第41話王都へ

翌日も山道を進む京太達。


だが、日中は、魔獣や獣を殆んど見かけない。


昨夜の事を考えると、深夜の方が活動が激しいのかもしれない。




そんなことを考えながら、進んでいくと

道を阻むように大木が倒れ込んでいた。



――仕方ないなぁ・・・・・



京太は、大木に触れる。

そして、ゆっくり押すと、大木が動き始めた。



「流石、主です」



「うん、凄いね」



「そんな力、どこから来るのよ・・・・・」



それぞれが好き勝手に呟いている時、

京太のサーチに何かが、引っ掛かった。




「静かに!」




京太の声に、静まり返る。



「京太、どうしたの?」


ソニアが問いかけた。



「この先に、多くの反応があるんだ」




「魔獣とか盗賊?」




「わからない。

 でもこっちのことは、もう、わかってるみたい」




「それで、京太はどうするの?」




「先に進んでみるよ。

 皆は、ここで待機していてよ。

 襲って来たら、そのまま倒すよ」




フーカが手を上げる。




「私も行くよ。

 私だったら、空から攻撃出来るから」




「わかった、一緒に行こう。

 あと、ハクは馬車を守ってもらえるかな、ソニアとセリカもお願い」




「了解よ」




エクスが、聞いて来る。




「主、私達は?」




「馬車から、少し離れたところで待機。

 それで、敵が近づいたら攻撃」




「わかった」




「任せて」




「なら、始めよう」






京太が、先に進んで行くと、大量の矢が降り注ぐ。


その時に、敵の姿を見る事が出来た。


矢の雨を結界で防ぐと、京太は大声で叫ぶ。




「ゴブリンだ!!」




その声は全員に届き、皆が警戒を強めた。


ゴブリンは、1体だと強くは無いが、

集団になると、強敵に変わる。




その事を知っているセリカは、クオンとエクスに指示を出す。




「クオン、エクス、あまり離れないで!

 単独で囲まれると危険よ!」



「うん」


2人は背中合わせで武器を構えて、辺りを警戒した。



フーカは、上空からゴブリンの動きを見ながら、

もっとも集合している場所に矢を放つ。




「サンダーアロー」




雷を纏った矢が地面に刺さると、そこから爆発が起こり、

周囲のゴブリン達を吹き飛ばす。


フーカは、連射を繰り返し、

ゴブリン達を蹂躙した。




その頃、馬車にもゴブリン達が迫っていた。


ゴブリンが、馬車にも突撃を仕掛けて来たが、

ハクがホワイト バイパーに戻り、尻尾で薙ぎ払う。


少し離れた場所から、矢を放とうとしているゴブリンには、

ブリザード』の魔法をを吐き、凍り付かせた。


ゴブリンは、敵わないとわかるとあわてて逃亡を図る。


だが、少し離れたところで戦っていたクオンとエクスが、

それを許さない。


2人は残党を狩り始めた。


空から矢を放たれ、追い回される立場になったゴブリン達に

逃げ道はない。


当然の如く、ゴブリンは全滅した。




戦いが終わったが、未だ、警戒は緩めない。





――この辺りにゴブリンの巣が、あるのかなぁ・・・・・




京太が馬車に戻ると、皆も同じような事を話し合っていた。




「京太、ゴブリンの事だけど・・・・・」



ソニアは、冒険者だから、この数のゴブリンがいるという事は

巣がある可能性が高いことを知っている。



だからこそ、京太に問いかけた。



「ゴブリンの巣が、あるかもしれないの。探す?」



「ギルドから依頼が出ていたら冒険者に悪いしなぁ」




「そうだけど・・・」




ソニアは、何か言いたそうにしている。




「ソニア、どうしたの?」




「・・・・・京太、お願いなんだけど、倒してくれないかな」




「ソニアが、そういうなら、別にかまわないけど」




「ありがと。

 被害が広がる前に、何とかしたいの」




「わかったよ、このまま巣を潰そう」




「ありがとう、我儘言ってゴメン」




「いいよ、これからも言いたい事は言ってよ」




「ありがとう」




ソニアは、笑顔を京太に向けた。


京太は、再びサーチを使う。

だが、先程と違い、範囲を広げている。

すると、ゴブリンの巣らしき場所が、発見する。




「あったよ。

 ここから北に向かった山の麓の洞窟が、ゴブリンの巣だ」



皆がやる気だ。


しかし、馬車の護衛も必要。

その為、京太は、人数を絞る。



「洞窟内の戦闘になると思うから、クオンとエクス、ソニア、ハクで行こうか」




「了解!」




馬車を守り、待機する者と、殲滅に赴くものが決まると

ハクが声をかけてきた。




「私に乗って下さい、その方が早いですから」




ホワイト バイパーの状態のハクは、京太たちを乗せると、動き始めた。



木の間をすり抜けながらも、速度が上がる。


速い。


あっという間に、ゴブリンの巣に辿り着くと、

京太達を乗せたまま、巣の前にいたゴブリンを尻尾で吹き飛ばした。



それだけでは、止まらない。



ハクは、そのまま、巣の中に突撃し、出合頭に倒していく。


50体のゴブリンが、出掛けていたおかげで

巣の中には、殆んど残っていなかった。


巣の中のゴブリンを倒しながら、進んでいくと

奥まった場所でロープに繋がれ、横たわっている5人の女性を発見した。



ホワイト バイパー状態のハクを見ても、驚く気力も残っていない女性たち。




「大丈夫ですか!」




京太が、声を掛けると4人は反応があったが、1人は既に息絶えていた。


生きていた4人も衰弱が激しく、口を聞ける状態ではなかったので、

ハクの背中に乗せ、ゴブリンの巣を後にする。



ゴブリンの巣での戦いは、結局、ハクの独断場で終わった。



馬車に戻ると、亡くなった1人の墓を作って弔い、

生き残った4人には、『ヒール』をかけて傷を癒した。









馬車を走らせ、山道を抜けると

草原に出た。



京太達は、一度休憩を取る事にする。




「セリカ、4人の容態は?」




「今は、寝ています」




「そうなんだ、聞きたい事はあるけど、

 暫くはそっとしておこう」




「そうね」




休憩を終えると、一路、王都を目指した。


途中に小さな村があったので、立ち寄ったのだが

村の住人達は、馬車を商人の馬車と勘違いして近寄って来た。



「あんたら、商人ではないのか?」



「違いますよ、僕達は冒険者です。


 ゴブリンに攫われていた女性を助けたので、

 保護して頂ける場所が無いか聞く為に、

 立ち寄っただけです」




「それなら、王都のギルドに預けるしかないのぅ、

 この辺りの村は、何処も保護はして貰えないと思うぞ」




「そうですか、わかりました」



京太達は、村を去る。


この先にも村はあったが、何処も同じ対応だった。



ポツリとセリカが呟く。




「・・・なんか、冷たかったね」




「仕方ないわよ、何処の村も生活が厳しいのでしょ」




「そうかも知れないけど・・・・・」




セリカの表情は、暗く落ち込んでいた。




――何か、思う事があったのかなぁ・・・・・




その後も、馬車を走らせた。


砦を出てから23日後、王都が見える所まで辿り着く。


その頃には、ゴブリンに捉えられていた彼女達も、

話しが出来る程には、回復していた。


彼女達は、【アーシェ】、【イメルダ】、【エイダ】、【タニア】と言い、

ゴブリンの巣に近い所にあった村の住人だった事が分かった。


ただ、その村は、ゴブリンの襲撃に遭い、既にない。


他にも捕まった者達もいたが、

衰弱した者からゴブリンに連れて行かれて戻って来なかったらしい。




彼女達に王都のギルドで保護して貰うつもりだと伝えると、

彼女たちは、頷いた。


王都の門に到着すると、人数分の通行税を払い、ギルドの場所を聞き

教えて貰った通りに馬車を走らせると、ギルドらしき建物を見つけた。




――ここがギルド・・・アルの街とは、違うな・・・・・




ギルドには、ラムとミーシャを連れて3人だけで入る。


扉を開けて、中に入ると、想像以上の広さ。

酒場も大きく、受付の数も多かったが、

それ以上に冒険者の数が多い。




――この時間でも、こんなに冒険者がいるんだ・・・・・




感心しながらも、受付に向う。




「王都ギルドへようこそ、今日は、どの様な御用件でしょうか?」




「はい、・・・・・」




京太は此処に来るまでの間に、ゴブリンの巣を壊滅させ、

4人の女性を保護した事を告げると

受付の職員は『お待ちください』と言い、その場から離れた。




暫く待っていると、受付の職員は、2人の女性職員を伴って戻って来る。



「お待たせいたしました。

 申し訳ありませんが

 先に保護した女性達に会わせていただけますか?」




「はい」




京太は、表に止めてある馬車にギルドの職員を案内し、

保護した女性達を引き渡した。




その後、ゴブリンの巣の場所や、倒したゴブリンの数など、

色々な事を聞かれた。


保護した女性達からも証言が取れたようで、

京太達は、ゴブリン盗伐の報酬を受け取った。


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