第17話 カギ

十七 カギ


白髭の執事が、お城にあるような白く艶やかな大きなテーブルに瑠璃達を招き、貴族が座りそうな足がカールしている椅子をひき


「さあ、瑠璃様。マリ様。」


と、声をかけると、女王がまるで自分が二人を招待したかのように


「さあ、遠慮しないで。お茶会を始めましょう」


いかにも気品あふれる女王のようにそう言います。白髭の執事は、やはり小さな声で お茶ではないのですが、と。

テーブルにあるカップは揃ってはいなかったけれど どれも可愛く、瑠璃がどれにしようかな〜と選んでいると、そんな背中をマリが、選ばないの 早く座りなさい と言ってるかのようにつつきます。

暁の執事はその様子を見ながら


「さあ、こちらに」


瑠璃を導いてテーブルに着かせます。

カップの中には、お茶ではなく水が入っているようでした。 そして、何か小さなかけらが浮かんでいました。


「お茶じゃない、、かな?お水? でも 何か浮かんで、、、少し青い、、、飲み物?」


瑠璃に小さな声で白髭の執事が


「瑠璃様。申し訳ありません。お茶の葉は、とおに切らしていまして、、、。ですが大切な青薔薇の花びらはちゃんと入っております。」


と、失態を打ち消すかのように胸を張って答えます。


「青いばらの花びら?」


確かにカップをよく見ると本当に小さいけれど青いかけらが。 見ているうちにそれが水を含んで倍ぐらいになり、花びらかどうかは分からなかったけど小さなかけらがカップの中を薄青色に染めています。


「初めて。こんなにきれいなお茶、初めてよ、わあ〜」


青い色の飲み物なんて何とも不思議です。でも瑠璃は、大好きな星刻教会の朝の色に似ていると、すぐに気に入りました。


「青い薔薇なんて見たことない。こんなに小さいのに、こんなにもきれいなんて。青い薔薇、見てみたいな」


瑠璃の こんなにも小さいのに は、青薔薇の花びらを大切に大切に少しずつお茶に出している白髭の執事は引っかかりましたが


「瑠璃様。青薔薇の花言葉は、夢かなう でございます」


白いピンとした髭を、いっそうピンとはって言いました。


「夢かなう、、、」


カップを両手で包み込むように持っている瑠璃に女王が


「そう、夢が叶う青薔薇のお茶。それを飲めば瑠璃の夢が叶うのよ」

「夢が叶う。それが十一夜?このお茶を飲みにきたの?」


驚いて女王を見上げていると、刻の執事が


「そうではありません。女神様はあなたと同じ夢を見つけなさいっとおしゃったでしょ。」

「うん」

「見つけるのです。瑠璃さんと同じ夢を持つオルゴールをこの中から一人だけ。そして、十一夜の夜が明ける前にその鍵を渡すのです。」

「あっ、これね。このカギを渡すのね。」


瑠璃は、自分が斜めがけにしている金の鎖の先にある、星刻の海のように透き通っているカギを手に取ります。

まるで波がそこにあるかのように優しくゆらめいて光るカギ。 手のひらに乗せていると、瑠璃の手の中に溶け込んでしまいそう。


「そうです。良いですか。同じ夢を持っているオルゴールを探すと言うことは、瑠璃さん、あなた自身の夢が何であるかをわからなければならないと言うことです。あなたの夢を見つけるのです。それが十一夜。それが瑠璃さんの部屋のあの時に帰るカギなのです」


刻の執事はしっかりと瑠璃の目を見て話します。 別人のように厳しい顔をしている刻の執事に瑠璃は、


「はい。」


と、息をのむように応えます。 女王は、刻の執事の言葉に続けるように


「そして、カギをもらったオルゴールは 瑠璃、あなたの『時』に一緒に行くことができる」


そう話す女王の目は、青く深く 吸い込まれてしまいそうでした。

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