第19話 絶望
魔王メニエスは笑みを浮かべる。それはもう勝ちを確信した顔だった。魔王の中で唯一勇者を倒し、残るは怯えている人間の姿をした子犬一匹。彼女は言った。
「さぁ、踊りなさい」
そして、空中に現れる炎の槍。フェイは言った。
「なんだ…あれ?」
この世界に産まれて約200年経つフェイが一度も見たことが無いもの。炎の魔法が似ていると言えば似ているがあんな魔法は存在しない。
そうこう考えてると炎の槍がフェイの方へ飛ぶ。深く考える時間はない、震える足を押さえフェイは動き出す。
「暴風‼」
フェイが持っている最高の火力であり最高の壁。それは、炎の槍を包み込んだ。
ドカンッ‼と中から爆発音が聞こえ同時に暴風の壁が無くなった。
(暴風で炎の槍を消せる、魔力の消費は重たいがロイを拾って逃げるぐらいの時間は…)
そうフェイは思い動きだそうとする。しかし、
「あら、たかが1発防いだだけで逃亡しようなんて戦いをなめてるんですか?」
と魔王は笑う。
「もっと私を楽しませてくださいよ」
そう言うと彼女の周りに炎の槍が再び現れた。その数、まさに10本。
「連発出来るのかよ」
フェイは笑うしかなかった。暴風を掻き消す威力を10本、フェイには処理しきれない。
(もう俺だけでも逃げるか?)
フェイだけなら何とか逃げ切れるだろう。魔王城の壁を破壊し逃走する簡単な作戦だ。ロイだって蘇生出来る確信なんてない。なら逃げても…
「いや、駄目だな」
魔王退治に行くと自分で言った。ここでロイを見捨てて自分だけ逃げるなんて仲間と言えないだろう。
パシッ‼と自分の頬を叩き喝を入れる。
「捌き切ってやるよ」
「そうですか。では、頑張ってください」
そして、炎の槍がフェイの方へどんどん飛んでくる。
それを1本、2本…順々に処理していく。
「ッゥ…‼」
体中が痛い。魔法を連発しているからだろう。心臓が飛び出しそうな程、鼓動が上がっているのが分かる。
(いつ…終わるんだ…)
とフェイの意識が朦朧としている時
「同じ攻撃ばっかり…面白くないわね」
「ッ…‼」
フェイの隣からあの魔王の声がした。そして、魔王の手には赤い剣を持っている。
(あの槍に意識を取られ過ぎた‼)
フェイの油断と言うべきなのだろう。フェイは急いで魔王に向けて魔法を撃とうとするが
「ガフッ‼」
間に合わずフェイの胸に赤い剣が刺さった。
「
その声と共にフェイ以外のすべてが無くなる。フェイの暴風や魔王の炎の槍、フェイを刺した魔王と赤い剣、その全てが。
「
倒れるフェイを抱き留めながらフェイを回復させ
「
とフェイが失った。魔力を回復させる。
フェイの意識が完全に落ちる前に回復したため薄っすらとした意識でその名前を呼ぶ。
「…ロイ」
少し前に焼かれた少年、ロイの姿がそこにあった。対するロイは
「ただいま。そして、お疲れ」
「…あとは任せた」
そこで完全にフェイの意識は落ちる。
「おう、任せろ」
フェイには聞こえてないはずだがフェイは笑った木がした。そして、
「
謎の空間にフェイを寝かしロイは魔王の方へ向く。
「初めましてだな。メニエス…いや、歴代最弱と言われる初代魔王の娘、メニエス・アンダーソンと呼んだ方が良かったか?」
ロイは不敵な笑みを浮かべながら魔王を煽る。
「ロイ…ッ‼」
その煽りに怒り、炎の槍を出す。
「今の言葉を…今の言葉を取り消せ‼」
そして、ロイに向かい飛ばす。
「はぁ、お前が持ってたのか」
とため息と共に素手で炎の槍を掻き消す。
「おい、盗人。さっさと、その魔法返してもらうぞ」
遂に勇者と魔王の戦いが始まったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます