第11話盗賊のアジト

「今までの事は、貴様の仕業か!」




有無を言わさず、グラムが襲いかかる。


だが、京太の敵ではない。




襲いかかるグラムの剣を弾き飛ばすと、そのまま切り付けた。




「ぐはっ!」




倒れ込むグラム。


床に倒れ込んだグラムに、京太が歩み寄る。



武器も無く、抵抗の出来ないグラムだが、

まだ心は折れていないのか、京太を睨みつけて、悪態をつく。



「どうした?

 さっさと殺せ!

 だがな、この俺を殺したところで、何も変わらんぞ」


額に汗をかきながらも、抵抗の意思を見せたグラムだったが

京太の剣が、足元で振るわれた瞬間、表情が変わり、悲鳴を上げた。


「ぎゃぁぁぁぁ!!!

 あ、足が・・・・・」


京太によって、グラムの足が切り落とされたのだ。



もう、逃げることも出来なくなったグラムを、京太は放置する。



そして、男達の服を剥ぎ取り、

部屋の隅で固まっている女性たちのもとへ歩みを進めた。




「今は、これしかないから・・・」




一番近くにいた女性に差し出す。




「取り敢えず着てくれるかな・・・その・・・目のやり場に困るから・・・」




俯きながら伝えた。


京太のその言葉を聞き、女性は驚き、笑った。




「可笑しな人ですね、とても強いのに、そんな顔をするなんて・・・」




女性は、皆の元に行き、渡された服を配った。


女性たちは、服を着終えると、

背中を向けていた京太に告げる。




「もういいですよ」




――良かった・・・!!!




振り向いた京太だっがた、服を預けた女性は、上着だけだった。




「ちょ、ちょっと!・・・下を履いて下さい!!」




「えーもうありませんよ」




女性は、悪戯っぽく笑った。




――勘弁してよ・・・




京太は、グラムに近づく。




「服を頂けませんか?」




突然の申し出に、グラムは呆気に取られた。




「き、貴様は何処まで人を虚仮にすればいいのだ!

 そんな事よりも、さっさと殺せ!」



「黙って言う事を聞いてください」



グラムから京太は服を剥ぎ取る。


そして、剥ぎ取った服を先程の女性に渡す。




「これを着て下さい!」




「はーい」




先程迄と変わって、明るい雰囲気になっていた女性に、京太は驚いていた。




――さっきまで、酷い目に合っていたんだよな・・・




京太は、女性達を放置して、グラムの元に戻った。




「お待たせしました」




血を流し過ぎて青白い顔になっているグラム。




「貴様は、何処まで・・・・・」




そこまで言うと、意識を失った。

そして、二度と起き上がることはなかった。




――聞きたいことが、あったのに・・・・・




仕方がないとばかりに、諦め、

京太は、女性達と向き合う。




「助けようと思っているけど、外にはまだ敵がいるから、

 少し待っていてくれるかな」




「はい、でもここに居ても大丈夫ですか?」




「それは、安心していいよ、魔法で入れない様にしておくから」




「わかりました」




「必ず、戻って来るから」




そう伝えると、京太は部屋を出る。


隠し扉から広間に戻ると、兵士達に遭遇した。




「お前は、どこから入ったんだ!」




兵士が仲間を呼ぶ。




「敵襲!!敵襲!!」




その声に反応し、広間にゾロゾロと兵士が集まって来た。




――流石に多いな・・・




京太は、兵士達に警告をした。




「抵抗しなければ、命までは奪いません。

 でも、歯向かうのであれば、容赦しないよ」



京太の警告は、意味をなさなかった。



「誰が、ガキのいう事など聞くか!

 全員、抜剣!」



一斉に剣を抜き、構えた。



その瞬間、京太が動く。



――先手必勝!



京太は、兵士達の陣形が整うのを待たずに攻撃を仕掛けた。

間合いを詰めると、すかさず剣を振るう。



正面に構えていた兵士達が倒れる。



京太の速さに兵士達は追いつけず、何が起こったのか分からなかった。




「な、なんだ・・・・今の?」




焦る兵士を他所に、京太は攻撃を繰り返す。


集まった兵士達は、次々に倒され、気付くと誰一人立っていなかった。




――さてと・・・




京太は、剣を手に持ったまま、アジトの中を歩く。


襲い来る兵士には容赦せず倒したが、

京太の警告に従い、武器を捨て降伏した者達には、手を出さなかった。



そのおかげで、アジトにいたメイド達と一部の兵士は、命を落とさずに済んだ。



京太は、アジトの中を回った後、生き残っている者達を食堂に集まるように促す。


降伏した兵士達やメイドが食堂で待機していると、京太が姿を現した。


息も切らせず、傷1つ付いていない事に兵士達は慄おののく。




「嘘だろ・・・」




「何者なんだ・・・」




「逆らわなくて良かった・・・」




京太が、前に立つ。




「皆さんは降伏したので、抵抗しない限り何もしません。

 でも、命令には、従って貰います」




その言葉を受けて、1人の兵士が、質問をしてきた。




「あの・・・どの様な事でしょうか?」




「それは、僕の質問に答えてもらう事とアジトの掃除です」




「掃除?」




「はい、汚してしまいましたので」




先程迄、ここでは戦闘が繰り広げられていた為に、

色々な所に血の跡や死体が転がっている。



「全ての部屋を掃除してもらいます」



京太は、兵士とメイド達をグループに分けると、それぞれに仕事を与えた。




「では、お願いします」




皆がそれぞれの仕事に向かったのを確認した後、もう一度隠し部屋に向かう。


隠し部屋に辿り着くと、女性達は一カ所に纏まっていた。




「お待たせ、では、行きましょう」




結界を解き、女性達を連れて隠し部屋を出ると、隠し部屋の入り口を潰した。




――こんな部屋はいらない・・・・・




誰にも聞こえる事の無い言葉を呟いた後、

女性達を食堂に連れて行き、

近くにいたメイドに、女性達の身柄を預ける。


メイドに、女達達を任せると、京太はアジトを出て野営地に向う。


外に出ると、日が昇り始めていた。


急いで皆の元に戻ると、クオンが起きていた。




「お兄ちゃん、お帰り」




「クオン、起きていたの?」




「うん、皆も起きているよ」




声が聞えたのか、テントからゾロゾロと皆が出て来た。




「京太、お帰り」




「おかえり・・・」




皆の目の下には、クマが出来ていた。




――寝ていなかったのか・・・




京太は、反省する。


皆の事を守る為とは言え、一言告げただけでその場を去った。


その為に心配をかけてしまった。




――今後は、気を付けよう・・・




京太は、心に誓った。


野営を片付けると、皆を連れて盗賊のアジトに向かって歩き出す。


アジトに向かっている途中で、皆の元を離れている間に、あった事を話した。




「それじゃぁ、残って見張っていた盗賊は?」




「ああ、皆に会う前に倒したよ」




「そうなんだ、でも、私達も冒険者なんだから、相談してよね」




「そうですよ」




ソニアとセリカに言われて、気が回っていなかった事に改めて反省した。




――なんか、怒っていない・・・?




2人の雰囲気に押されていたが、気付かない振りをしながら歩く。


暫く歩いていると、アジトが見えて来た。




「嘘っ!あれがアジト?」




「大きいわね」




「そうなんだ、僕も初めて見た時は、驚いたよ」



アジトに到着すると、最初に食堂に向かって歩く。



ソニアたちは、途中で掃除をしている盗賊のような男とメイドたちを見かける。


「一体、どういうこと?」


何とも言えぬ光景に、疑問を持ちつつ、京太の後ろをついて歩く。



暫く歩き、食堂に到着すると、京太に従い中へ入る。



中には、メイドの他、助けた女性達が待っていた。


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