第6話襲撃者


男は、その場を離れると、とある場所に向かって歩く。


そして、1件のボロ屋の前で立ち止まると、

辺りを見渡した後、急いでボロ屋の中に入った。

男たちの視線が集まる。



「すまねぇ、待たせたな」


「構わねぇよ、それでどうだ?

 間違いないか?」


「ああ、間違いはないと思う。

 近くの者達にも飯を振る舞っていたからな」



「そうか、なら、そいつを襲えば・・・・・」




「ああ、それとよぉ、女も頂こうぜ、

 奴隷商にでも売れば、いい金になるぜ」




「いい女か?」




「ああ、いい女ばかりだったぜ」




それを聞いた男達は、下種な笑いを浮かべながら今後の作戦を話し合う。


ここはスラム。

欲しいものがあれば、力づくで奪おうとする者たちは五万といる。


様子を窺っていた男は、京太が、売春婦に銀貨を渡したところを見ていたのだ。


そこから、コッソリと後を付けていたのだった。




「今回は、いい金になりそうだな」




「それで、作戦はいつも通りだな?」




「ああ、いつも通りでいこう。

 眠りの草を燃やして、メイドの家に流し込む。

 その後は、寝静まった頃に、全てを奪う」



「あの草なら、簡単に手に入るし、確実だな」




作戦を決めると、男達は眠り草を準備し、深夜まで待つ。


そして、皆が寝静まった頃、男達は動き出した。


大量の眠り草を抱えてサリーの家に近づくと、風向きを確認する。



「おい、こっちだ」




風上に、眠り草を山の様に積み上げると、火を点けた。




「ゆっくり仰げよ」




「わかってるって」




男達は、既に作戦は成功したと思い、笑みがこぼれている。




「もうすぐだな」




「ああ、金も女も俺達の物だ」




「男は、どうするんだ」




「んなもん殺すぜ、生かしておく意味が無いからな」




男達は、そんな会話をしながら仰ぐ。


煙は風に乗り、どんどんサリーの家の中に流れ込んだ。




元々ボロボロで、隙間風が当然の様に吹いている家だったので、


煙が充満するのにも時間が掛からなかった。




「おい、そろそろいいんじゃねえか」




「そうだな」




男達は、仰ぐのを止めて、サリーの家にゆっくり近づく。


中の様子を伺う為、壁に耳をあててみるが

物音ひとつ聞こえてこない。




「よし、行くぞ!」




男の号令で、家の中に乗り込んだ。


だが、おかしい。

家の中に入る事は出来たのだが、

彼女達に近づく事が出来ない。




「なんだ!何がどうなっているんだ!」




「わかんねえよ!」




慌てる男達を他所に何処からか声が聞こえて来た。




「僕の仲間に何をする気ですか?」




男達が振り向くとそこには、少年が立っていた。




「金持ちの男!」




見張っていた男が叫ぶと、仲間達が集まってきた。




「ガキじゃねえか」




「なんだよ、驚かせやがって」




男達は、剣を抜く。




「とっとと殺そうぜ」




「そうだな、どのみち男は、いらねぇ。

 金になるのは女だ。」




男たちに迷いはない。

一斉に京太に襲いかかる。


京太はエクスカリバーを取り出し、襲い来る男達を、次々に切り倒した。




「なんだ、こいつは!」




10人居た筈の仲間が、一瞬の内に半数に減らされる。




「おい・・・・・もしかして、俺達は間違ったんじゃねえのか」




「どういう事だよ!」




「手を出しちゃ駄目な奴だったんじゃねえのかって言ってるんだよ!!」




「なんだよ!

 どっちにしろ、もう遅えよ!」




再び襲い掛かる男たち。

しかし、敵う相手ではなかった。


京太は、剣を躱しながら、相手の首を次々と刎ねた。


残ったのは、見張っていた男だけ。




「くそう!なんでだよ!なんでこうなるんだよ!」




男は、悔しそうにしながら剣を振り上げ、襲い掛かる。


その剣を躱し、エクスカリバーで体を二つに分断した。


京太は、男達の死体を全てアイテムボックスに収納した。




「これで良しと・・・」




京太は、家の中に張っていた防御魔法を解くと、皆のもとへ。


寝ている事を確認すると、隣の部屋に行き、眠りについた。


翌朝、目を覚ますと、京太の横には、クオンが寝ていた。




――なんで・・・




京太は、優しくクオンを起こした。




「クオン、朝だよ」




「ん・・・・・」




「もう朝だよ」




「ん・・・お兄ちゃん・・・おはよう・・・」




「クオン、どうして此処で寝ているの?」




「夜、トイレに行ったら、お兄ちゃんがいなかったからです」




「そうか・・・ごめんよ」




京太の返事を聞くと、クオンは頷く。


2人は起き上がり、皆のいる部屋に向かう。


部屋に入ると、既にサリーが食事の準備をしていた。




「サリー、おはよう」




「京太様、お早うございます」




「皆も起きているみたいだね」




「はい、もうすぐ出来ますので、あちらでお待ちください」




京太は、素直に従い、食事が出来上がるのを待つ。

暫く待っていると、食事が運ばれてきた。


「いただきます」


皆で食事を始める。



そして、食事を終えると、京太がこれからの予定を話す。




「市場で旅に必要なものを買おうと思っている。

 それと、サリーとノルンの服もね。

 それで、支度が整い次第、旅に出ようと思う。

 いいかな?」




「はい」




「わかったわ」




サリーとノルンは、必要なものをバックに詰める。

元々、荷物は少なかったから、あっという間に準備を終えた。



そして、皆と市場に向かった。



市場に向かう途中、京太は、ふと思った事を口にする。




「旅をしながら仕事をしないとな・・・」




その言葉を聞き、セリカが答えた。




「冒険者になりませんか?」




「そうね、いい考えだわ」




ソニアも賛成した。




「冒険者か・・・・・」




「冒険者になれば、魔獣をお金に換えやすいし、便利だよ」




「でも、依頼を受けないと駄目なんじゃないの?」




「そんな事は、ありませんよ、

 それに、もし受けるとしても自分で選べますから」




「まぁ、ギルドからの指名もたまにはあるけどね」




2人の話を聞き、京太は冒険者になる事を決めた。




「わかった、ギルドに行って冒険者になるよ」




「じゃぁ、市場の後にギルドに行きましょう」




セリカの言葉に、京太は従うことにする。


買い物を済ませると、皆でギルドに向かった。


ギルドは、街の入り口に近い場所にあった。


ギルドに入って見ると、正面に銀行の受付のような場所が3ヵ所あり、

その隣には待合室がある。


待合室の壁には、大きなボードがあり、そこには依頼が張り出してあった。


京太達は、受付に向かう。


3ヵ所の内、一番左の受付が空いていたので、京太はそこに進む。




「あっ!ちょっと・・・」




ソニアは、止めようとしたが間に合わなかった。




「すいません、あの・・・」




京太が受付の女性に声を掛けると、近くにいた厳つい男が、京太を後ろから捕まえた。




「おい!クソガキ、ここは遊び場所じゃねえんだよ、


 それにここは、俺様みたいなAランク冒険者専用の場所だ、とっとと消えな!」




厳つい男は、京太を放り投げた。




「お兄ちゃん!」




「京太様!」




京太は、身を翻し、壁への衝突を防いだ。




「びっくりした!」




京太が無事な事にクオン達は安堵する。




「よかった・・・・・」




その様子を厳つい男は見ていた。




「ほう・・・やるじゃねえか」




そう言うと厳つい男は、京太に殴り掛かってきた。




――なんで、攻撃してくるの!?




京太は、慌てて躱す。


周囲にいた冒険者達は、京太と厳つい男の対決に盛り上がる。




「いいぞ!小僧、頑張れ!」




「おい、どっちが勝つか賭けようぜ」




「俺は、【コルド】に賭けるぜ」




「俺もだ!」




冒険者達は、賭けを始め、

コルドと呼ばれる厳つい男に殆どの者が賭けた。


その事に不満を持ったクオンは、買って貰った服を脱ぎだす。

そして、それを掛け金にした。




「お兄ちゃんは、絶対負けないもん!」




「おい、嬢ちゃん負けたら裸で帰るんだぞ、本当にいいのか?」




「うん、いいよ。


 でも、お兄ちゃんは、負けない!!」




「ハハハ、まぁ好きにしな、でもこれだけじゃ足りないから仲間のお姉ちゃん達も裸で帰って貰おうか」


にやにやしている男たち。




ソニアとセリカは、その様子に怒りを覚えた。



「あんた達!調子に乗るんじゃないよ!」


その声に、聞き覚えのあった男がいた。




「お前、ソニアだろ、久しぶりじゃねぇか。

 なんだ、この兄ちゃんと組んでいたのか・・・へへへ・・・

 まぁ、それはどうでもいいわ。

 それで、どうするんだよ、

 お前達が賭けに乗らないのなら、この嬢ちゃんが負けたら奴隷だな」


男の言葉を聞き、ソニアが睨みつける。




「賭けに乗るわ。

 勿論、京太に賭ける」




その言葉を聞き、冒険者達は盛り上がった。




「おい、この兄ちゃんが負けたら、仲間の女達が全裸になるらしいぞ!」




「ホントか!!」




「コルド!負けんじゃねえぞ!」




冒険者達は、賭け金をテーブルの上に置き、先程よりも盛り上がった。

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