第7話 手かげんせず生きる

 手かげんせず生きる


 どうにかして、絵をくだけで生活してゆきたいと願っていた。そして、無理をして時間をつくっては絵を描いていた。しかし、出来た絵は売れなかった。借金が残った。だがあきらめず、自分の絵を社会に出そうとして、同人雑誌をつくった。その結果、私の絵はひと目にれるようになった。併し、有名になったわけではなく、評価がついたわけでもなかった。金も、ほとんど入らなかった。雑誌は赤字であった。併し、出来ないことまでしてなった赤字で、後悔はなかった。私は、自分の可能性の枠を広げていったのである。

 私は、対人恐怖症ではなかったが、他人が苦手であった。他人と面とむかうと、どもってしまった。併し、私は自分を叱咤しったして、同人を集めた。書院のワープロで、同人募集のチラシをつくり、阿佐ヶ谷の飲み屋「山路やまじ」に置いてもらった。そのチラシで同人がひとり増え、また漫画雑誌「ガロ」に掲載されていた、渋谷109前広場でゲリラ開催したアングラ集会に参加して、チラシをいた。その集会で五名の人たちが雑誌に参加した。私は、次第に熱狂していった。有頂天であった。やがて、十名ほどの同人数に気をよくして、未知の人、既知の人たちに連絡を入れ、小説、詩篇、漫画の提供の申し入れをした。

 また、私は自分の可能性を信じていた。いや、信じるしかなかった。私は苦手な営業活動をした。もっとも、営業と言っても、受け入れ可能な同人雑誌取扱店に雑誌を納品するだけで、本格的な営業活動とも言えなかったが、私にとっては、人に会って、話しをして、納品を済ませることは簡単なことではなかった。


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