第5話 梅雨と潮の香り

 昨日まで雨が降っていた。梅雨入りしたのだ。今日は梅雨の晴れ間。晴れ間と言っても薄雲がかかっているので日差しは弱い。


 私は海の存在を雨上がりに一番強く感じる。家の庭の湿った匂いの中に海の香りと共通するものを感じるからだ。

 

 これは何年も前から不思議だった。私の家に海が無いことは私が一番よく知っている。それなのに子供の頃に連れて行ってもらった海辺の町と似た香りがするのだ。

 

 一度、家と家の周りを点検した方が良いのかもしれないと、雨が降るたびに思う。    

 意外と身近に海のかけらが見つかるのかもしれない。

 

 私は老いてはいるがまだまだ元気な両親と一緒に暮らしているが、両親とご近所の人に心配をかけずに海のかけらを探すにはどうしたらいいかと考えている。しかし、いつも別に慌てて探すものでもないのだし……と先送りにしている。


 庭には季節柄、花菖蒲が咲いているが、潮の香りの原因はそれとは違うようだ。

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