第3話屋敷での出会い

京太は、屋敷の裏にある倉庫に運ばれていた。


倉庫には、隠し扉があり、その先は地下へと繋がっている。


奥に進むと、牢があり、腐敗臭が充満していた。




「ここは、いつ来てもすげえ匂いだな」




「とっととこいつを運んで戻ろうぜ」


兵士たちがそんな会話をしながら運んでいる時、

京太は、そっと目を開く。


京太の目に映ったのは、鎖で磔にされている者や、両足を切断されている者など

生きているのか分からない状態の者達の者たちの姿。


──酷いな・・・



兵士達は、京太が気が付いているとも知らず、奥の牢に運び込むと、

天井から垂れ下がっていた手枷に繋いだ。




「これでいいだろう、さぁ、戻ろうぜ」




兵士達は、牢の鍵を閉めると、急いで出て行った。


兵士達が出て行った後、京太は、ゆっくりと顔を上げた。




「さてと・・・」




京太は、痺れ薬を飲まされたが、既に効果は切れていた。


切れていたというよりは、神となった京太に、薬などほぼ無意味。


確かに、薬を飲まされた直後は効いていたが、

兵士に運ばれている時には、既に動ける状態だったのだ。


だが、何処に連れて行かれるのかが気になったので、そのまま運ばれていただけ。




京太は、風の魔法を唱える。




「ウインドエッヂ」




放たれた風の刃は、天井から吊り下がっていた鎖を切った。


自由になった京太は、風の魔法で鉄格子も切り落とし、牢から出ると、

他の牢へと向かう。


一番近くの牢の中には、全裸の女性が、磔にされていた。




「大丈夫ですか?」




京太の問い掛けに、女性は、ゆっくりと顔を上げた。


彼女は、両手、両足の指が無い。




「あぅらぅらぅぅぅ」




舌も切られているようで、上手く話す事も出来なかった。




――あいつら・・・・・




京太は、怒りを覚えた。


彼女を鎖から外し、床に寝かせると魔法を唱える。




「リカバリー」




光が彼女を包み込む。


そして、欠損部が、全て修復された。




――よし・・・




再び魔法を使う。




「フル ヒール」




再び、光が彼女を包むと、怪我も癒え、傷跡も消えた。




「え!?」




驚く彼女に問いかけた。




「大丈夫ですか?」




彼女は、喋れる事や傷が無い事に涙を流して喜んだ。




「有難う御座います、有難うございます」




お礼を言う彼女に、京太は近くにあった布を掛けてから、

此処に連れて来られた経緯を問う。




「あの、どうしてここに連れて来られたのですか?」




顔を上げた彼女は、ゆっくりと話し始めた。




「私はソニア、4人グループの冒険者でした。

 ある時、私たちは、ホルン子爵の依頼を受ける事になりました。

 依頼内容は、近隣の魔獣狩りという簡単な依頼でしたので

 無事に任務を完了しました。


 そして、この屋敷に、依頼完了の報告に来たのですが、

 その時に食事を振る舞われまして・・・


 断る訳もいかず、ご馳走になる事にしたのですが、

 食事の中に睡眠薬が入っていました。


 そして、気が付くと此処に運ばれていて・・・・・後は、その・・・・・」




ソニアは、そこまで話をすると、下を向いた。




――話難いのだろう・・・




「すいません・・・・その・・・この牢に連れて来られた後は、

 あなたの見た通りです。         

 あの男と兵士達は、私を弄もてあそびました」




「あの男とは、ダイアン ホルンですね」




「はい・・・あいつは、絶対に許しません・・・・・」




言い終えたソニアは、鬼のような形相をしている。

仇を討ちたいのだろうと思ったが、

その前にもう一つ聞いておきたいことがあった。




「他の仲間は、どうしましたか?」




その質問に、ソニアは、『はっ!』として牢から飛び出した。


すると、離れた牢からソニアの声が聞えて来た。




「セリカ!セリカ!」




セリカと呼ばれた少女は、両足が無くなっていた。


傷口は腐り、周囲には、酷い匂いが充満していた。




「セリカ!返事をしてよ!」




セリカは、気が付いたかのようにゆっくりと声を出した。




「ソニア・・・・・?」




ソニアは、セリカが生きている事に喜んだ。




「待ってて、今、助けるから」




ソニアは、京太の元へと走った。




「お願いです。

 セリカを助けてください!」


慌てるソニアを宥める。


「わかったから、落ち着いて」




「うん・・・・・そうね、ごめんなさい」




京太は、牢を破り、セリカに近づくと先程と同じ手順で魔法を行使する。


すると、セリカの欠損部も修復され、体の傷も完治した。




「ホント・・・・・なの?」




「驚いたでしょ、わたしもビックリしたわ」




「この人は、どなた?」




「えとね、京太だって、なんか凄い人よ」




「あの・・・京太さん、助けて頂いて有難う御座います」




セリカは、京太にお礼を言うと、他の人も助けて欲しいと頼む。




「誠に勝手なお願いですが、生きている者がいましたら助けて頂けませんか?」




「勿論、そのつもりだよ」




その返事を聞き、2人は京太と共に牢を出た。


牢を出た京太は、魔法を唱える。




「ウインドエッヂ」




通路を鋭利な風が舞い、全ての鉄格子を切り落とした。




「凄い・・・」




「これで、どこでも入れるよ」




2人は、生きている者を探す。


だが、生存者は、1人だけだった。


しかし、その少女は、体中に痣があり、謎の斑点が出ていた。




――病気?




衰弱している。

呼吸も、弱い。


京太は、少女のもとで膝をつき、笑顔を見せる。



「もう、大丈夫だからね」




京太の問いに、少女は『コクっ』と頷いた。


【リカバリー】をかけて状態を戻した後、【フル ヒール】で傷を治した。




「話せるかい?」




少女は頷く。




「名前は言える?」




「クオン」




「クオンは、どうしてここに居るの?」




「お父さんとお母さんと旅をしていたの・・・そしたら・・・」




クオンは、俯いた。


目には涙が溜まっていた。




その様子に京太は察しがついた。


両親と旅をしている時に、ダイアン ホルンと知り合い、

騙されたのだろうと・・・。


クオンは、溜まっていた涙を拭うと話を続けた。




「お父さんとお母さんは、死んじゃったの・・・・・おじさんと叔母さんの言う通りに飲み物を飲んだら動かなくなったの。

その時に、おじさんが笑って言ったの、死んだぞって」




京太は、えも言えぬ怒りを覚えた。




――子供の前で殺したのか・・・・・許さない!




クオンを連れて牢を出る。


ソニアとセリカは、項垂れていた。




「・・・・・・」




「アーノルドもイリーナも・・・・死んでたよ・・・・」




「そうか・・・」




「うん・・・」




「これから、どうするの?」




「仇を討ちます」




「そうだね、僕も許せないから手伝うよ」




「「ありがとう」」




「ところで、2人は、何が出来るの?」




「私は、剣士です」




ソニアが告げた。




「私は、後衛で魔法が使えます」




セリカが告げると、隣でクオンが下を向いた。




「クオンは、何も出来ません」




「わかった、セリカは、クオンを守ってくれる?」




「わかりました」




「じゃぁ、此処から出ようか」




京太は、そう言うと3人と共に出口に向かった。


地下から、倉庫の中へと出るが、そこに見張りはいなかった。


好都合と思い、倉庫の中を調べると、木箱から、見知らぬ薬品や剣が見つかる。




――貰っておこう・・・




剣をソニアに渡し、薬をアイテムボックスに入れて鑑定をした。


薬は、毒薬と痺れ薬、回復薬。


京太は、木箱毎、薬品と剣をアイテムボックスに収納してまわる。


倉庫の荷物を、すべてアイテムボックスに収納し終えると、外へ出た。

外に出てからは、一番近くにあった建物へと向かって歩いた。


どうやらその建物は兵舎だったらしく、京太たちは、兵士に発見される。


「何故、貴様が!」




京太は、エクスカリバーをアイテムボックスから取り出すと、

あっという間に間合いを詰め、兵を切り倒した。




「速い!」




その素早さに、ソニアとセリカは、驚いていた。


兵を倒した後、兵舎に向かって、魔法を唱える京太。




「ダーク プレス」




兵舎の上空に、複数の黒い球体が現れる。


次の瞬間、上空に浮かんでいた黒い球体は、凄い音を立てながら

兵舎を圧し潰しにかかる。




「え!?」




ソニア、セリカ、クオンの3人は、その様を見ていた。




「あれって、何なの!!」




驚いている間に、兵舎は完全に潰れた。




「行こうか」




何事も無かったかのような表情で、京太は歩き出した。




「ちょっ、ちょっと待ってよ!」




3人は、慌てて付いて行った。

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