ポイズンサンタクロース

轟 和子

ポイズンサンタクロース

湊は垢の溜まった爪で取調室の机をコンコン叩いていた。無機質で乾いた音が狭い室内に響いて落ちる。

あの時は想像もしていなかったようなことが起こった。そう遠くない過去、あの時はこんな年末が来るなんて。

それでも僕は、あの人に出会ったばかりの時よりもずっと、落ち着いていた。だって、僕は正しいことをしたんだから。何も間違ってない。この手で正義を掴み取っただけなんだから。あの人もそう言ってくれた。

コンココンココン、僕の爪の音に、ドアをノックされた音が重なる。僕の返事を待たずして、扉は乱暴に開いた。

僕は待ちきれずに、一つだけ気になっていたことを聞いた。

「あの、スナイプさんは!」

「黙って座れ!」

僕の体は刑事さんの補佐? 記録? よく分からないけど私の横に座っていた男によって机に押しつけられた。推定無罪の原則なんてあったもんじゃない。

僕が力を抜くと拘束は解かれて、体を起こすといつの間にか僕の向かい側の椅子に腰を下ろしていた刑事さんと目が合った。刑事さんは冷たい声で言った。

「あの男の被害者を、また増やしてしまった。」


痛い。始まったばかりの頃はそう思っていた。でも、痛い、痛い、痛いという度に僕に加わる力は強くなっていくし、そもそも、痛いと言ってもどうにもならないことは自分が一番理解していた。痛い、痛い、でも、口には出さないで唇を結んで耐える。そうするとそんな僕の態度が面白くないのか、それとも何か気に食わないことがあるのか、拳に、平手に、込められる力は更に強くなる。僕に刻まれる鈍い傷は、大きく、黒く染まる。それでも僕は何も言わない。だって何を言っても意味が無いから。そんなことを続けていたら、気づくと体も心を痛まなくなった。


隣の席の遥乃さんに、「どうして木島くんは笑わないの?」と言われたのは、ついこの前のことだ。

笑わない、か。苦しそうな顔を見せないことを考えていたら、表情筋そのものが硬く凍結してしまったのかもしれない。僕は半解凍の笑顔で「そんなことは無いよ」と答えた。

高校っていうのは面白くない。でも家よりは良い。誰かに殴られることも蹴られることもない。口を開くだけなら多分怒られない。人格を真っ向から否定されるようなことは、少なくとも今の僕には無い。

そうは言っても、やれあの二人は修学旅行で距離が縮まって付き合い始めただの、あのクラスは合唱祭のいざこざで仲が悪くなっただの、去年までいたあの先生は生徒と一線を越えていなくなっただの、とにかくうるさい。やかましい。鼓膜の更に奥の方がツンと鳴ったかと思えばガツンと突かれて脳が一気に重くなる。でも、やっぱり家よりは良い。そうでもなければわざわざ自分で学費を稼いで通ったりしない。

遥乃さんは「いやいやいや怖いって。笑えない理由があるなら教えてよ。彼女と別れた? 勉強、は、私より出来てるから違うか。じゃあ親? とにかく! ひとりで抱え込むのは良くないよ!」と無駄に心配してくれた。

親、という言葉に反応して頬がひくついてしまったのを、彼女に気づかれただろうか。僕は不自然な笑顔で誤魔化した。


部費なんかを払う余裕は無いので部活には入っていない。帰りのホームルーム、やる気のない委員長のへなへなとしおれた「気をつけ、礼」の号令で学校が終わる。クラスは誰も気をつけず礼もせず、部活だの塾だの、いちごフラペチーノだの桃フラペチーノだのと騒いでいる。

クラスの中で淀みきって停滞していた空気がだんだんと明るくなるのに逆行するように、僕は今日はどこでやり過ごそうかと考えている。ファミレスは少し高いから入れない。塾なんてもちろん通っていない。結局コンビニで買った二リットルの水を抱えて公園のブランコに座って揺られる。

遅く帰ればそれを理由に、早くなれば邪魔だと言って、どちらにせよ僕は壊される。僕は時間を見計らって、ここかなと思うところで帰路に着く。今日は親の虫の居所が悪かったらしい。関係無かった。


秋の終わり、一年を通して目まぐるしく変わっていく窓の額縁の中の色は随分と寂しくなった。風に舞って、ぶつかって、カサカサと音を立てる葉の乾いた音。皆が十二月の考査に向けて焦り始める。教師も、もうすぐ師走と言うだけあって小走りでかけまわっている。

朝のホームルーム、担任から名刺サイズの紙が配られる。『ひとりで抱え込まないで』そんな言葉を喋らされているピンクのウサギの目は、笑っていないように見えた。

遥乃さんは栞を忘れて来たらしく、読みかけの本の頁の間にそれを挟んでいた。左目だけこちらに向けているウサギ。痛い! とか言ってるのかな。なんて考えてちょっと笑えた。


親の「しつけ」がちょっと痛くなってきたのは、中学二年生の頃だった。

思うように成績が伸びない僕、夜遅くまでどこで何をしているのかも分からず、いつもニコニコ笑うだけで何もしない父。原因が何かは分からない。いや、分かっていたのかもしれないけど、当時の僕はそれが自分だと思いたくなかった。だから分からないけれど、確実におかしくなっていく母がそこにいた。母の声は少しずつ重くなり、顔は暗くなっていった。怖い、怖い、怖い、と思った。でもその一方で、仕方ないのかもしれない、なんて思いもあった。

僕の勉強や、生活そのものに対する口出しは格段に増えた。 母の重い重い期待とかいう石で勉強漬けにされて運動とも交流とも縁がなかった僕は、体力的にも精神的にも母に抗うことが出来なかった。

父は酒の量が増えた。母は言葉に仕込んでおく毒の量が増えた。僕は勉強量を増やされた。終わらなければ、出来なければ、母は容赦なく毒を浴びせてきた。

家の中に充満する毒の臭いに耐えられなくなったのか、もとからだったのか分からないけれど、父が僕と同じぐらいの女の子を連れて歩くのを見た。友達でもない同級生に「お前も将来は家業を継いでパパ活するんだろ? なぁ?」と言われた時は嗚咽を噛み殺して目の前のそいつの腹を殴った。僕のことだから強いパンチなど食らわせられず、逆に強い力で押さえつけられて親が塗った黒に上書きする形で傷がつけられ血が舞った。

母が担任に呼ばれて、その日の夜は少し毒と痣の量が多くて、今度は我慢できずに泣いてしまった。でも、その涙もすぐに引いてしまうほど、母の声が怖かった。


やっと前のが消えてきたのにまた痣ができてしまった右頬はマスクで隠しきれず、登校中にすれ違ったヤンキーの視線を浴びた。冷淡な、でも少し驚いたような目が僕を刺す。さすがに何も言って来なかったけれど、何を思われていたのか。

いつもよりちょっとだけ早く着いたので勉強でもしようと思って参考書を出す。ちょうどそのタイミングで教室のドアがカラカラと丁寧な音を立てて開き、遥乃さんが入ってきた。

「おはよ! えぇ、木島くんまた階段から落ちたの? てかその言い訳流石に通用しないよ。原因あるなら解決しようと試みな? すっごい痛そう。あ、そういえばさぁ、もう十二月だよねぇ! 木島くんは、クリスマスプレゼント、何頼んだの? それともまだ伝えてない?」

そういえば前回の時はそういうことにしておいたんだった。僕はそのことに触れないように受け流す方法を考えた。クリスマスプレゼントか。最後に貰ったのはいつだったか、覚えていない。

「んー……」

「あれ? もしかしてまだサンタさん信じてた?」

「いや、そういうことでは無いんだけど。」

遥乃さんは不思議そうに僕を見ている。

「いやでもまぁ、サンタさんは、いるからね。ちゃんと。で、えーと、親には頼めない何かが欲しいの? 愛とか?」

遥乃さんには悪気がないのだろう。にこやかに僕に笑顔を向ける。その眩しさが少ししんどい。

「親には頼めない何かと言うより、なんだろう、でもそうだな、うん。自由とか平和とか、あったらいいな、とは、たまに考える。」

「随分壮大なお願いだねぇ。サンタも困惑しちゃうよ。」

「うん、そうだね。」

口に出して思った。今はもうそんなに思わないけれど、少し前までは、今の生活を乗り越えればきっと自由とか平和みたいなものが僕を受け入れてくれるんだと本気で信じていた。手当たり次第に大人に相談して、考えてみるねと言われて、何も考えてくれなかった。それどころか、相談したという事実だけが母に伝わって多めに殴られた。何か違う世界線で、違う両親の元に生まれていたら、僕の人生って違ったんだろうか。僕は参考書に目線を戻した。


母は友達と旅行に行くとにこにこしながら言い、父はそもそも帰ってこなくなりつつあるので、今日は頭を使わずに家に帰れる。

鍵を回してドアを引く。開かない。母が鍵をかけずに出たのか。もう一度差し込んで回す。


ドアを開けると、さっきのヤンキーがいた。


え何で? え? あ? そんなことある? しかも何だ? さっきは気づかなかったけれど、よく見ると学ランの所々に、漢字が書かれた布が縫い付けられている。全体的に訳が分からない。朝と違うところといえば、学ランの上に白い上着を羽織っているところと、サンタが被る、あの三角帽子を被っているところくらいか。色は黒だけど。やっぱり全体的に意味が分からない。だがこれだけは分かった。ヤバい人だ。

「なんですか?」

「なんですかって、え? 驚かないのか?」

不法侵入男は目を見開いて僕を見ている。

「いや、これでもかなり驚いてるんですけど。」

と言いつつも落ち着いた僕の返しに納得がいかなかったのか、彼は口を尖らせて、

「去年なんかはもうそりゃあ最初は派手に驚かれたもんだがなぁ」

と言う。去年、とはどういうことだろうか。

「あの、さっき、というか、今朝? 学校の近くで会いましたよね。」

と僕が尋ねると、彼は頷いた。

「え、あーそうそう。覚えててくれたのね。そーなんだよ。というか、あの時に初めてお前をこの目で見て、間違いないと思ったんだよ。」

「間違いないっていうのは?」

少し間が空いた後、考えるような素振りを見せてから、彼は真剣な眼差しで答えた。

「その痣。親なんだろ。」

「だからなんだって言うんですか」

「親のこと、どう思ってる。」

どうしてこの痣が親によるものだと分かったのだろうか。そもそもこいつは何者なのだろうか。あと、こいつのこと、通報しなくていいのか。様々な思いが錯綜するが、危害を加えてくることはないと判断した僕は話を続けることにした。そもそも、危害を加えてきたところで僕にとってはどうでもいいのだけれど。

「別にどうも思ってませんよ」

すると彼は驚いたように言った。

「どうも思ってない? んなことがあるのか? だって、たっくさん痛めつけられたろう? 辛かったろう? しんどかったろう?」

「もうそんな感情忘れましたよ。」

僕が言うと、彼は大きなため息をついた。

「お前さぁ、おかしいと思わないのか?そんな理不尽なことが、本当に許されていいのか?」

そんなの、どうしろっていうんだ。解決なんてできないことはずっと前に悟った。今もまだ消えていない全身の傷がそれを物語っている。赤黒く染った肌。青白くなった顔。この前久しぶりに姿見の前に立って、人間でない何かを見たような気がしたんだ。

体ばかりでは無い。母に仕込まれた毒は心をも蝕んで、僕の中のなにか大事なものが、ドロドロと、ゆっくりと爛れ落ちる音がした。だが、それがなんだ、許されていい? 許されていいと思ったことは無い。でも、親を許さないとした時に、僕に何ができるのかなんて分からなかった。

「許されていいなんて思ってない! でも、許さないなんていうことは出来ないんだ。」

彼は納得したように僕の顔を覗き込んで、それから微笑んだ。

「出来ないことは無い。俺と一緒なら、その『許さない』が出来るんだよ。どうだ、やってみないか?」

彼が笑っているところを初めて見た。

僕は頷いた。


「うわぁ、広ぉい」

「いや、初めて彼氏の家に来た彼女かよ。」

彼は楽しそうに笑う。

「彼女も彼氏も出来たことないから分からないですけどね」

彼は意外だというふうに目を大きくした。目を見開いて人を見るのが彼の癖なのかもしれない。

「へぇーそーなんだ。お前、顔は割といいのにな。化粧でその痣消せばそこそこモテるぜ」

「別にモテたいとかないんで。そもそも、なんだろう、欲ってものが、あんまりないです。」

僕が言うと、彼は少し悲しそうな目をして僕を見つめていた。

「あのなぁ、お前をそういう感情にさせてるのも、親なんだよ。さっき会ったばっかりだけど、俺には分かる。お前、感情ってものが薄いんだ。やりたいもやりたくないも、全部周りの環境に強制されて選ばせてもらえなかった、そういう、なんだろうな、オーラ? を感じるんだよ。俺もそうだったからな。でもな、自分の感情、考え、これをしたい! これはしたくない、この人と関わりたい! この人とは関わりたくない、これが好きだ! これが嫌いだ、っていうのは、自分以外、絶対決めちゃいけないんだよ。それに、自分で決めることが出来なくちゃいけないんだ。」

言われてみればその通りだった。

「これがあなたにとって一番良い選択なのよ。分かった?」という母の口癖があったのを思い出した。一番良い選択。それって、誰かに決めてもらうものだっただろうか。

それまで当たり前すぎて気づかなかったけれど、そんなことは無いのかもしれない。

「仮にそうだとしても、どうにもならないですよ。」

「たぁくもう、話のわからん奴だな。だから、俺が、いや、俺とお前が、二人でやるんだ。ということで、ようこそ! ポイズンサンタのアジトへ!」

彼は両手を大きく広げて、部屋の中を僕に示した。

「ポイズンサンタ?」

「そーだ。ポイズンサンタ。」

「あなたが?」

「そ。俺がポイズンサンタ。」

あ、やっぱりヤバい人だ。帰ろう。僕が玄関に向かって足を向けると、ポイズンサンタ、さんは僕の前を塞いで慌てたように

「おーおーおーちょっと待て待て待て、話聞いてたか?」

と言った。話を聞いた上でヤバいっていう話なんだが。

「いや、だってヤバい人じゃないですか。」

「え? 気づかなかったのか? そもそも、こんな格好だぞ?不法侵入者だぞ? ここまで着いてきたんだから受け入れたもんだと思ってたぜ」

僕は改めて彼の全身と、部屋の中を見渡した。彼の上着には、聖誕節、と書かれていた。聖誕節は、確か中国語でクリスマスのことだ。サンタの帽子と関係があるのだろうか。

部屋の中には、大きな黒いソリにクリスマスツリー、雪だるまなんかが配置されていた。しかし、世間一般で用意するようなカラフルな飾りとは異なり、ここにあるものは全体的に暗い色味をして、重苦しい空気を帯びている感じだ。

ふと壁の方に目をやった僕は、何か、人の顔が書かれたポスターが貼られているのを見つけた。写真の人物は、雰囲気は少し今よりも若めだが、ポイズンサンタさんで間違いないだろう。その上には逃犯令と書かれていた。知らない単語だったのでスマートフォンで調べる。逃犯令は、中国語で、指名手配のこと。ほぉん。なるほどなぁ。帰ろう。

僕は玄関の扉に手をかけた。

「おいおいおいちょいちょいちょい。ほんとに帰るのか?俺は、救ってやろうって言ってんだぜ?」

「救う? あんたみたいなヤバい人に?」

僕は部屋の奥のポスターを指さす。

「あー、これか。いや、一昨年とかだったかな。中国で活動してたら、あそこの警察ってすごいのな。すぐに嗅ぎつけやがって。危うく捕まるかと思ったぜ。せっかくだから記念に持って帰ってきたって訳よ。」

「不法侵入ですか?」

「笑わせんな。誰が不法侵入で指名手配されるんだ。罪状でいうなら、殺人だな。殺人。でも、悪いことじゃないんだぜ。だって、悪い奴を殺るんだからなぁ。うん。帰るのを決める前に、一回、話を聞いていかないか? 安心しろ。俺は意味もなく罪を犯すようなことはしない。ここで急にお前を刺し殺すようなことをしてみろ、俺はただの悪者になっちまう。」

何故か分からないけど、彼の話には妙な説得力があった。

「手短に済ませてください。」

「おう。じゃあ前置きは無しに。お前の親を、俺とお前で、殺さないか?」

こいつ、あっさり、とんでもないこと言ったな。

「え、あの、本気ですか? それともなんかの冗談?」

「ここで冗談言うやつがあるかよ。本気と書いてマジだ!」

彼はガハハと笑った。

「ポイズンサンタの仕事は、親によって過剰に縛られてる子供を解き放つことだ。俺は基本的にこの東アジアを担当しているが、まぁアジトが近いのもあって、基本的にはこの県の中でって感じだ。時々、ネットなんかで助けを求めているのがいれば行くこともあるけどな。それで今年は、お前を選んだってわけだ。」

「大体のことは分かりました。でも、それって人殺しをするってことですよね?」

「まぁ、そういう言い方もできる。でも、考えてみろ。悪い奴を殺す。その事は古くから行われている。大化の改新と、俺がやろうとしてること、一体何が違うんだ?」

僕は答えられなかった。悪い奴、生きていても害を及ぼす奴なら、死んでもいい。殺してもいい。しかも被害者が自分であれば尚更に。これを否定できるだけの材料を、果たして僕は持ち合わせていただろうか。頬の痣を触りながら考えたが、やはりなんの言葉も出てこない。

「まぁ、話は簡単。お前がやるって言うならやる。やらないって言うならこの場からすぐに出ていってもらって構わないし、俺はお前の前に姿を現さない。」

僕の頭の中に、様々な記憶、いや、植え付けられた、刻み込まれた、記録と言うべきだろうか。次々にそれらが駆け巡っていった。


「いい? 食事っていうのは、十分に働いた人が摂るものなの。ねぇ、見て。この模試の結果。ねぇ、見える? 見えるよね? これを見て、頑張ったって言える? 言えないよね?」

僕は土曜日が嫌いになった。給食が無いから。

「でも」

「でもじゃねぇんだよ!!!!」

母が叩きつけたグラスの破片が足に刺さって血がこぼれた。

「出来ないのは何もやってないってことなの。頑張っても出来ないから仕方ないじゃないの。出来ないのはお前が! 努力を積んでないからなんだよ!」

勉強机の前の壁に貼られた新聞記事は、「一万時間ルール」の特集だった。どこの誰かも分からない大学教授が話したことをまとめたそれは、「一万時間の練習をすれば、人は何でも物事を極めることが出来る」というものだった。

向き不向きは関係ない。やる。やる。ただ、やる。それだけだ。そんなことを本気で言っている記事も、それを信じている母も憎かった。

「終わったら出てきな。」

乱暴に扉を閉める母。脚も心臓も痛かった。目の前に積まれた参考書の山。その三号目あたりで遭難してしまった僕は、食料を、そして愛を欲していた。血が染めあげたカーペットを見ていると、涙が止まらなくなっていた。


「やります。」

気づいたら、口からこぼれていた。


まずは自己紹介だな! と、ポイズンサンタさんはソリに腰をかけて話し始めた。

「名前は鴫原秋。鴫原さんとかポイズンサンタさんとかでもいいが、個人的に『スナイプ』っていうあだ名が気に入ってる。英語で鴫っていう意味だ。」

「あ、すんなり本名とか教えてくれる感じなんですね。」

「まぁ、別に今更通報とかしないだろ?それにお前ももう共犯者になることが確定してる。」

共犯者、か。不謹慎かもしれないが、今までの僕は単調な、それでいてボロボロな毎日の繰り返しだった。ちょっとだけ、楽しい。

「自己紹介って言っても、名前以外に知っといて欲しいことなんて特に無かったなぁ。なんか、質疑応答コーナー。なんかある?」

急にバライティー番組の司会みたいなテンションで話し出したので、僕はなんだか面白くなってきてしまった。

「えーと、じゃあ、はい!」

「はいじゃあそちらのイケメンの人! 何ですか?」

「スナイプさんは何歳なんですか!」

「いやだぁお年頃のジェントルマンに年齢を聞くなんて興ざめだわぁ、えーとね、今年で二十六? かな。」

「二十六なのに学ラン着てんすか」

「まだ二十五だ。んーまぁそうだな。正確には学ランを改造したやつ。コスチュームとでも呼んでくれ。なかなか気に入ってるんだぜ?」

「ちょっとイタイと思うんですけど」

「うるせぇ。以上か? 次、お前の番だ」

強制的に切り上げられたのが少し納得いかなかったが、僕も一通り、自分のことを喋ることにした。

「木島湊です。高校三年生。好きな食べ物はリンゴです。」

「好きな食べ物か! 自己紹介でそれ持ってくるの可愛いな!あ、ちなみに俺は圧倒的に砂肝だ。」

「自己紹介に可愛いとかあるんですか? まぁ、そっか、あるのか。スナイプさん、なにか質問は?」

「そうだな、んー、じゃあ、湊はなぜ生きている?」

「重いなぁ。そーですねぇ。」

僕は目を瞑って、ゆっくりと考えてみた。確かに、生まれてきたことは自分で選んだとこじゃない。そして、良しとされることは無いが死ぬことは自ら選択出来る。それなのに、生きているのはなぜなのだろうか。死んだら、取り返しがつかなくなるから。

でも、どうして、取り返しがつかなくなることが怖いのだろうか。今より悪いものが待っている確証なんて無い。それどころか、僕には今より悪い未来が想像出来ないし、この生活が当たり前になってしまった今、良い未来も容易に想像出来ない。

そうか、変化が、怖いんだ。僕は自分がつくづく悲しくなった。何をしているのだろう。何で生きているのだろう。何のために生きているのだろう。

そのとき、スナイプさんの声が響いた。

「それを、探しに行くんだ。それだけだと思え。」

この人の言葉はどうしてこんなに強いのだろう。今日会ったばかりなのにな。


それから数日。僕は再びアジトに呼ばれた。「いいかよく聞け? 一回しか言わないぞ。プランはこうだ。特注のポイズンフルーツを、なんかこう、上手いことターゲットに食わせる。以上。」

スナイプさんが意気揚々と説明を始めたとおもったらこうだ。

「雑っ」

「余計なことを考えると気が重くなるだろ?お前はこれだけ知ってればいい。」

「本当に上手くいくんすか」

「俺が十八か十九の時から毎年やってる。失敗したことは無い。」

「日本では指名手配されてないんですか?」

「不思議だよなぁ。でも日本のサツなんて雑魚だからさ」

「あんまそういうこと言わない方がいいっすよ」

スナイプさんは本当に謎の多い人だが、出会ってまだ1週間も経ってない。ここから少しずつ、この人の正体が分かっていくのだろう。

「あと、あの、僕、もうすぐテストがあるんだけど、プランの実行っていつぐらいになりそうですか?」

「いつぐらい? んなもん決まってるだろ。十二月二十四日の夜だ。」

そんなの当たり前じゃないかとスナイプさんは笑っている。今初めて聞いたんだが。でも言われてみれば、当然のような気もした。サンタの格好してるし。サンタって言えるのかな。これ。

「いいか、これは、俺がお前に自由をあげる、クリスマスプレゼントなんだ。お前はいい子にしてるだけでいいんだよ」

「それでいうと僕はクリスマスイヴに殺人犯になるんですよね?いい子じゃないですよ」

「だぁかぁらぁ、悪い奴を成敗するんだ。この世の悪を倒す。それは善の行為じゃないか。」

本当にそうなのだろうか。ただ、この問題を深く考えるのは、いけないことのような気がした。


遥乃さんが横で頭を抱えている。

「え、やばい。木島くんどーしよう。二十九点はセーフ?」

「アウトだよ」

「だよなー! アウトだよなー! いや、あのね? ちゃんと勉強しようとしたんだ! したんだけどさ、なんでか分からないんだけど、この時期に限って推しが無観客ライブをやるとかいってさぁ!! 配信観ちゃったよねーもーほんとにやらかし。しかもそんな時期に限って兄が部屋入ってきてリンゴ買ってこいとか言うしさぁ。あ、そんなこたぁどーでもいいんですよ。とにかく、運が悪かったなぁ。実力はもっとある! えホントだってば!」

五十八点という良くも悪くもない点数を受け取った僕は適当に相槌をうった。

「もうすぐクリスマスライブもあるし、推しってどうしてこんなにも私の時間とお金を吸っていくのかねぇ。吸血鬼かよ。」

もうすぐクリスマス。決戦の時だ。

スナイプさんからは、あの後少しだけ追加の説明を受けた。

「ポイズンフルーツを使ってホールケーキを作る。これは二人でやるんだ。で、それをお前が親に持っていく。それで適当に、プレゼントだよ! とか言う。親が食べる。バタン。どうだ、分かったか?」

相変わらず説明は雑だったけど、プランが現実味を帯びてきた。本当にやっていいのか、やっぱり不安だった。でも僕がそれを口にする度に、スナイプさんは「だから、相手は悪い奴だって言ってんだろ。蘇我入鹿と同じだ。」なんて言って一蹴した。

「ねぇ、木島くん? 聞いてる?」

遥乃さんが頬を膨らませている。

「ごめん。何?」

「だから、クリスマスプレゼント。結局何頼んだの?」

「解放を頼んだよ」

「変なの。」

遥乃さんは立ち上がって先生のところに行き、「いや、あの、これは△ぐらいくれてもいい答えだと思うんですけど?」なんて言ってゴネていた。


クリスマスイヴまで一週間を切った。母は最近、物理的な暴力よりも言葉の毒での攻撃に徹するようになった。例のテストが見つかった時は特に酷かった。

「ふーん、そっかそっか。それで、これを見てお前はどうしてそんなに平然としていられるの? だって、え?私の感覚がおかしいのかな? 違うよね? 私がこんなにも手をかけて育ててあげてるのに、どうして人並みの点数しか取れない訳? 私のことナメてんの?」

この人には本当に、自分がおかしいのかもしれない、という思いが微塵もない。それとも、やっぱり僕がおかしいのだろうか。母の思い通りになれない僕の方が、酷いのだろうか。

確かに、今の生活が嫌だ。母が、嫌だ。母ばかりでは無い。父のことだって嫌だ。でも、それって、殺すまでのことなんだろうか。僕の身勝手な気持ちで、この人たちの生きる権利を奪ってしまってもいいのだろうか。

この人たち?

そういえば、スナイプさんが殺すと言ったのは「親」だった。勝手に母親だと思っていたが、どっちの親なのか、そもそも、どっちかのことを指しているのか。どうして確認しておかなかったんだ。僕はスナイプさんに連絡した。

『あの、僕たちが殺す親っていうのは、母のことで合ってますか』

直ぐに既読がつき、数分後に返信が来た。

『もう決まってるのかと思ってたぜ。俺には、親のせいで、湊が傷ついていることしか分からなかったからな。お前が、殺したいと思った方を、どっちもならどっちも、殺せばいい。ケーキをどっちに食わせるかってだけの話だから、直前まで迷っててもらっても構わない。』

そういえば、スナイプさんは、どうして僕が親にやられていたと分かったのだろうか。

『スナイプさんは、どうして僕の痣が親に付けられたものだって分かったんですか?』

そして、僕はもう一つ気になったことを聞くことにした。

『あと、どっちも殺さない、っていう決断は、許されるんですか』

数分の沈黙があった。

『男の勘って言ったら、いいかな。どっちも殺さないのも許される。だが、お前がそれでもやっていけると思ったらの話だ。悪者が好き勝手暴れ回っている社会とか政権は、歴史的にも潰れてる。』

『直前まで考えます。夜遅くにすみませんでした。』

『おぅ、明日からは準備もあるから毎日来てな。おやすみ。』

僕は布団を被って涙を流した。だってそんなの、分からない。


十二月二十三日の午後。僕はアジトに居た。

決起集会だと言って自分用の酒と僕用のジュース、それにたくさんのお菓子を買ってきたスナイプさんは、いつもに増して楽しそうだった。

「いいことでもあったんすか?」

と僕が聞くと、スナイプさんは当たり前だと言うように話し始めた。

「だって、明日がお前の門出になるんだぞ? ほら、そこにケーキの材料も積んである。ほら、あれがポイズンフルーツ、今年は毒リンゴにした。去年は、なんだったかなーもう覚えてねぇわ。ほら、湊がりんご好きって言ってたからな!あ、でもお前は食べちゃダメだぞ?」

「あの、前から気になってたんですけど、その、今年は、とか、去年は、っていうのは、なんなんですか?」

あー、それはなぁ。酒が回ってきていたスナイプさんは、なんでもないことのように語り始めた。


俺は、親に殺されかけたんだ。他人が親から受けた傷が分かるのも、自分が幾度となく、受けたからなんだ。

俺の親は、それはもう酷いなんてもんじゃなかった。「お前に価値を見出してやってるんだ」ってのが最初の口癖。最後の方の口癖は、「価値の無いお前が生きているなんて、世界が可哀想だ」だぜ。意味わかんねぇよな。暴力は当たり前。学ランって、結構丈夫に出来てると思ってたけど、ほら、これ、こんなビリビリになるのな。家庭科苦手系男子だったら直せなかったぜ。

後から聞いたのは、両親はクスリをやってたってことと、二人がデキ婚だったってこと。要するに俺は、狂った親から生まれた、望まれてない子供だったってことよ。

不運なことに、これが俺一人だけじゃなくてな、俺、双子なんだよ。弟は暮っていってな。暮も俺と同じ、いや、あいつの方が頭の出来が悪かったから、もっと酷い目にあった。それでも、これは耐えるもんなんだ、って、俺も暮も疑わなかったんだよ。


十八の時、暮が殺されるまでは。疑わなかったんだよ。


『兄さん。兄さんはなぜ生きている?』

十二月の寒い夜に、暮から電話がかかってきた。俺は部屋にいて、暮は帰ってなかったから、遅くなるとか、買ってくものある?とか、そのくらいのことだと思ってたんだ。だから俺は急にそんなこと言われてびっくりした。辛い辛いってお互いにこぼすことはあっても、そんなに重い話を、したことは無かったからな。

『そうだな。お前が死なないからじゃないか。お前が生きてる以上、俺も闘わなきゃならねぇ。そうだろ?』

暮は電話越しに笑っていた。冬の冷たい風の音が、電話越しに聞こえていた。

『奇遇だね。僕も同じこと思ってたんだ。』

『おぅ、双子だからな。』

『クリスマスが近いんだね。イルミネーションがたくさん見える。』

『今年もプレゼント交換、しような。お互い大したものはあげられないだろうけどさぁ。』

『兄さん…』

『お?どうした?』

『…兄さんも、早く楽になって』

『どういうことだ? おい。様子おかしいぞ?』

大きすぎる衝撃音と共に電話が切れた。


転落死、自殺だった。


俺は保護されて、初めて、これは当たり前じゃなかったんだって気づいた。親っていうのはこういうもんなんだ。信じて疑えなかった、疑えなかったものが、全部、違うって、分かったんだ。

俺は暮のことを救うことが出来なかった。常識を、もっと早く疑っていたら、違ったのかもしれなかった。

俺は、闘う必要なんてないのに、それでも闘っていた、唯一の戦友を、失ってしまった。その事が辛くて、狂った。意味が分からなかった。どうして。何も分からなかった。どうして。なんで。どうして!

そんな時に出会ったのが、ポイズンサンタ、俺の先代だったんだ。


「それは、親だね?」

「どういうことですか」

「その心の傷は、いや、体もか。親がつけたんだろう」

「いえ。心の方は多分、自分でつけたんです。」

「違う!!!!!」

先代は顔中の血管を浮かせるような気迫で、正直いって死ぬほど怖かった。

「全部自分が悪い、そう思わせるのが毒親の共通点なんだ。頑張ってるところは絶対に認めない。頑張ってないところだけを徹底的に掘り返す。そのせいで毎年大勢の子供が死んでるんだ。」

「違う! 暮を救えなかったもの、親が怒るのも、俺が弱いからで!」

「それが違うんだ。違うと、心の中で分かっているのだろう?いいか、よく聞け。十二月二十四日の夜、一緒にお前の親を殺さないか」


俺は湊、お前と同じなんだ。それから、毎年クリスマスイヴに、俺と同じような境遇の奴を探して、「救う」ってことをしてるんだ。


気づけば僕は大粒の涙を流していた。


十二月二十四日。プラン実行の日。

僕とスナイプさんは、これから人を殺すとは思えない格好で料理をしていた。

「え、スナイプさん、それ、ツッコんでいいですか?」

「え? あ、これか? 可愛いエプロンだろう」

「えっいや、まぁ、えーと、そーなんですけど、なんていうか、うん、いやらしいんですけど。」

「ドン・キホーテのコスプレコーナーの端っこにあったやつだからな。まぁ仕方ない。」

「なんでそんなもん持ってんすか!」

「大学生の時に仮装大会みたいなので」

「大学行ってたんですか!!!」

「え? 行ってちゃわるいか?」

そんなくだらない話をしながらも、僕たちはテキパキと手を動かして、毒リンゴをふんだんに使ったホールケーキを完成させた。

「あの、こんなの、小さな疑問かもしれないんですけど。」

「お? 何だ? あ、費用なら俺が持つぞ?」

「いや、そうではなくて。あの、これって僕たち、捕まるんですか?」

スナイプさんは神妙な面持ちで口を開いた。

「毒自体は体内に入れてから数時間経つと検出されないように作ってある。あとは、お前がヘマしなければ、多分捕まらない。だって、考えてもみろ。俺たちは別になんの悪いこともしちゃいないからな。」

スナイプさんの言葉には、やっぱり妙な説得力があった。

スナイプさんに出会ってからここまで、ずっと思っていたことがあった。

悪者って、誰なんだろうか。

物語の悪役にも必ず事情はあって、それを無下にすることなんてできない。そのはずなんだけど、僕たちはヒーローをヒーローとして見て、ヴィランをヴィランとして見る。

僕たちの物語の中で、ヒーローは本当に僕たちなんだろうか。親は本当に、ヴィランなんだろうか。


「よし。それじゃあ。ここからの指示とかは特に無い! 解散だ!」

「え!? あの、え?スナイプさん?」

「え、何だ? もう別にお前一人で出来るだろう?」

「え、でも、え? お別れ? なんですか?」

「繋がりは少ない方がいい。それに、俺は、湊、お前が出来る奴だって信じてるから。」

スナイプさんはそう言いながら、チョコのプレートにチョコペンでなにやら書いていた。

「それは?」

僕が覗き込むと、そこにはスナイプさんからのメッセージが書かれていた。

『freedom in the holy night』

「いいと思います」

「だろ?」

これがスナイプさんと僕の、最後の会話になった。


結果から言うと、母の最期は、なんか笑えるほど無惨だった。

「出来損ないにはケーキ作りじゃなくてもっとやる事あるだろ!」

母は僕たちのケーキを踏みつけた。父に至っては、じぇーけーとデートだと言ってそもそも家にいなかった。改めて考えてみれば、この男、実の子供じゃなくてじぇーけーを養ってるクソ親じゃねぇか。母より先に始末しとくべきだったな。

僕は台所から包丁を持ち出した。聖夜の馬鹿力ってところだろうか。いつもなら殴られて終わるだけの相手の腹を、いとも簡単に突き刺した。親が溜め込んでいた赤い毒が床に流れて、僕はただただそれを見つめていた。

「正義ってなんだろうね」

僕は久しぶりに母の前で笑った。


刑事さんは冷たい声で言った。

「あの男の被害者を、また増やしてしまった。」

「どういうことですか」

意味が分からなかった。

「あいつは、DV被害者の弱いところに漬け込んで、親を殺させて、それを遠くで眺めて笑ってるサイコパスなんだよ」

刑事さんは何を言っているのだろう。そんな訳が無い。スナイプさんは、正義のために僕と一緒に闘ってくれたんだ。悪者を倒すために協力してくれたんだ。

「考えてもみろ。お前が殺した、その毒親だって人は、お前を高校生になるまで立派に育てあげたんだろう? 人一人殺せるほどの健康体に。それに、勉強のことで色々というのは、お前を思ってのことだろう。」

健康体? 僕を思って? 何を言っているんだ。

「違う! 親には褒められることなんてひとつも無い! 勉強が出来る息子を持ってる、出来る親の称号が欲しかっただけだ! 僕の親も、それに、スナイプさんの親も! 子供のことなんて微塵も考えてない悪者なんだ!!!」

「そうか。どうせあの話もされたんだろう。鴫原秋は、双子なんかじゃないぞ?年の離れた遥乃っていう妹がいるだけで両親もまだまだ健在だ。お前は騙されてたんだよ。」

「違う。違う違う違う違う! 警察はまた親の味方をするのか! 担任だってそうだ! カウンセラーだって! 口を揃えて『親御さんにも事情がある』しか言わない! 一度たりとも本気で動いてくれなかったお前らに何が分かる!!」

「お前は正義とか悪とかいう言葉に洗脳されて、鴫原の遊び道具にされてたんだ。だって実際、お前は捕まって、奴は捕まってない。手を下すのはいつだって鴫原本人じゃないんだ。自分に足がつかないように。だからこのとおり、名前まで分かってんのに何故か捕まえられない。毎年毎年罪も無いはずだった子供がクリスマスに捕まってここに送られてくるんだ。あいつはな、自分の巧妙な話術によって子供たちが親をどんどん憎むようになって、わけも分からずその手で肉親を殺めてしまうまでの過程を、エンターテインメントとして楽しんで」

「っっ違う違う違う違う!!! 違うっつってんだろ!!!!」



湊には精神異常者との判断が下ったそうだ。

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ポイズンサンタクロース 轟 和子 @TodorokiKazuko

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