第4話戦闘
ホルンの屋敷の入り口には、警備兵が陣取っていた。
そこに現れた4人。
「お前達、何処から入ったんだ! もしかして・・・・!!!」
京太以外、ボロボロの服装だったので、地下牢から逃げてきたのかもと思い
警備兵は、武器を構える。
「ダイアン ホルンに用がある、そこを通して下さい」
京太の姿を見て、驚きながらも、見覚えのあった兵士が問いかける。
「貴様が何故?
どうしてここに?」
「お礼に来ました」
そう告げると、警備兵の一人が声を上げる。
「全員、かかれ!」
「遅い!」
京太は、反撃の隙を与えない。
向かってきた敵を一撃で倒す。
一瞬の出来事だった。
応援を呼ぶ暇を与えず、全てを打ち倒すと屋敷へと歩を進める。
扉を開け、中を進んで行くと、メイドに出会った。
――この人は・・・
目が合うと、メイドも覚えていたようで、その場で膝を付いて頭を下げた。
「その節は、申し訳ありません・・・」
メイドは、怯えながらも謝罪を口にした。
京太も、あの時メイドが、挙動不審で動揺していた事を覚えていた。
――命令されたんだろうな・・・
京太は、メイドに話しかける。
「何もしません。
その代わりに答えて下さい、ダイアン ホルンは、何処ですか?」
メイドは、顔を上げて答えた。
「この先の奥から2番目の部屋です」
「ありがとう、それからこの屋敷から今すぐ離れて下さい。
そして、戻って来てはいけません」
そう告げると、京太は、ダイアン ホルンの部屋へと向かった。
通り過ぎていく京太に向けてメイドは、一礼するとその場を離れた。
部屋の前まで来ると、京太は扉を開けた。
「誰だ!」
突然開け放たれた事に驚いたダイアン ホルンは、怒気を強めた。
「貴様は誰だ!何の用だ!」
「覚えていませんか、彼女達と僕を」
ダイアン ホルンは、皆の顔を見た。
その瞬間、思い出したように『はっ!』とした。
「思い出しましたね、貴方が趣味で甚振った者達ですよ」
京太の投げかけた言葉に、
ダイアン ホルンは、表情を変えずに言い放つ。
「貴族が平民を玩具にして何が悪い。
こいつ等は、その辺りの虫と同じではないか」
「虫と同じ・・・だと・・・」
怒りが沸々と湧き上がってきた。
――こいつは、何処まで腐っているんだ・・・
ダイアン ホルンは、壁に立て掛けてあった剣を持つと、
鞘から抜き、京太に剣先を向けた。
「貴様らは、生きて帰れると思うなよ。
この騒ぎを聞きつけて兵士達が集まって来るぞ」
京太は黙っている。
すると、ダイアン ホルンは、何を勘違いしたのか、調子に乗って言い放つ。
「どうした!怖気づいたか、まぁ、今から謝っても許さんがな
そこの女どもは、もう一度、痛い目にあわせてやろう」
そう言うと、嫌らしく笑った。
京太は、表情一つ変えない。
京太の後ろにいたソニアたちも動く気配もない。
ダイアン ホルンは、京太たちが動けないと思ったのか
剣を片手に、近づいてくる。
狙いは、ソニアたち。
京太の横を通り過ぎ、ソニアに手を伸ばした。
次の瞬間、ソニアは、ダイアン ホルンの腕を切り落とした。
「う、うぎゃぁぁぁぁぁ!」
床を転げ、痛みに藻掻く。
腕を切り落とされ、泣き叫んでいるダイアンの元にソニアが近づいた。
「貴様のせいで私の仲間が2人死んだんだ」
「し、知るか、私は悪くない!」
必死に抵抗する言葉を吐いたが、ソニアに反対の腕も切り落とされた。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
両腕を失くしたダイアンの叫び声を聞いて、兵士を連れてダイアンの妻、マーレ ホルンが現れた。
「あ、貴方!!!
は、早く、この者達を捕らえなさい!」
兵士に命令するが、兵士が剣を抜く前に京太が切り倒し、
マーレ ホルンを捕らえた。
「貴方も共犯です」
そう言うと、泣き叫んでいるダイアンの横にマーレを放り投げた。
「きゃぁ!」
放り投げられたマーレは、京太を睨む。
「こんな事をしてタダで済むと思っているのですか!」
「貴方達も、人を玩具にしてタダで済むと思っているのですか?」
「私は、悪くないわ」
「クオンの両親の事を忘れたのですか!」
「誰よそれ!
そんな平民のことなんて一々覚えていないわ、それよりもうすぐ兵士が来るわ。
そうなれば、貴方達はお終いよ」
自信満々に告げるマーレ ホルンに、京太は言う。
「彼らは来ませんよ、今頃、兵舎の下敷きになっていますから」
その言葉にマーレは動揺する。
「なんですって!
そ、そんなの有り得ないわ」
「事実ですよ、それよりもクオンの両親の事を思い出して貰えませんか?」
「しつこいわね、平民の事なんて覚えていないわ」
――こいつも腐っているんだな・・・
諦めて、マーレ ホルンに近づいた瞬間、
部屋の入り口から、首輪をつけた大男が現れ京太に襲い掛かる。
「うがぁぁぁぁぁ!!!」
大男は、持っていた鉄球の付いた棒で、京太に殴り掛かったが、
当たる事は無かった。
大男は、京太とマーレ ホルンの間に立ち、
いつでも攻撃の出来る体勢を維持している。
京太と大男が睨み合っていると、突然声がかかった。
「お父様、お母様、大丈夫ですか?」
そう言いながら、入り口から入って来たのは、
別の大男を連れた少女、レミー ホルンだった。
「この者達は、何者なのですか?」
レミー ホルンの問いに、マーレ ホルンは答えず、助けを求めた。
「レミー、この者達を殺しなさい」
「はい、お母様」
レミー ホルンは、スカートの端を持ち、華麗に一礼すると
2人の大男に命令をした。
「ゼド、ギド、あの男を殺しなさい」
「ウガ!」
「グガ!」
大男達は、京太に向けて突進してきた。
京太もエクスカリバーを構え、大男達に向かう。
挟まれた状態だったが、何時の間にか京太は、大男をすり抜けていた。
京太が振り返ると、大男達の上半身がずれて床に落ちる。
「次は、貴様だ」
京太は、レミー ホルンに剣を向けた。
「こいつ、何なのよ!」
捨て台詞を吐き、逃げようとしたレミー ホルンだったが、京太の方が早かった。
持っていたエクスカリバーでレミー ホルンの首を飛ばした。
首を切り落とされたレミー ホルンの体は、数歩進むと『ドサッ』と倒れた。
「ひぃぃぃ!」
マーレ ホルンは、娘が殺された事実よりも、
その光景に恐怖を感じて後退った。
そして、何かに当たり振り返ると、そこにはソニアが立っていた。
「仲間の仇を取らせてもらう」
ソニアは、マーレ ホルンの心臓に剣を突き刺す。
剣を抜くと、マーレ ホルンは倒れた。
ソニアは、その足でダイアンの元へと向かう。
両腕を失くしたダイアンは、出血の多さでショック死していた。
「致命傷になったようだね」
「そうね・・・」
ソニアは、憑き物が落ちたような表情をしていた。
その後、ソニアとセリカは、京太と共に地下へと戻り、
仲間の死体を京太に預かってもらった。
「何処まで運んだらいいの?」
「近くの森にでも埋めてあげようと思っています」
「わかった、それまで預かっておくね」
「ご迷惑を掛けてすいません」
「気にしなくていいよ、それより、その後はどうするの?」
京太の問いに、ソニアとセリカは、顔を見合わせた。
クオンは、京太の服の裾を掴む。
「お兄ちゃん、一緒にいてもいい?」
「勿論だよ」
京太の返事に、クオンは安堵した。
その様子を見ていた2人も、京太について行きたいと言った。
「私達は、この辺りの地理に詳しいから役に立ちます。
だから、ついて行ってもいいですか?」
「ああ、歓迎するよ」
「ホント! ありがとう!」
ソニアとセリカは喜んだ。
「京太さん、これから宜しくね」
4人は、一旦街を出ると、近くの森に行き、
見晴らしの良い場所にアーノルドとイリーナの墓を建てて弔った。
「安らかに眠ってね・・・」
「助けられなくて、ごめんね・・・」
2人は、墓石に向かい言葉を掛けると、京太達の元に戻った。
その後、4人は再び街に戻り、宿を探すことにした。
宿を探している最中、通りかかった市場で、先に買い物をする事にする。
「先に、服を買おう」
「でも、お金は?」
「ダイアンから貰った報奨金があるし、屋敷からも貰ったから大丈夫だよ」
京太は、全てが終わった後、1人で屋敷を探索し、金銭を没収していた。
「それ、貰ったっていうの?」
「うん、迷惑料だよ」
そう言うと、京太は、衣服を売っている店に入って行く。
「いらっしゃいませ」
「好きなものを選んでよ」
京太のその言葉に、ソニアたちは、目を輝かせで、色々と物色し始めた。
服と靴を購入すると、店を出て武器屋に入った。
武器屋で予備の剣と魔法の杖を購入し、ソニアとセリカに武器を渡す。
「有難う御座います」
「これで、魔法が使えます」
その後は、食材を買う為に市場を散策する事にしたのだが
その途中で、京太は視線を感じた。
思わず振り帰るとそこには、ダイアンの屋敷で出会ったメイドが立っていた。
「あの・・・ごめんなさい・・・私・・・」
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