第50話引っ越し

ナイトハルトの治療を終えた京太は、イライザを連れて皆の待つ部屋に戻った。




「話し合いは終ったよ。

 なんとか和解出来たし、ナイトハルトの腕も治したよ」




ナイトハルトの腕を治療をしたと聞いたソニア。




「あんな女の敵、放っておけばいいのに・・・・・」




「まぁ、反省したみたいだし、仮にも王族だしね。

 それに、これからの様子を見てから、判断するよ」



「まぁ、京太がそう決めたのなら、

 何も言わないわ。

 

 それで、これからどうするの?」




「明日、アジトに戻ろうと思う」




「わかったけど・・・ねぇ、その人は、何?」




皆の視線が、イライザに集まる。



イライザは、その事に気付くと、挨拶をする。




「私は、アトラ王国第一王女、イライザ アトラ、京太様の婚約者ですわ」




途端に視線が、京太に向けられた。




「京太・・・・・どういう事?」




質問をして来るソニアや仲間の視線は、友好的な物では無く、

鋭く、攻め立てるような視線だった。




「あの・・・・・皆さん、怖いんですけど・・・・・」




怯えながらも、聞き返した京太に、クオンが問いかける。




「お兄ちゃん、私達の事は、どうするのですか?」




「え!?」




「そうです、主、私も婚約者になります!」



──いや、君、剣だろ・・・・・




エクスの発言に、心の中で突っ込みをいれていると

クオンがエクスの発言に便乗してきた。




「妹が婚約者なら、私も婚約者です」




「エクス、クオン、婚約者の意味分かってる?」




「当然です!」




「あっ、そう・・・・・」




どうしたら良いのか悩んでいると、ミーシャ達も婚約者になると言い出した。



収拾がつかなくなり、京太には、お手上げ状態。



その時、事の発端となったイライザが手を上げる。




「皆さんに提案がありますの」




イライザの言葉に、騒ぎが収まる。




――悪い予感しか、しないなぁ・・・・・・




京太がそんな事を思っていると、イライザが提案と意思を告げた。




「京太様の妻は、何人いてもいいと思っています。


 ですので、皆が婚約者として認めて貰い、

 時期が来たら、結婚すると言うのは如何でしょうか?」




イライザの提案に対して、皆は『うんうん』と頷き、満場一致で決定した。




「あの・・・僕の気持ちは・・・?」




「京太は、私達の事が嫌いなの?」




「嫌いじゃないけど」




「なら、問題ないでしょ」




「え!?」




京太が戸惑っていると、クオンが近づき、泣きそうな顔で聞いて来た。




「お兄ちゃんは、私達の事が嫌いなのですか?」




「いや、嫌いじゃないから、そんな顔をしないで!」




クオンは京太に抱き着いた。




「ありがとう!

 お兄ちゃん、大好きです!」




――こんなのどうしたら・・・・・




京太は諦めて認める事しかできない。




「わかった、皆がそれでいいなら構わないよ」




京太が認めた事により、全員が婚約者になった。


皆が手を取り喜ぶ中、京太は皆を鎮めて、話を続けた。




「あのさ、大事な事をまだ伝えていないんだ」




再び、皆の視線が集中する。




「シャトの街だけど、あそこが僕達の領地になった」




「え?それって・・・・・」




「復興の資金は、国が出してくれるからいいけど、問題は・・・」




ラムとミーシャが答えた。




「アジトの事でしょ」




「うん、皆も付いて来てくれるかなぁ」




「だいじょうだと思います。


 万が一、アジトに残る人がいたら、

 生活が出来る様にしておけば問題はありません」




「そうだね、悩んでも仕方ないよね」




「はい」




京太は納得して話を終えた。






その日の深夜、とある1室に京太を除いたメンバー達が集まっていた。



皆に集合をかけたのは、以外にもラゴだった。




「わらわの呼びかけに集まってくれたことに感謝する」




「ラゴ、この集まりは、何の意味があるのだ?」



「エクスよ、主は、わらわ達を婚約者として認めてくれたのだ。

 今後、序列が必要な時も出て来るだろうから、それを決めようと思ったのだ」




「確かに必要よね、私は何番でも構わないけど」




「私も序列は、気にしません。

 でも、王女様とかは、対外的に必要だと思います」




セリカの意見に、イライザ本人は気にしないと言ったが、

シャトの街の事も考えると、序列は高い方が良いという皆の意見に従い、

序列1位にイライザ、2位にエルフ族長老の孫のラムが続いた。


その後は、出会った順番で序列が決まった。




「では、次の議題は、主との同衾の事じゃ」




京太の知らない所で、京太に関する色々な事が決まっていく。



そして翌朝、

京太以外のメンバーは、寝不足になっていた。




――皆、何かあったのかなぁ・・・・・




翌朝、起きて来た皆と一緒に食事を摂った後、

国王に挨拶をし、城を出る事を伝えた。




「そうか、行くのか」




「はい、シャトの街に引っ越す為に、

 荷物を持って来ようと思います」




「では、それまでに、こちらも出来る事をしておこう」




「有難う御座います。


 イライザは、こちらに残って色々と準備をして貰おうと思っています」




「わかった、だが、出来るだけ早く戻って来てやってくれ、

 イライザが寂しがるでの」




「お父様! いくら私でも、その程度は我慢できますわ」





イライザの拗ねた態度に、国王は、笑いながら謝罪をする。




「ハハハ、そうか、すまなかったの」




その様子に、京太も思わず笑ってしまった。




「京太様!」




「ごめん、ごめん、出来るだけ早く戻って来るよ」




国王への挨拶を終えた後、京太達は王都を出発し、アジトに向かった。






それから、数十日後、京太達は、無事にアジトに到着した。


京太は、直ぐに住民達を集めた。




「これから、大切な事を伝える。

 僕は縁があって王都の近くの街を領地にすることになった。


 それで、皆にもその街に引っ越して欲しい。

 勿論、強制では無いから、残りたい人は、此処に残ってくれても構わない。


 期日は、明日までだが考えて欲しい」




京太は、明日もう一度この場に集まる事を告げて、解散を促した。




屋敷に戻ると、京太はスミスを呼んだ。




「旦那様、御用でしょうか?」




「さっきも言ったけど、スミス達はどうするの?」




「私達メイド一同は、旦那様について行きます」




「ありがとう、今後も宜しく頼むよ」




スミスは、一礼すると、引っ越しの準備があるからと言って仕事に戻った。


京太達も各自の部屋に戻り、引っ越しの準備を始めた。




翌日、昨日と同じ場所に、住民達が集また。



京太が皆の前に立つ。




「おはよう、集まってくれて有難う。


 あまり考える時間が無かったかも知れないが、答えを出してくれていると思う。


 その答えを聞かせて欲しい」




住民達は、全員が引っ越す事を決めていた。


その事に感謝を告げ、全員で引っ越しの準備に取り掛かる。


全員の荷物は、京太のアイテムボックスに入れて運ぶ。


住民達は、荷造りの出来た物から、京太に渡していく。




引っ越しの支度に2日間掛かったが、出発はその翌日になった。



その間に、京太は1人でサバクの街に行き、アルゴと面会する。




「京太様、お久しぶりで御座います」




「堅苦しい挨拶は、抜きにしようよ。

 今日は大事な話があるんだ」




 アルゴは、姿勢を正す。




「その話とは?」




「王都から、約1日の距離にあるシャトの街を領地にする事になった」




アルゴは驚いた。




「また、凄い事を成し遂げられたのですね」




「ありがとう。


 実は・・・・・・」




京太は、シャトの街であった事件の事を話した。


そして、街は崩壊し、今は誰も住んでいない事を告げた。




「そんな事が、あったのですね」




「そうなんだ、それで相談なんだけど、シャトの街に支店を出さない?」




「え!?」




「これから街を作るんだ、だから力を貸してくれないかな」




アルゴは考えた。




――この先、この方が絡むなら街は必ず発展するだろう。

  そして、その街に店を出せば、必ず利益は出る・・・・・それに・・・




アルゴは、京太を待たせて、ナタリーを呼び

京太の提案を聞かせた。




提案を聞いたナタリーは、目を輝かせる。




「貴方、その街へ行きましょう。

 王都の近くなら、色々な物が手に入るし、これから出来る街なのよ」




アルゴは、京太に告げる。




「そう言う事ですので、この店を部下に任せ、

 引継ぎが終わりましたらシャトの街に向かいましょう」




「有難う、これからも宜しくお願いします」




アルゴとの話し合いが終わると急いでアジトに戻った。


 


その翌朝、京太は住民達を連れてアジトから旅立った。


途中、ソニア達に先導を任せ、

京太は、ラムとミーシャを連れてアルの街のギルドに立ち寄る。




アルの街のギルドマスター、クラウスは、3人を迎えると応接室に通した。




「京太様、お久しぶりです。


 ラムもミーシャも元気そうだな」




「うん、元気だよ!

 それに私達、京太さんの婚約者になったんだよ!」




嬉しそうに語るラムの横で、ミーシャも頷いていた。




「事実なのだな・・・」




「事実よ!」




自信満々に胸を張るラムの姿を見たクラウスは

ラムの手を取り喜ぶ。




「でかしたぞ、ラム、ミーシャ!」




クラウスは嬉しさのあまり、応接室の外にまで響き渡る声で叫んでしまった。




「ちょっと!

 クラウス五月蠅い!

 声が大きいわよ」




「ああ、すまない」




2人に謝罪をすると、京太に向き直った。




「京太様、それで此処に来たのは、何か理由があるのですね」




その言葉に京太は頷く。




「実は、王都近くのシャトの街を領地にしました。


 それで、ギルドを作らないかと思って、ここに来たんだ」




「領地を得たと言うのですか?」




「うん、考えてもらえる?」




「勿論です。

 ただ、私一人では決めかねるので、少し時間を頂きたいと思います」




「構わないよ、宜しく頼む」




京太は、目的を果たしたので、

ギルドを去ろうとしたが

クラウスに止められた。




「京太様、領地を持たれたという事は、

 ある程度の実力のある警護の者が必要だと思います。


 それで、里から何人か・・・・・」




そこまで言うと、ラムとミーシャが止めた。




「クラウス、エルフの妻は、もう要りません!」




「エルフは、2人で十分です!」




2人はクラウスを睨む。




「待った、待った!

 ただの警護ですよ、信じて下さい」




「本当ですね・・・・・」




ラムは、疑惑の目を向けている。




「ああ、街の警備の人員も必要になるから、

 人手はあった方が良いと思ってだな・・・

 だから、そんな目を向けるでない」




「まぁ、確かに街の警備は必要だけど・・・・・」




「では、里に伝えておきます」




確かに人手は必要だったので、頼む事にした。




「うん、お願いするよ」




ギルドから出る時、ラムとミーシャは、しつこい程にクラウスに念を押していた。


クラウスは、京太に助けて欲しそうな目を向けていたが、気付かない振りをする。




――ごめん無理・・・・・




アルの街を出発した3人は、ソニア達に合流する為に急いだ。




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