第40話帰宅

狐人族の里を出てから14日後、京太は、皆の待つ砦に戻って来た。


門を潜ると、京太は、砦の皆に歓迎された。




「京太様、お帰りなさい」




「お帰りなさい!」




屋敷の前で、スミスが出迎える。




「お帰りなさいませ、旦那様」




「ただいま、こっちは大丈夫だった?」




「はい、何も問題は御座いません。

 アルゴ商会が、月に2回ほどお越しになられて

 広場で市を開いておりましたので、

 皆も満足しております」




――アルゴは、約束を守ってくれたんだ・・・



そのことを嬉しく思いながらも、

新しいメンバーを紹介し、必要事項の連絡をする。



「詳しくは、また話すよ

 取り敢えず、彼女たちの部屋の準備を頼む」




「畏まりました」




京太は、スミスにフーカとハクを任せ、部屋に戻る。




――今回の旅は疲れたな・・・・・




そんな事を思いながら、自室のベッドで横になると

疲労が溜まっていたのか、知らぬ間に寝てしまった。




どれくらい経ったのか、目を覚ますと、既に日は暮れていた。




――食堂にでも行くか・・・・・




そう思い、起き上がろうとするも、

金縛りにあった様に両腕が動かない。




――どうして!?




取り敢えず声を出して見る。




「あ」




声は出る。


両足は動いたが、何かにぶつかった。

『えっ?』と思いながら、今度は、もう一度、腕を動かしてみる。


やはり腕は、動かない。

だが、手は動いた。


手首を動かし、手をまわす。


すると、固いような、軟らかいようなものに触れた。



――これって、もしかして・・・・・



伸びきった両腕には、エクスとクオンが頭を乗せて気持ちよさそうに寝ていた。


2人は、ただ頭を乗せているだけではなく、

両腕が動かない様に関節を決めていたのだ。




京太は、身動きが取れない。


仕方なく、2人を起こす。



「エクス、クオン、起きて!」



返事がない・・・。


もう一度声を掛ける。



「エクス、クオン、食事に行くよ」




「ん~ん~・・・」




「ふわぁ~、お兄ちゃん、おはよ」




「クオン、エクスを起こしてくれない」




「はい」




クオンは、エクスを起こすと、ベッドから降りる。


京太も起き上がり、3人で食堂へと向かった。




食堂に到着すると、先に、ラムとミーシャが食事をしていた。




「あっ京太、先に食べているよ」




「うん、僕もこれから食事にするよ」




軽く挨拶を交わし、席に座る。


京太が座ると、自然と食事が運ばれてくる。


「有難う」


御礼を述べて食事を始めた。




夕食後、応接室に全員を集めると、今後の事を相談をする。


今後の事とは、旅の行き先についてだ。


その中で、ソニアから、王都に行ってみないかと提案された。




「王都までどの位かかるの?」




「馬車で、20日位かな、通り道にアルの街があるよ」




「それなら、アルの街で旅支度を整えよう」




「わかったわ」




「出発は7日後、それまでは、自由に行動しよう」




皆もその意見に従い、翌日からは、自由に行動した。




京太は、地下に冷凍保存庫を作ったり、大浴場を作ったりして砦ライフを楽しむ。


アイテムボックスには、旅の途中で狩った獲物が多く入っている。


それを、砦の皆に、渡した。


彼らは、血抜きをおこなってから、皮を剥ぎ、冷凍保存庫に放りこんだ。


皆で協力して作業をした為、思ったより早く作業が終わったのだが

冷凍保存庫が獲物で殆ど埋まってしまった。




「旦那様、これ位あれば十分です。

 それに、これ以上入れますと、他の物が・・・」



スミスの報告に、京太も頷く。



「わかった、残りはギルドで買い取って貰うよ」




「有難う御座います」



1日の作業を終え、京太は、夕食前に専用の風呂に入る。



大浴場を作った時、京太が入っていると、

皆が気を使って入って来なかったので

改めて、専用風呂をつくったのだ。




1人でゆっくりと浸かりながら、明日の事を考える。



――獲物を卸して、代金を受け取ったら、アルゴの店に顔を出そう・・・・・



そんな事を考えていると風呂の扉が開いた。




――クオンとエクスかな・・・・・




2人の事だから、言っても聞かないだろうと諦めて声を掛ける。




「クオン、エクスかい?」




「はいそうです」




「主、背中を流します」




そう言って2人が入ってきたのだが、

足音がそれ以上に聞こえて来た。




「え!?」




足音の多さに驚きながら振り返ると、

セリカ、ソニア、ラム、ミーシャ、サリーがいた。




「ちょ、ちょっと待って!!」




焦る京太を無視してエクス、クオン、ミーシャは、『ズカズカ』と進み、

体を洗った後、浴槽に入って来た。


だが、ラムとソニアは、体を隠しながら京太を睨む。




「こっち向くな!」




「馬鹿!変態!」




2人から、理不尽な罵声を浴びながら、京太は背を向けた。




――勝手に入って来てそれは無いでしょう・・・・・




京太が背を向けていると、ゆっくりとセリカが湯船に入ってきた。


思わず、目が合う。




「あまり見ないで下さい・・・」




その仕草に一瞬、『ドキッ』とした。


それを見逃さないクオンとエクスは、京太を睨む。




「お兄ちゃん!」




「主、私達の時と態度が違います」




――ゆっくり出来ないよ・・・・・








翌日、京太はフーカとハクを伴ってサバクの街に出向く。


街に到着すると、先にギルドに寄り、

魔獣と獣を買い取って貰い、その後、アルゴの店を訪ねた。




店に顔を出すと、ナタリーが店先で働いていた。




「ナタリーさん、お久しぶりです」




「京太様、御無沙汰しております。

 旅に出ているとお聞きしておりましたが、お帰りになられたのですね」




「ええ、数日前に戻りました。

 それで、アルゴさんは?」




「今は、出掛けておりますが、直ぐに戻って来ると思いますので、

 屋敷の方でお待ちください」




「わかった、そうさせてもらうよ。

 ところで、魔獣と獣があるけど何処に降ろしたらいいかな」




その言葉に、ナタリーは喜ぶ。




「宜しいのですか?」




「ああ、お土産だと思って受け取って欲しい。

 でも、血抜きはしていないよ」




「構いませんわ、店の裏にでもお願いできますか?」




「わかった、大森林で狩った物だから、大きいけど勘弁してね」




「いえいえ、いつも有難う御座います」




京太は、店の裏に魔獣と獣を5頭置いて屋敷に向かった。


屋敷で、メイドにお茶を出して貰い、ゆっくりしているとアルゴが戻って来た。




「京太様、お待たせして申し訳ありません」




「アルゴさん、忙しい所をお邪魔してごめんよ。

 今日は、新しいメンバーの顔を見せに来たんだ」




「そうでしたか」




アルゴは、フーカとハクの方に向き直り、挨拶をする。

それを受け、2人も自己紹介をした。


お互いが落ち着いたところで、京太が割り込む。



「アルゴ、それで、この2人の服や雑貨を買わせてもらうよ」




「有難う御座います、では、こちらにどうぞ」




3人は、アルゴについて行き、

色々と見せてもらう。


その中で、2人が気に入った物を購入した。




「お世話になったね、ありがとう。

 これからも砦の事、頼むね」




「勿論です、こちらもいい商売をさせて頂いておりますので」




挨拶を終えると、3人は食材を買う為に市場に寄り、

食材を買い終えると、砦に戻った。



フーカとハクは、買った物を部屋に運び込み、

京太は、スミスに金貨と食材を渡す。




「京太様、お金は、まだございますが」




「うん、でも万が一の事を考えたら、持っていて欲しいんだ」




「畏まりました、お預かり致します」




砦に戻って来てから、7日後、京太達は再び砦から出発した。


途中で、アルの街に寄り、足りない物を購入したが、

滞在はせずに、その日のうちに王都へと向かった。



砦を出て4日後、山脈の麓に辿り着く。




「ここで、1泊しよう」




その日は、結界を張り、休んだ。


翌日、山を登り始めたが、思ったよりも厳しい道だった為、

その日は、山の中腹で野営をする事になった。


いつもの様に結界を張って寝ていると、

『ゴンッ!ゴンッ!』と何かに衝突する音が聞こえて来る。


その音に気付き、皆は目を覚ます。




「何の音?」




テントから這い出ると、周りは魔獣に囲まれていた。


魔獣は、結界を破ろうと必死に突撃を繰り返している。




「京太、あれどうするの?」




「逃げて行ってくれそうに無いから、結界の中から攻撃しよう」




「はーい!」




皆は、結界の中から、矢を撃ったり、魔法を放ったりして、次々に倒した。


魔獣たちは、成す統べなく全滅。


倒した魔獣をアイテムボックスに収納すると、皆は再び眠りについた。


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