第11話 海水
海面に触れる日は来るのだろうか。陸の海は近くにあるのに遠い存在だ。
六本足の歩道橋から陸の海を見たし、バッグに隠れるウミネコも見た。陸の海に相応しい袖長鮪だって食べた。私は陸の海と触れ合っているが、全て間接的にだ。
ガラスのタコ壺を持ったあの男性は直接、陸の海に触れる事ができたに違いない。
ヘアクリップの女の子に至っては泳げたのだ。
私は陸の海水にはまだ触れていない。海はすぐそこにあるのに波打ち際から先へ進めないのだ。
見えるのに実物に触れないのなら陸の海は私にとって幻のようなものだった。
海水を中に入れる人と入れない人の違いはなんだろうか。仕事の休憩時間に、私は最近そんなことをよく考えている。
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