第12話盗賊のアジト2

京太は、食堂にいたメイド達に話し掛ける。




「彼女達は、僕の仲間達だから警戒しなくていいよ」




メイドや捕らえられていた女性達の視線を受け、

クオンとノルンが京太の背中に隠れる。




「あははは・・・」




――2人共可愛いな・・・・・




「2人共、大丈夫だから」




その言葉に後ろからヒョコっと顔だけを覗かせる。


その途端に、メイドが叫ぶ。




「キャァァァァ!、カワユス、カワユスです!!」




壊れたメイドは、2人を獲物を見つけたような目で見つめながら近づいて来た。


クオンは、怯えたような声で助けを求める。




「お、お兄ちゃん・・・・・」




ノルンは、京太の服を握りしめた。




「メイドさん、2人が怖がっているから・・・・・」




その言葉に我に返ったメイドか襟を正した。




「コホンッ、失礼しました、長い間この砦で生活していたものでして・・・・・」




――それ、関係あるのかな・・・




「此処での生活は、長いのですか?」




「はい、私は16歳の時から、ここでメイドをしています」




「一応、確認ですが貴族のご息女では、ありませんよね」




「はい、私は、モニカと申します、平民の出身です」




「なら、サバクの街の状況は、知っているのですか?」




「存じております。私の両親は、あの街で商人をしていました。

 ですが、コルトの街に向かう途中で盗賊に捕まり、その場で殺されました」




京太は、つらい過去を話させたことに謝罪をする。




「ゴメン、嫌な事を思い出させて・・・」




「いえ、もう吹っ切れていますから」




そう帰すモニカの表情は、暗かった。




「ただ、サバクの街にいる親戚に預けた妹の事が心配で・・・」




セリカが問う。




「あの、サバクの街は、貧困で苦しんでいると聞いていますが」




「ええ、正確には、苦しんでいるのは平民だけです。

 あの街には、平民街と貴族街を分ける壁があります。

 街に運ばれて来る商品は、御用聞きの商人が運んで来るものだけですから、

 売れ残った物しか平民に流れて来ません」




「他の商人達は?」




「はい、他の街に商品を求めて買い付けに行きましたが、

 誰も戻って来ませんでした」




その理由は、聞くまでもない。


領主の兵士達が盗賊と騙り、商人を襲っていたのだから・・・。




ソニアが気になったことを口にする。




「でも、街で作る物もあるでしょう」




「はい、勿論あります。

 しかし、それも税として持って行かれます」




「・・・・・」




この街は終わっている・・・・・・


京太は、思った。




――この世界の貴族は、皆こんな物だろうかと・・・・・




アルの街でも貴族が悪事を働いていた、

そしてここでも貴族が好きなように物事を行っている。


京太は、この国の王家に不信感を抱き始めた。




―― 一度、会って見たいな・・・




色々と考えを巡らせていると、ソニアが話しかけてきた。




「ねぇ、さっきの話だと、他の道にも盗賊が待機しているんじゃない?」




「あっ!!」




その時、京太が予め放っていた【サーチ】に、砦に近づいて来る集団が映る。




「皆は、ここに居て!」




急いで砦の入り口に向かう。




「ちょっと、待ってよ!!」




「あ、サリー、2人をお願い」




ソニアとセリカも京太の後を追った。


京太は、近くまで来ると、物陰に隠れ、目視で確認をする。




――人数は36人か・・・・・ん、1人捕まっているけど、あれは・・・エルフ?


  


檻の付いた馬車に乗せられていた女性は、ギルドマスターと同じ耳を持っていた。


武器も無く、服装もボロボロに近い状態。


──酷い・・・・・



京太がそう思っていると

ソニアとセリカが京太に追いついた。




「もう・・・・勝手に行かないでよ!」




「ごめん、それよりもソニアの言っていた

 他の道に待機していた盗賊が戻って来たみたいだよ」




ソニアとセリカも隠れながら様子を伺う。



盗賊は、2人でも目視できる距離に迫っていた。




「あれ、誰か捕まっているね」




「ああ、多分エルフだ」




「見えるんだ・・・・・」




京太は、驚き問い直す。




「え!?見えるでしょ?」




「あんな後ろの檻の中までは無理よ!」




「私も無理です」




そんな会話をしている間に、

盗賊達は、砦の入り口に辿り着いた。




「門を開けてくれ!」




京太が動く。




「僕が先に行く、捕まっている人の事、頼むよ」




そう伝えて京太は、門まで駆けて行った。




「ちょっ!・・・・勝手なんだから・・・・・」




「まぁ、私達も行きましょ」




ソニアとセリカも動いた。






門の前で待っていた盗賊達は、門が開かない事に戸惑っていた。




「おい、聞いているのか!」




再び声を掛けると、ゆっくりと門が開き始めた。




「やっと開いたか」




扉が開いたが、そこで待っていたのは、京太だった。


見慣れない男性の出迎えに、盗賊達は違和感を覚える。




「貴様は、何者だ!」




リーダーと思われる盗賊が剣を手に取ると、

それに倣うように、他の盗賊たちも剣を抜いた。



そのような状態だが、京太は至って冷静だ。




「僕は京太。

 砦にいた人達は、旅立たれましたのでここにはいません。

 速やかに投降して下さい」




京太の言葉に、リーダーは、怒りを露わにする。




「旅立たれただと・・・・・貴様!団長に何をした!」




――あっ、この人も馬鹿だ・・・




「団長なんて言い方したら騎士団だとバレますよ」




「うっ・・・」




一瞬怯んだが、再び問い直して来た。




「団長は・・・グラム団長は、どうしたんだ!」




「だから、旅立たれましたよ、たぶん・・・この世界から」




その言葉聞き、理解する。



団長や他の者達は、目の前の男に殺された事を・・・




「許さん、全員かかれ!!」




盗賊改め、騎士団は、京太に襲い掛かる。


隊列も無く、それぞれに襲い掛かる者たちなど、京太の敵にはならなかった。


1人づつ確実に一撃で倒す京太に、ソニアとセリカは、目を離せなくなっていた。




――凄い・・・




――京太さん・・・強すぎ・・・




ただ、他にも京太を見ている者がいた。


盗賊に捕まり、檻に捕らえられていたエルフのラムだ。




「何、アイツ・・・強すぎない、でも、あいつを仲間に出来たら・・・」




ラムは、仲間が欲しくなっていた。


エルフの里では強者だったが、

クラウスの元に向かう途中で遭遇した盗賊にあっさりと捉えられたのだ。


その事で、1人でこの世界を回る事をよりも、

仲間を募った方が賢明だと判断したのだ。


そして、目の前には、強者と言える者がいる。


ラムは、京太を仲間にしたいと思った。


その時、檻の外から声が掛かる。




「貴方、大丈夫?」




ソニアとセリカは、戦いの合間を縫い、ラムを助けに来たのだ。


セリカは、風の魔法『ウインドカッター』で檻を切り裂く。




「もう大丈夫よ、さぁ、こっちよ」




ラムの手を引き、檻から連れ出すとすぐに物陰に隠れた。




「助けてくれてありがとう、ところで貴方達は?」




「私はソニア、こっちがセリカ、京太の仲間よ」




「ソニア、京太って言っても分からないわよ」




「そうね、京太は、あそこで戦っている男の事よ」




ソニアは、京太の方に視線を向けた。




――京太って言うんだ・・・




そう思って戦いに目を向けるが、既に戦闘は終わっていた。




――えっ!?、終っている・・・




2人は、当然の様な顔で京太の元に歩み寄る。


ラムも慌てて追いかける。


京太は、2人に顔を向けた。




「捕まっていた人は、助けられたんだね」




「それくらいは出来るわよ」




ソニアは、当然とばかりに言い放ち、腕を組む。


セリカは、横で『クスっ』と笑った。




「助けてくれて有難う、私はエルフ族、族長の孫のラムよ」




「京太です、助かって良かったね」




京太は、『ニコッ』と笑った。




「取り敢えず、場所を変えようか」




そう言って、アジトの中へと戻って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る