第22話 王様
二十二 王様
「楽しそうな二人だよね。」
びっくりしてみると、チムニーが隣に座っています。
「えっ」
「テリーゼとラルム。楽しそう。」
「そうだね、やっぱりそうだよね。」
瑠璃はドキドキして、二人は恋人なのかな〜ってチムニーに聞こうかと思ったら
「ぼくも、楽しいよ。十一夜って楽しい。」
そう言ってにっこりと瑠璃を見ました。
そっちかーと、ちょっぴり自分の考えたことが恥ずかしく顔が熱くなっていきます。
「瑠璃、どうしたの?赤いよ?大丈夫?」
赤くなった顔をチムニーに見られてもっと恥ずかしくなり
「大丈夫。なんでもないよ。それより、、、チムニー。さっきはごめんね。その、、煙突が少ないなんて、、、」
「大丈夫だよ。だって、そうなんでしょ。」
「うん。でもサンタクロースは来るよ。だから、煙突のある家の人はチムニーがいてくれたら嬉しいと思う。」
「サンタクロースって?それってなに?」
「サンタクロース、知らないの?さっきラルムが、、、」
瑠璃は、ラルムが話してくれたのと、テリーゼの夢は同じだったのに。チムニーはサンタクロースを知らないなんてと思っていると
「煙突って、暖炉とかキッチンに繋がってるんでしょ。寒い日は暖炉の前にみんな集まって暖まっているだろうし。キッチンでは毎日美味しい食事が作られているんだよね。ぼく、その煙突を守ってあげたいんだ」
「へ〜それがチムニーの夢?」
「そうだよ。」
チムニーの夢は意外なほど普通でした。これが夢なのかと思うほど。
瑠璃は夢って、はっきりと言葉では言えないけれど、もっと大きな、すごいってみんなが思うような事だと思っていたんです。
チムニーの夢はとっても普通。その普通な夢を話すチムニーは、真っ直ぐでかっこいい。瑠璃は気持ちがほんわかとしてきて
「素敵な夢だねチムニー。私、チムニーと友達になりたい。なってくれる?」
「もちろんさ」
瑠璃は、チムニーのハリネズミみたいなブラシを触らせてもらったり。 私の家にも煙突をつけるよと約束したり。 刻の狭間に友情が生まれた瞬間でした。
女王の夢は聞かなくてもわかる気がしましたが、そうだと何かを思いつき女王に
「女王様。女王様のもう一人のオルゴールは、やっぱり衛兵さんですか?」
「あら、聞こえなかったかしら?私はわからなくてよ。」
瑠璃は、構わず続けます。
「もしかしたら王様だったかもしれませんよね」
「え、王様?」
瑠璃の話に青い瞳がキラリと輝きます。
「そうです。王様ですよ。女王様」
思った事は、口にしないといられない女王に、瑠璃も思ったことを伝えます。
「王様がここに、、、」
瑠璃の想像とは違い、女王は自分の立っていた台座を見つめて黙ってしまいました。
(あれ、また わからなくてよ って返ってくると思ったのにな)
静かな女王はなんだか可哀想に見えました。悪いことを言ったのかと少し後悔していると
「どう言うことかしら。どうしてそう思うのかしら。王様がここにいらしたって。」
強い口調のいつもの女王?でも、何か違うように感じます。
「たぶん女王様達が立っていたと思うその四角い穴だけど」
「ええ、それが」
「それぞれ、大きさが違うでしょ」
「大きさ、、、」
女王は台座に座りこみ四角い穴を比べるように見て
「本当、、、同じじゃないわ、、、」
「ね、少し大きめの穴が二つあるでしょ。一つが女王様、あなたで。もう一つが王様が立っていたと考えると、なんかあってるような気がするのよね」
暁と刻の執事は、感心して
「おー。」
と、揃って声をあげ、玻璃は 瑠璃も気がついたのね と心の中で、拍手を送ります。
得意げな瑠璃が女王を見ると、今まで強く偉そうに見えていたのに、なんだか小さく見えて、やっぱり思いついたからと何でも口にしちゃいけなかったなと申し訳ない気持ちになっていきました。
「そうかもしれないわ。二つだけ少し大きくて立派に見えるわ、、、私と王様が並んで立っていた、、、ここに、、、」
女王はそう言いながら、二つの四角い穴に愛おしそうに手を置き、そして
「王様がいらしたのなら、どうして女王の私を置いてお一人で『時』に行ってしまったのかしら。一緒にいたのに、どうして、お一人で、、、」
女王の青い瞳には、もっと深い青なり、悲しみに沈んでいくように大粒の涙が浮かんでいました。
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