厳しく言って聞かせる。

 このような事は、二度と起こさせない」




国王の言葉を付け足す様に王妃が話す。




「京太様に敵意を向け、王維継承権を放棄しても、あの子は私達の大事な息子です。

 二度と敵意を向けない様にさせますので、

 どうか、治して頂けませんでしょうか?」




王妃は、言い終えると頭を下げた。




「わかりました、第一王子の所に案内して下さい」




応接室を出ると、国王と王妃の案内に従い、

第一王子ナイトハルトの部屋へと向かった。




「こちらがナイトハルトの部屋です」




王が、扉を開き中に入る。


続いて、王妃も入って行ったので、京太も後に続く。




部屋のベッドで、第一王子のナイトハルトが、横になっていた。




「ナイトハルト、具合はどうだ?」




ナイトハルトは、体を起こす。




「父上、気分は悪くありませんが

 ただ、腕が無い事は、思った以上に不便です」




「そうか・・・1つ聞きたいのだが、京太殿を恨んでおるのか?」




「アイツのせいで片腕と王位継承権をを失いました。

 恨んでいないと言えば、嘘になります。


 ですが、私には、何が起きたのか分かりませんでした。

 二度と戦いたくはありません。」




ナイトハルトの正直な気持ちだった。


その言葉を聞き、京太は前に進み出る。




ナイトハルトは、その時、初めて京太の存在に気付いたのだ。




「お前が、どうしてここに・・・・・」




京太が、ベッドの横に立つ。




「何をしに来たのだ、私を笑いにでも来たのか」




その言葉に王妃が慌てて2人の間に入った。




「ナイトハルト、落ち着きなさい!」




「母上・・・・・」




「京太様は、貴方の腕を治しに来たのですよ」




ナイトハルトは、その言葉に疑問を抱き、国王であるエイリークを見た。


国王は、黙って頷いた。


ナイトハルトは、京太を見ながら話し掛ける。




「本当なのか・・・本当に治せるのだな」




「うん、治せるよ」




その言葉に、ナイトハルトは喜んだ。


だが、王は話す。




「ただし、条件がある。

 お前が、京太殿とその仲間に手を出そうとしたり、

 2度と敵意を向けない事だ」




その条件に、ナイトハルトは頷く。




「そんな事か、私も命は惜しい。

 2度と手を出さない事を約束する」




「では、治しますね」




京太は、ナイトハルトにベッドで横になる様に伝えた後

魔法を唱えた。




「リカバリー」




ナイトハルトの体を光が包む。

その光が収まると、ナイトハルトの腕は、元に戻っていた。




「戻っている・・・・・」




ナイトハルトの腕が戻った事に、2人は喜んだ。




「京太殿、感謝する」




「有難う御座います」




王は、京太に礼を言うと、ナイトハルトと向き合う。




「よいか、約束は、守るのだぞ」




「はい」




「それから、イライザが京太殿に嫁ぐことになった」




「そうですか・・・・・えっ!?」




「イライザの希望だ。

 それとも、認められんか?」




「いえ、認めます。

 王家の事を考えれば、良い事だと思います」




ナイトハルトは、京太と向き合う。




「京太殿、パーティーでは、申し訳ない事をした。

 改めて、謝罪する。


 それから、イライザの事を宜しく頼む」




「そうだね、王族だから権威も大切だろうけど、

 勝手に人の仲間を嫁にしようとか

 殺そうとしようとする事は、止めた方が良いと思うよ」




「ああ、そうだな、本当に済まなかった」




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