第42話シャトの街

ギルドを出た京太達は、ギルドで紹介して貰った宿に向かっている。


宿の名は【ウィルの宿】。


教えて貰った道を進んで行くと、右側に大きな看板が見えて来た。




「あったよ」




全員で店の中に入ると

髭を生やした男が声を掛けて来た。




「いらっしゃい、宿泊かい?それとも食事か?

 悪いが、食事なら、夕方からだ」




「いえ、宿泊です。

 ギルドの紹介で来ました」




「そうだったのか、宿泊なら1室3人迄で、1泊銀貨1枚と銅貨20枚だ。

 食事は別料金だが、うちで食べて貰えたらサービスするぜ」




「では、4室お願いします」




京太は、銀貨4枚と銅貨80枚を払った。




「確かに受け取った。

 それから、続けて泊まる時は、店の者に声を掛けてくれたらいいからな」




宿の部屋は全て2階にあり、鍵を貰ってから階段を上る。


女性陣には、1部屋を3人で使ってもらい、

京太は1人で泊まる事にした。


部屋割をし、解散すると、

京太は、時間があったので街を散策する事にした。





その頃、ギルドでは、ギルドマスターの【ロバート】から

招集をかけられた冒険者達が集まっていた。



ロバートが会議室の壇上に立つ。




「この度の招集に答えてくれたことに感謝する。


 今回の依頼主は、国だ。


 高額ではあるが、危険度も高い。


 その為、ギルドが誇れる冒険者達を集めさせてもらった。


 仕事の内容は、お前達の耳にも入っていると思うが、


 盗賊に奪われた【シャト】の街の奪還だ。


 この作戦は、王国の兵士達との合同作戦で、出発は明朝、正門前に集合だ。


 皆の活躍に期待する」




会議が終わると、冒険者達は、

薬草を買い付けたり、情報を集めたりして

それぞれに準備を始めた。




翌朝、正門前には、冒険者達と正規兵1000人が集合した。


王国騎士団長【マルセル アーロン】が声を上げる。




「これより、シャトの街奪還に向けて出発する。


 相手の数は、諜報部より700人と聞いている。


 連携を持って確実に敵を殲滅せよ!」



『おー!!!』と兵士達の気合の入った声が響く。




「先頭は兵士軍、その後ろから冒険者達が付いて来てくれ。

 では、出発する!」




「「「おー!!!」」」




騎士団長の号令に、再び雄叫びを上げると、全軍が動き出す。


シャトの街迄は、約1日の距離なので

シャトの街の近くの丘に作戦本部を作り、

そこで1泊して、翌日に攻め込む事に決まった。




作戦決行当日、騎士団長の指示に従い、分隊は街の周りを囲んだ。


その他の者達は、街への突撃隊として正門と後門に別れて、

配置されている。



そして、その時が来た。


騎士団長の合図で、作戦が始まる。


魔法兵達が、閉じている門に向かい、魔法を放つ。




轟音が響いたが、門には防御魔法がかけてあったようで、

傷1つ付いていない。




――作戦がバレていた!!




焦る兵士達。


見計らったように壁の上に敵が現れて、攻撃魔法を放った。


次々に放たれる魔法の前に、

街を取り囲んでいた兵士達は、良い的にしかならず

次々と倒される。




「撤収!撤収!!」




慌てて引き返そうとする兵士達の前に、

道を塞ぐように、敵の召喚士が魔獣を召喚する。


現れた魔獣の集団に、兵士達は食い殺されていく。


そして、ついに分隊長まで倒された。




その為、指揮系統は完全に破壊され、

兵士達は逃げ惑うだけになった。



しかし、チームで行動していた冒険者達だけは、

傷を負う者はいたが、全員が逃げる事が出来た。




逃げることの出来た兵士の数は、400人。


たった一度の戦闘で、600人を失うという大敗を喫する。



騎士団長は、丘から撤退し、王都から半日の所に再び陣を築くと

王都に使者を送り、今回の作戦を敵が知っていた事などを伝えた。




その手紙を受け取った王は、魔法士団を送り込む決断した。



翌朝、王の命を受けた魔法士団500名は、

【クーパー サザーランド】を団長として、王都を出発した。




その日の内に作戦本部に到着したクーパー サザーランドは、

王の命をマルセル アーロンに伝えた。




「騎士団長、マルセル アーロン、貴殿の作戦本部長の任を解く、

 今後は、この私、クーパー サザーランドの指揮下に入り、

 この度の作戦を遂行する事を命じる」




伝えられた、マルセル アーロンは、片膝を付いた。




「謹んでお受け致します」




指揮を受け継いだクーパー サザーランドは、情報を集める。


生き残った兵士や冒険者達に事情聴取をし、出来るだけ多くの情報を求めた。


その結果、敵はただの盗賊ではなく、

何処かに勤めていた兵士達の可能性がでてきた。



その事を踏まえた上での作戦を考える。




敵の行動を監視して、5日が過ぎた。



功績の欲しいマルセル アーロンは、クーパー サザーランドに詰め寄る。




「クーパー殿、いつまでこの様な事をしているんだ!

 敵が貴殿の考えた通りに何処かの兵士崩れだとしても、我々は負けぬ。


 それなのに、何故、無駄に時間を費やすか!?」




功績の欲しいマルセルの頭の中には、勝ち負けなど、どうでも良かった。


このままクーパーが指揮を行い、敵を倒しても、

マルセルは、騎士団長の座を追われる可能性が高いからだ。


その為、ミスをしたクーパーを助け、

自身が敵を倒したという功績が欲しかったのだ。


だが、クーパーが中々行動を起こさない事に焦りを覚え、

考え方が単調になってしまう。



――このままでは、私は終りだ・・・・・

  どうしたら・・・どうしたら・・・いいのだ・・・・・そうだ!  

  攻め込めばいいのだ・・・・・負けることは無い・・あれは事故だ

  俺は・・・悪くない・・・だから、今度は必ず成功する・・・




マルセルは、クーパーに逆らい、兵を起こす。


『仇を取りたい』と嘆いていた兵士達を集め、夜襲の準備を整えた。



その日の深夜、マルセルは100人の兵士と共に作戦本部を抜け出すと、

シャトの街へと向かう。



街の壁に辿り着いたマルセル達は、ロープを使い、壁を登り始めた。


その瞬間、魔法で周囲が照らされ、マルセル達の姿が浮かび上がる。




「敵襲!敵襲!」




その響き渡る声に、マルセル達は、焦った。


手を離せば、落下する。


だが、このままでは、的にされて終わりだ。


それを理解している敵軍は、

遠距離から弓と魔法で攻撃を仕掛けて来る。




マルセルの誘いに乗った100人の兵士達は、

抵抗することが出来ず、敢え無く全滅した。




翌朝、クーパーは、マルセルの姿が無い事に気づく。


同時に、数人の兵士の姿が消えていた事に、悪い予感を覚え、探索をさせると

シャトの街の近くに、昨日まで無かった仲間の死体を発見した。



報告を受けるクーパーは、溜息を吐いて肩を落とす。




――馬鹿な事を・・・・・




クーパーは、王都に使者を送り、この度のマルセルの行動と死亡を報告した。


それから数日後、王国から作戦本部に届いた手紙には、

早急に方を付ける様にと記されていた。




――仕方ない・・・少々強引だが・・・・・




クーパーは、幹部の兵達を集め作戦を話した。




「決行は後日、失敗は許されない。

 この作戦は、当日まで誰にも話さない様に」



「はっ!」



クーパーは、前回作戦が漏れていた事から、

今回の作戦は、クーパーが連れて来た魔法士団の幹部だけに知らされた。




作戦決行当日、クーパーは、800人の兵を3つに割り、

シャトの街の周囲に配置した。



当然、前回とは違う位置だ。




――始めよう・・・・・




クーパーは、作戦開始の合図を送った。

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