第15話 オルゴールたち

十五 オルゴールたち


華やかな声に瑠璃が振り向くと


「こんにちは。瑠璃。お誕生日おめでとう」


華やかな声の持ち主も、やはりさっきまで台座に立っていた黄色の大輪の薔薇のようなドレスをきたオルゴール。


「あ、こんにちは。えっとあなたもオルゴールですよね?」


女王様のような姿に瑠璃は緊張します。


「そうよ。」


華やかな声の主に緊張する理由は、もう一つ。 黄色いドレスの後ろには、鉄の甲冑をつけたオルゴールが二体と、立派なカールした白いヒゲにタキシードをきた細身の紳士が控えていたからです。


「えっとー。後ろの皆さんは、、、」

「私の執事と衛兵たち」

「執事、あなたにも執事さんがいるのね」


そう嬉しそうに瑠璃が言うと、白いお髭のあごを上に向けてすまし顔で立っている執事が白い手袋をした手を口元に当ててコホンと咳払いをし


「瑠璃様。お誕生日おめでとうございます。

こちらにいらしゃいますお方は、我々の女

王様でいらしゃいます。」

「やっぱりそうなのね、そうじゃないかと思

ったわ。」


瑠璃が嬉しそうに答えると、白髭の執事が


「と、いわれますと?」

「だって、とても立派で女王様って感じだも

の。それに、立派なお髭の執事さんもいる

し」


気難しそうな顔をしていた白髭の執事の口元が少しほころんで、目だけが瑠璃をチラリと見ると


「瑠璃様、お目が高い」


そう言って、女王様に一礼すると背筋を伸ばしたままその場から離れて行きました。


「女王様、お名前は?」


瑠璃がそう尋ねると、当たり前のように


「女王様よ」

「それが名前?」

「ええそうよ。皆がそう呼ぶのだから、それが名前でしょ。」


なるほど、そうかもと思い


「わっかたわ。私もそう呼べば良いのね」 「ええ。もちろんよ」


なんだか変わってる、そう思っていると


「俺は、煙突掃除屋のチムニー」


何重にも巻いた太めの針金の先に、水筒を洗う時のような形のそのもっと大きくて、ハリネズミみたいにイガイガの硬そうな黒いブラシが先についているものを体に斜めに掛けてかついでいる、瑠璃くらいの年の少年が立っていました。


「こんにちは。チムニー。私は、瑠璃よ。」

「ああ、お誕生日おめでとう瑠璃。」


チムニーは少し恥ずかしそう。


「ありがとう。」


瑠璃がそう答えて、あれ、もう一人。

チムニーから少し離れて立っているような影があります。誰だろうと近づこうとすると


「キャーッ」


いっそう甲高い女王の悲鳴がしました。瑠璃が慌ててどうしたのと駆け寄ると


「もう一人、もう一人瑠璃がいるわ」


次々と起こることに夢中になっていた瑠璃が、あーそうだった、ママと来たんだと思っていると


「こんにちは。女王様。マリです。」


いまだけマリになっている玻璃が膝を曲げて本物の女王様にするようにお辞儀をしました。


「ビックリしたわ。そうよね、誕生日が同じ

人っだっているわよね。でも こんなこと

初めて、、、だと思うから、、、驚いた

わ」


女王は、そう言ってマリに近づき


「お誕生日おめでとう、マリ」


そう言って、マリの顔を見ると


「えっ」


今度は、小さく驚いて息をのみ


「あなた、マリ、、、なの。近くで見てもやはり瑠璃みたいだわ。 というか、、、瑠璃、、いえ、、、。」


女王は、マリにもっと顔を近づけると


「あなた、私に会ったことないかしら?」


そう眉間にシワを作り何かを思い出そうとしているように尋ねます。 その様子を瑠璃の背後から見ていた刻の執事が慌てて近づこうとすると、もうマリの隣には執事の格好をした暁がいて


「女王様。瑠璃様とマリ様は、いとこでいらしゃいます。親戚というものは、面影も声もよく似ているのです。」


そう さらりと答えます。


「そうよね。ごめんなさい、瑠璃にもなんだか会ったことがあるような、、、そんなはずないわ、今 始まったのだし、、、そうよ。会った事があるなんて私、どうかしているわ。とにかく、もう一人いるんだもの。」


まいったわって顔をして肩を少し上げてマリに微笑みました。


「本当に人というのは、奇怪なものでございます。さあ皆様お茶のご用意が出来上がりました。」


白髭の執事がこれまた白い眉毛を引き上げながらみんなを招きます。

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