ある居住型惑星FCオーナーの通話記録

緊急！緊急！本部応答せよ！

宇宙空間を彷徨っていると、ときたま送信時のエラーなどで正常に受信が出来ず宙ぶらりんになったままのデーターを拾う事がある。これはその中の一部だ。

・・・

本部！本部！応答願います！こちら惑星開拓公社第71598265号FC(フランチャイズ・チェーン)、「テラ」！

先ほどバビロン相対重力軌道建設公団の派遣作業員、及びテラの原住民と共同で衛星係留索の建設作業を行っていたところ、突如何者かの急襲を受け現場はひどく混乱している！直ちに治安維持艦隊をこちらへ緊急超空間回線にて着送（ビーム）されたし！

繰り返す！こちら惑星開発公社・・・どうした！

何、言語差異平均化促進微小構成体発生装置故障！？

そのせいで公団作業員や原住民との意思疎通が困難となって避難誘導が出来ない！？

落ち着け、意思疎通手段を音声言語から訓練時に叩き込まれた緊急時用の動作言語に切り替えて誘導するんだ。動作言語に切り替えることを知らせる時は口の前に指で作った×を置いて、手のひらをばたばたと降るんだぞ！

そうだ、「逃げろ」の動作言語は腕を大きく振るんだ。よし、本部と連絡が取れたら俺もすぐ行く。すぐにお前も避難誘導に戻れ！

ジジッ・・・ジッ・・・ジジジ・・・ザーーーー

（ここでしばらくノイズが続き通信が途切れる）

・・・本部、本部、襲撃者は衛星係留索惑星側基底部を破壊した！対象はひどく大柄な真っ黒い巨人で、公社直属の警備隊の武装では全く歯が立たない！ああ、俺たちが手塩にかけて作った基底部をあんなに簡単にぶち壊しやがって・・・大至急治安維持艦隊を着送されたし！・・・くそっ、なんでこんな時に限って通信が届かねえんだ、いつもなら一分一秒でも定時報告が遅れようものなら運営報酬を減額するとかのたまうくせに自分たちには甘いんだからなあ・・・。

・・・まてよ？おい、そこの若造！そうだ、お前だ。今すぐこの管理施設の重光子色高速電信設備区画に行って、簡易走査をかけるんだ、もしかしたら襲撃者の攻撃のせいでシステムのどこかがいかれてる可能性がある、すぐに見て来い！・・・何ぃ？簡易走査のやり方を忘れたぁ！？

ったく、暇なときはマニュアルを最低二周読めと言ったはずだ！

ううむ、もういい！いいか、基本制御操作卓の上から二番目の緑色のボタンが簡易走査の実行スイッチだ、簡易走査を始める時は一回、終わるときは二回押すんだぞ！！わかったらさっさと行ってこい！

・・・ん？待てよ、あんなに若い奴、ここで働いてたっけ・・・ここで働いてるやつは皆全員俺と同じく中年ばかりだったはずだが・・・

ジジッ・・・ジッ・・・ジジジ・・・ザーーーー

（ここでしばらくノイズが続き通信が途切れる）

本部・・・！本部・・・！どうか、どうか応答してくれ！！

襲撃者の正体が分かった・・・”奴”です！”奴”が俺たちを襲ったんだ！！

最近何回かはその名を耳にしてはいたが、まさかこんな田舎星にまで現れるなんて・・・そして今、”奴”は今自分の目の前にいる！さっき呼びつけた若造が、”奴”の正体だったんだ！基底部で暴れている黒い巨人は、奴の傀儡！おそらく、銀河中を襲った恐怖の黒神というのがあれなんだろう？本部！本部！

頼む、一言でもいいから応答してくれ！！目の前の”奴”が惑星開拓公社は僕が母星もろともぶっ壊したからいくら通信しても無駄だよ、ってほざいてるけど、嘘だよな？頼む、嘘だと言ってくれ、本部！本部ぅぅぅぅ！！

ジジッ・・・ジッ・・・ジジジ・・・ザーーーー

（ここでしばらくノイズが続き通信が途切れる。所々銃撃と思わしき音声が入る。最後に大きな悲鳴がノイズ越しに途切れ途切れに聞こえて、しばらくの間沈黙が走る。)

・・・君に恨みはないけど、悪いね。だが僕はたとえ人間でいう所の幼年期にある星でも僕の脅威となる可能性がある以上排除すると決めたんだ。僕より強いもの、強くなりそうなものはこの宇宙には一つたりとも存在してはいけないのさ。この宇宙で絶対的に強い力を持つ存在は、この僕、アフレイダスだけで十分だからね・・・

・・・

うへえ、何とはなく再生したデーターにまさかアイツの声を聴くなんて・・・

しかしまさかこの地球にもあいつの魔の手が伸びていたとは。

同じ特異点のくせしてなんたってあんなに俺と真逆のことが出来るんだろうな・・・