第7話ギルド
京太に賭けたのは、ごく僅かな冒険者達とクオンたちだけだった。
その事に満足したコルドは、笑みを浮かべながら京太に殴り掛かる。
京太は、攻撃を躱す同時に後ろに回り込み、膝の裏を蹴ると
コルドは、膝から崩れ落ちた。
膝をついた瞬間にコルドの延髄に蹴りを放ち、コルドの意識を奪う。
大きな音を立てて倒れたコルドを見て、冒険者達は、静まり返っていた。
「嘘だろ・・・・・」
「おい・・・・・本当にコルドが負けたのか・・・」
静まり返っている中、クオンは飛び上がって喜んでいた。
「お兄ちゃんの勝ちだ!」
ソニア達と賭け金に近づくと反対側からも京太に賭けた冒険者と
受付にいた女性が近づいて来た。
「兄さんに賭けて良かったよ、貰っていくよ」
「私、見る目はあるんですよ」
冒険者と受付の女性は儲け分を受け取ると、その場から去っていく。
残りのお金を回収すると、皆は京太に預けた。
結構な金額を渡された京太は、驚いていた。
「こんなに儲かったの?」
「うん、お兄ちゃんが負けるわけないもん!」
「ハハハ・・・ありがと」
京太は、お金を預かる。
すると、先程並んだ受付の女性が、手招きをしていた。
「ねぇ、何か用があったんじゃないの?」
「はい、冒険者登録をしようと思って・・・」
「え!?・・・・冒険者じゃないの!」
「はい、それで登録出来ますか?」
「出来るわよ、この用紙に名前と年齢を書いてね」
渡された申込書に、名前と年齢を書いたが、出身地は空白で提出する。
受付の女性は、申込書を受け取ると京太に聞いた。
「それで、剣士?魔法士?どっちなの?」
「えと・・・どっちも出来ます・・・」
「そうなのね・・・」
受付の女性が悩んでいると、奥の方から声が掛かった。
「ならば、私がテストしましょう」
奥から若そうな男が姿を見せる。
だが、人族と違い、耳が長い。
「ギルマス、宜しいのですか」
「構わないよ、たまには運動しないといけないからね」
ギルマスは、京太の前に立った。
「初めまして、私は、このアルの街の冒険者ギルドのギルドマスター、
【クラウス】だ。
君の試験官を務めさせてもらうよ」
「はい、お願いします」
「それじゃぁ場所を変えようか」
クラウスは、京太達を連れてギルドの横にある練習場に向う。
練習場に到着すると訓練していた者達に、話をつけて場所を空けてもらった。
クラウスと向き合う京太。
「では、始めましょうか」
「あの、どうすれば?」
「遠慮なく、私にかかって来て下さい」
「本当に、いいんですか?」
「ああ、構わないよ」
「わかりました」
京太は、アイテムボックスからエクスカリバーを取り出す。
――!!その剣は!
クラウスは、エクスカリバーを知っていた。
正しくは、エルフの伝承に残っているから、知っているのだ。
《この世界には、どんな種族も持つことの許されない神の剣が存在する。
神々しさを放つ大剣だが、神以外が触れるとその力に耐えきれず消滅してしまう恐ろしい剣でもある。
その剣の名は【エクスカリバー】、神の手により鍛えられた、神の為の剣である。
よってその剣を持つ者は、神である》
クラウスは、理解すると同時に、茫然とする。
――私は、神に・・・
剣を構えないクラウスに、京太は声をかけた。
「あの・・・攻撃してもいいですか?」
何度か声を掛けると、クラウスが正気に戻る。
「あ、ああ・・・失礼いたしました」
「では、始めましょう」
「いや、待て・・・・・待ってください!」
クラウスは、慌てて試験を止めた。
「どうかしましたか?」
「少し、話をさせて欲しいのですが・・・」
「はい、何でしょう?」
「ここでは、申し訳ないので、付いて来て頂けますか?」
クラウスは、京太を応接室に案内する。
クオン達も『付いて来る』と言ったが、クラウスは遠慮してもらい、
2人だけで話をする事にして貰った。
応接室に入ると、クラウスは頭を下げる。
「先程は、大変失礼な事を致しました。
どうか、お許しください」
京太は、クラウスの態度の変化に驚いていた。
「急に畏まってどうかしましたか?」
その問いに答える為に、クラウスは己の種族を語る。
「私は、エルフです。
私共、エルフの間に伝わる伝承に、貴方様の持つ剣の事が記されています」
京太は、エクスカリバーを再び取り出した。
「この剣の事ですか?」
「はい、その剣はエクスカリバーですね」
「知っているのですか」
「私の目には、見た物を鑑定する能力が宿っています。
その為に、貴方様の剣の事も分かりました。
エクスカリバーは、神のみが所持できる剣です」
――剣から、バレるとは・・・
素直に話す事には、抵抗がある。
なにより、12人の神が亡くなった事を話す訳にも行かず、嘘を吐くことにした。
「僕は、確かに天界の人間です。
正確には、神ではなくて、神に仕える者です」
「という事は、天使様でしょうか?」
――羽なんか無いし・・・
「いえ、神様の使いの者です」
地上で暮らす者達にとっては、『天界人』という事だけでも凄い事だが、
京太にはその自覚が無かった。
その為、クラウスの態度が元に戻る事は無かった。
「それで、京太様、これからどうなさるのですか?」
「あはは、そのままなんだね・・・
あの、冒険者になって見たいのですが」
「そうですか、わかりました。
ランクは如何なさいますか?」
京太は、冒険者について説明を受けた。
冒険者とは、ギルドが管理する者達で、能力によってランクが付けられており、
そのランクにより、様々な仕事をする者達である事を教えられた。
「あまり目立たないランクでお願いします」
「わかりました。
少しお待ちください」
そう言うとクラウスは席を離れた。
そして、戻って来た時には、1枚のカードを手に持っていた。
「これをどうぞ」
渡されたギルドカードには、京太の名前とランクが記入されていた。
「Cランク」
「身元は私が補償いたします。
それと、一番下だと受けられない仕事が多いですから
ご不便かと思いましたので・・・」
Cランクとは、FからSまであるランクの中間に値するランクだった。
「Cランクだと人数も多いですし、目立たないと思います」
「感謝します。
それと、僕の事は、内緒にして頂けると有難いのですが」
「はい、承知致しました。
何かお困りの事があれば
私を頼って頂ければ嬉しく思います」
「有難う御座います」
京太は御礼を伝えると、応接室から出て、皆の元に向かった。
「皆、お待たせ」
「お兄ちゃん、大丈夫だった?」
クオンは、心配そうに京太を見つめる。
「クオン、有難う、大丈夫だよ」
クオンの頭を撫でてやると、クオンは、ホッとした表情を見せる。
「京太さん、この後どうしますか?」
「取りあえず、依頼を見てみようか」
「それもそうね」
「賛成!!!」
冒険者でもないクオンの『賛成』の声に思わず笑みが零れる。
京太たちは、掲示板のもとへと向かって歩き始める。
「ソニアとセリカのランクって、何処なの?」
「私は、Cランクよ」
「私は、Dランクです」
「僕もCランクだよ、一緒だね」
その返事に、2人は言葉を詰まらせた。
――え・・・ありえない・・・・・
――京太さんは、能力を隠したのかしら・・・・・
それぞれに思う事はあったが、口に出す事は無かった。
「それで、何か受けるの?」
「う~ん、見てから決めるよ、旅の準備も進めたいから」
「わかったわ、
でも良さそうなのがあったら受けてもいいでしょ」
「構わないよ」
京太の返事を聞き、ソニアは依頼書をみて回り、1つの依頼を手に取る。
「ねぇ、旅のついでにこれを受けてみない?」
依頼内容は、隣街までの運搬だった。
「いいね、僕はオーケーだよ」
「オーケー?」
「いや、賛成です・・・」
――そっか、通じるわけないよな・・・
京太は、ソニアから依頼書を受取ると、受付に持って行く。
先程と同様、左端の受付は空いていたが、
そこには行かず、皆と同じところに並んだ。
だが、左端の受付に座っていた女性が手招きをしている。
京太は、列から離れて、その受付に向かう。
「えっと・・・何か用事ですか?」
「依頼を受けるのでしょ」
「はい、ですがここは上級の冒険者専属の場所ですよね」
「大丈夫、貴方はいいのよ」
受付の女性は、手を出した。
「見せて」
京太は、依頼書を渡す。
受付の女性は、依頼書を受け取ると、手続きを済ませた。
「これでいいわよ、頑張ってね」
「有難う御座います」
「それと、私は【ヘンリ】よ、宜しくね」
「こちらこそ、宜しく」
上級ランク用の受付で手続きをしたが、待合室にいた上級の冒険者達は、
見て見ぬふりをした。
――逆らったら怖いもんな・・・
――ああ、コルドがあれだもんな
遠目に見ていた上級ランクの冒険者達は、
京太にわからない様に、特有の合図で会話をしている。
――あの人達、何をしているんだろう・・・
「お兄ちゃん、行こうよ」
冒険者たちの様子を見ていた京太だったが、
クオンに手を引き摺られてギルドから出て行った。
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