第14話 今日は特別
「アヤ、お姉ちゃん千円見つけたの。ふふ」
双子の一卵性の姉のアヤに部屋に呼び出してきたので妹のカヤは、部屋のドアをキチンと閉めた。
2人は、まだ9歳の小学3年生だ。両親ですらうり2つの姉妹を間違える。
姉のアヤは、外向的で人見知りをしない。妹のカヤは内向的で誰と話す時でも緊張をする。似ているのは色白の肌に二重の瞳、ツインテールをしている事くらいだ。
姉のアヤは、何か秘密を見つけると、必ずカヤに話してくれる。
「どこで見つけたの?交番に行かなくていいの?」
心配性のカヤが聞く。
アヤの手には、くしゃくしゃの千円札が1枚握られていた。
ドアをノックする音が聞こえてカヤは飛び上がり、アヤは千円札をスカートのポケットに入れた。
お母さんがドアをあけた。
「カヤの部屋に行ったら、誰もいなかったから・・・もう11時よ、明日は土曜日で休みだからって早く眠りなさいね?」
心臓がバクバクと脈打つカヤに対してアヤは、冷静な顔ではあーいと返事をする。
「お母さん、明日カヤと遊びに行っていい?」
突然アヤが話す。お母さんは思案顔の末に、防犯ブザーと帰りは子供携帯で連絡する事を約束したら、了解がでた。
お母さんがドアを閉めて、階段をおりる音がするとアヤは、悪そうな顔で笑った。
「カヤ、明日お出かけしよう!この千円は、お年玉にとってあった残り」
その言葉に安心して、カヤはうなずき自分の部屋に戻った。
次の日、おそろいのポシェットと防犯ブザーと子供携帯と隠した千円札を持ち、アヤとカヤは出かけた。
どこに行くのか分からないアヤは、手を握っているカヤに何度も聞くが、教えてくれない。春の風が柔らかく2人のツインテールを流す。
「ここ」
カヤが見上げると、両親とたまに来るファミリーレストランだ。
緊張するカヤに対してアヤは、グイグイ手をひく。ドアを開けるとベルが鳴る。
「2名様かな?」
優しそうなお姉さんが聞いて、4人がけの席に案内してくれた。
「お子様パフェを2つお願いします」
お姉さんに迷いなくアヤが注文する。お子様パフェと言えば、家族で食べにくるとお腹がいっぱいになると言う理由でお母さんが頼んでくれないスイーツだ。
「すごい!」
思わずカヤは声に出し、アヤは自慢そうな顔だ。
運ばれてきたお子様パフェは、1番下がバニラアイスクッキーを砕いた3層で、1番上には、イチゴがのっている。
「ごゆっくりどうぞ」
お姉さんがニッコリ笑う。大人になった気分。
アヤもカヤも夢中で食べた。お金を払うレシートを持つとアヤは千円札を取り出した。
「お父さんとお母さんには、秘密ね」
アヤがにっこり笑う。カヤも笑う。
「お支払いお願いします」
アヤがお母さんみたいに、レジのお姉さんにレシートとくしゃくしゃの千円札を出す。
お姉さんは、少し困った顔をする。確かお子様パフェは500円ぴったりだ。
「2人で、1100円するの。ぜいきん、て分かる?」
自慢げだったアヤの顔が真っ青になる。カヤはもっと真っ青になる。
「んー、今日は2人で来たの?ちょっと待っていてね」
家のお母さんに連絡される。叱られる。アヤもカヤも涙目になっているとお姉さんが戻ってきた。
「今日は、2人でお出かけ偉かったから、お姉さんから特別なプレゼント」
お姉さんの手には、100円がキラリと光る。
「またのお越しをお待ちしています」
お姉さんは、レシートをアヤに渡して笑う。
「ありがとうございます」
アヤとカヤの声がそろった。お姉さんが笑う。
帰り道、お母さんには公園に行っていたと嘘をついて電話をした。
アヤとカヤは手を握って、クスクスと笑った。
オレンジ色の夕日が2人のツインテールをオレンジ色に染める。
今日は、大人になった気分の特別な日だ。
「パフェおいしかったね」
アヤが笑う。
「お姉さん優しかったね」
カヤが笑う。
今日はアヤとカヤが少しだけ大人になった特別な日だ。
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