第45話討伐

中庭には、国王の他に貴族達も集まっていた。




――ギャラリー多くない?・・・・・




そう思いながらも、京太は、クーパー魔法士団団長に向かい合う。




「何時でもかかって来い!」




クーパーの言葉に、京太も言い返す。




「お先にどうぞ」




挑発に乗ったクーパーが魔法を放った。




「【ファイヤーボール】、避けなければ、火傷では済まんぞ」




放たれた魔法。


京太は避ける事はしなかったが、当たる事も無かった。


ファイヤーボールは、京太の前で、何かに弾かれるようにして消えた。




「貴様、何をした・・・・・?」




「次は、僕の番です」




そう言うと、一瞬で詰め寄り、鳩尾を殴る。


京太の早さについて行けず、

無防備で殴られた為に息が出来なくなり、膝を付いた。




「うっ・・・・・貴・・様・・・・ケホッ!・・・」




「勝負あり!」




勝敗は決まったが、周囲の者達には何があったのかさえ、理解出来なかった。


京太達は倒れているクーパーを無視して

その場から立ち去る。


その足で、宰相の案内で宝物庫に向かう。


宝物庫の中には、3本の剣が眠っていた。




1本目は、精霊剣、水の精霊が宿ると言われる魔剣


2本目は、同じく精霊剣だが、光の精霊が宿ると言われる魔剣


3本目は、ドラゴンソード、竜魔剣だった。


ただ、竜魔剣は、力の弱い者が持つと力を吸い取られるという恐ろしい剣だった。



宰相からその説明を受けていると、エクスが剣に近づく。


エクスは、竜魔剣を叩きながら、話し掛けた。




コンッコンッ!




「お前、主の前で失礼だぞ!」




独り言のように剣に話し掛けるエクスに

宰相が変な目で見ていた為に、慌てて京太が引き離す。




「エクス、どうしたの?」




「主、あの剣を選んで下さい」




「わかった」




京太は、宰相から3本の剣を譲り受けた。


その日は、歓迎会が行われる為、京太達は王城に泊まる事になった。


翌日、京太達はシャトの街の近くまで送ってもらう。




「ここでいいです」




馬車を降りると、京太は仲間を集める。




「先に言っておくね.

今回の戦いは、この中から死者が出るかも知れない。


 竜魔族は、過去に神に逆らった竜族の末裔なんだ。

 それも、ただの竜族では無くて、魔法に優れた竜の一族だから

 どんな魔法を使ってくるのかもわからない。

 だから、怖い人は、ここから引き返してくれるかな?」




京太のあまり見る事の無い真剣な表情に、

今回の戦いが死闘になる事を覚った。




「それでもいいよ、私は、ついて行くよ」




最初に答えたのは、ソニアだった。




「私も行きます」




「お兄ちゃんについて行くよ」




「主に従います」




セリカ、クオン、エクスと次々に戦う事を決めた。


その後も、フーカ、ミーシャ、ラム、ハクの順で答えた。




「私は、街の外で、逃げてきた人の傷の手当をします」




サリーは、自分に戦う能力が無いと思い、外で治療する事を決めた。




「サリー、君も僕の加護を受けているから、戦う力はあるけど

 戦闘経験はないから、それがいいと思う。

  今度、一緒に練習しようね」




その言葉に、驚きながらも嬉しく思えた。


 今迄、足手纏いだと思っていたのだから当然の反応だったのかもしれない。




「宜しくお願いします」




笑顔で答えるサリーに、京太も笑顔で答え、1本の剣を手渡した。




「この剣は、保険。

 使う事の無い方がいいけど、此処は敵が多いから保険ね」




サリーは頷き、剣を受け取った。


京太は、皆の方を向き、作戦を伝える。




「竜魔人は、僕が倒す。


 皆は、黒竜と地竜を頼む。

 黒竜に向かうのは、ソニア、ラム、ミーシャ、後衛にフーカ、セリカ。

 地竜にクオン、エクス、ハクでお願い。

 周囲の地竜を倒したら、黒竜の討伐に向かってね」




そう言うと、宝物庫から借りた魔剣を取り出した。


その剣をソニア、ラム、ミーシャに渡したが、

竜魔剣を受け取ったミーシャにエクスが近づく。


エクスは、先程と同じ様に剣を叩きながら、強い口調で言った。




「お前、いい加減起きろ!

 起きないと、主に折って貰うぞ!」



その言葉に、剣が慌てて声を上げた。



「わかった、わかった、わかったから、折らないで下さい!」




慌てた剣は、勝手に鞘から抜け出し、人型へと変化する。


人型に変化した彼女(竜魔剣)は、

ゴスロリのような服を着ていた。



「エクスは、本当に酷いです」




「お前が、主の前で寝ているのが悪いのだ」




竜魔剣が人に変化したことに、皆は驚いている。



その様子を見ている京太は、もっと不思議に思う。


──みんな、エクスが剣だって知っているよね・・・・


そう思ったが、口にはせず、竜魔剣について

エクスに説明を求めた。




「エクス、彼女は?」




「主、奴は【ラゴ】と申します。

 私と同じ人化できる剣です」




スカートの裾を掴み、華麗に挨拶をするラゴ。




「主様、わらわはラゴと申します。

 幾久しく可愛がって下さいます様、お願い申し上げます」




「あ、京太です。

 宜しく」



京太は、改めて問い直す。



「それでラゴは、剣になって戦ってくれるかい?」




その言葉に、ラゴは周囲を見渡した後で京太に聞く。




「エクスは、剣になるのですか?」




「いや、ならないよ、剣になるのは嫌だと言うんだ」




「なら、わらわもお断りです」




「え!?」




「エクスが良くて、わらわは駄目なのですか?」




「そんな事は、無いけど・・・・・」




「では、わらわにも剣を下さい」


「え・・・と・・・」



「わらわにも剣を下さい」



「あの・・・」



「わらわにも剣を・・・」



京太は、根負けし、ラゴとミーシャに剣を渡した。




「ラゴもエクスと一緒に地竜退治をお願いするよ」



「畏まりました。」




「では、行こう!」




京太の合図で、全員が街に向かって歩き始めた。


街に到着し、壊れた壁から中に入ると、

周囲に散っていた地竜達の視線が集まる。


次の瞬間、京太達に襲い掛かった。




「地竜の相手は、私達です!」




3人が飛び出す。


クオン、エクス、ラゴの3人が、飛び掛かってきた地竜を切り倒した。


尚も襲いかかろうとする地竜に、ハクがホワイト バイパーに変化し、

【ブリザード】の魔法を放つ。


寒さに弱い地竜は、凍り付いたり、寒さの為、動けなくなったりしている。

その隙に、4人以外は街の中心へと向かった。


街の中心に向かっていると、突如、黒い炎が襲いかかる。


全員が炎を躱して、放たれた方向を見ると、

そこには黒竜の姿があった。



黒龍は、こちらの様子を伺っている。




「京太、先に行って!」



皆も頷いた事を確認して、京太はその場を離れた。




「絶対倒すよ!」



ソニアの言葉に、皆は一斉に剣を構えた。




その頃、地竜討伐を任されたメンバーは、

捕らえられていた者達を発見していた。



だが、その周囲には、武装した地竜達の姿がある。


ハクの攻撃だと、捕らえられている人達まで被害が出そうなので

魔法が使えない。



クオンは、エクスを呼ぶ。



「エクス、こっちに来て!」



エクスはその声に従い、全力でクオンの元へと走った。




「お姉ちゃん!」




クオンと合流したエクスにクオンが告げる。




「エクス、2人攻撃に切り替えるよ」



「うん!」


2人は、武装した地竜達との距離を詰めると、

2人で4刀流を作り出し、地竜を剣諸共、切り飛ばす。



2人の通った後には、地竜の血で道が出来ていた。



突然の出来事に、他の武装した地竜達の動きが止まっている。


だが、その中から、今迄とは違うタイプの地竜が現れた。


地竜は、2人を睨みつける。




「キサマラハ、テキ。

 センメツスル、ココハ、トオサナイ」



その地竜は、前身は緑の鱗に包まれているが

体形は人に近く、槍と盾を装備していた。


クオンとエクスは、先程と同じ4刀流で素早く切り付けたが、

地竜は槍と盾で防いだ。




「ソンナノ、ツウヨウシナイ」




地竜は、高速の突きで2人の間を割り、連携を崩した。




「コレデ、オマエタチハ、ヨワイ」




2人が地竜と対峙して、手こずっていると、

他の地竜達も集まって来た。




「エクス、一旦引くわ」




「うん」




2人は逃げようとしたが、退路が完全に塞がれていた。




――逃げ道が・・・・・




焦る2人の元に、【ブリザード】が吹き荒れる。




「ハク!!」




「蛇だけではありません、わらわもいますわ」




「蛇、言うな!」




ラゴとハクも合流すると、形勢が変化する。


後方の地竜達はハクが担当し、両側の地竜達は、クオンとエクスが担当。

そして、人型地竜には、ラゴが向かい合った。




「人の真似をする小賢しいトカゲよ。

 貴様の相手は、わらわじゃ、遠慮なくかかって来い。」



「オマエデハ、タオセナイ」



人型地竜とラゴが対峙する。


ラゴは、人型地竜に、素早く一撃を加えると、

その剣に着いた血を舐める。



「う~ん、この匂い、この味、久しく忘れておりましたわ・・・」



「キサマ、ナニモノ?」


人型地竜の顔が、一瞬歪んだように思えたが

ラゴは、気にも留めていない。



「何者でも、貴方には関係のないこと。

 さっさと、かかって来なさい」



ラゴの挑発に乗り、人型地竜が襲い掛かるが

ラゴは、難なく躱した。


その後、お互いが決め手に欠けているのか、

致命傷を与える事が出来ず、長丁場になっているが

それは、全てがラゴの思惑通りだった。


次第に動きが鈍くなる人型に対して、

ラゴは気負わず、淡々と攻撃を繰り返す。




「遅いですわね、どうかなさいましたの?」




「ナニガ、ナニガ、オコッテイルノダ・・・」




攻撃される度に、動きが遅くなっている人型地竜は、

到頭、ラゴの剣を避ける事が出来なくなった。



腕を切られて、槍を落とす。

次に、盾を落とし、無防備になった所で首を落とされた。



ラゴは剣に冷気を纏わせ、寒さに弱いという弱点を突き

少しずつ冷気を強めながら攻撃を繰り返して、刻み、

動きを鈍らせて退治したのだ。




ラゴが、人型地竜を倒した頃、他の地竜達も3人に討伐されていた。


4人は、捕らえられていた人達を街の外に逃がした後、

今度は、黒竜討伐へと向かった。


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