第14話 テリーゼ
十四 テリーぜ
瑠璃の背後には、さっきまで台座の上で音楽に合わせてクルクルと踊っていた人形のバレリーナが。
そのバレリーナが、人のように滑らかに動いて、微笑みながら瑠璃に近づいて来るのです。
暗闇の中に降りてきたスポットライトの中から抜けてスーッと瑠璃に向かって歩いてくる。
普通なら怖いと思う場面?
でも、瑠璃の目は、まん丸になってこぼれ落ちそう。そこには、恐怖心は微塵もありません。あるのは好奇心だけ。
そりゃ、今までの瑠璃の生活からかけ離れた事ばかりが次々起きてここに立っているのです。怖いなんて思う隙間は、瑠璃の心の中にはもうありません。
「こんばんは。あの、、、私、今日 十一夜
を迎えた瑠璃です。」
瑠璃は、キラキラとした瞳で続けます。
「あの、、、えっと、、、私の言葉、わか
りますか?えっと、、、」
目の前に居る女の子は、吸い込まれそうな深い緑色の瞳。小さな薔薇色の唇。スラリと延びた手や足。 少し、くすんでいるようでしたが品のあるゴールドの混ざった薄桃色のクラシックチュチュ。胸元には、細かい金色のバラ。トウシューズも薄桃色。そのバレリーナが微笑むと
「こんばんは。」
薔薇色の唇から瑠璃にそう声をかけてきます。
「十一夜、おめでとう瑠璃。あなたは、瑠璃
なのね。」
「そうよ。私の話す言葉がわかるのね。」 「もちろん」
もう瑠璃はワクワクした気持ちが抑えられません。
「あなたは、だれ。オルゴールなの? それ
とも人なの? ここに、、、えっと刻の狭間
に住んでいるの?
ここは、どこなの?
この 館に名前があるのかしら 私はね、ここ
まで 光の橋を歩いてきたのよ。
そのまま教会に 着くのかと思ったら、急に
滑り台になってガラスの野原に着いたの。
てことは、ここは星刻教会?
ガラスの野原なんてあったかしら?
ナナホシテントウもチョウチョもガラスで
できていたのよ。
シャリシャリって。透き 通ってて もう可愛
くて。
大きな扉をグッと 押して。すごく重たかっ
たの。それから光 の粒。えっと金のネック
レスとかみたい な、そんな感じの金色の光
の粒の波に乗っ てここに来たの。
すごくき れいだった。す ごく気持ちよかっ
たの よ。」
瑠璃は一気に話出します。 もう、その勢いにだれも口を挟むまもないほど。
バレリーナはクスクスと笑いながら。
刻の執事は、四人の秘密まで話し出したらどうしようかとハラハラしながら、楽しそうに話す瑠璃を見ています。
一気に話終わると、はあ〜っと吸うとも吐くとも言えないような大きな呼吸を一つ。すると瑠璃の話しをニコニコ聞いていたバレリーナが
「話、終わった?」
ふふふとイタズラっぽく笑い
「私は、オルゴールでバレリーナのテリーぜ
よ。ここに住んで、、、」
そう言って少し考えるように斜め上を見て
「う〜ん、住んでいる、、、の、、、か
も。」
「かも?」
「かもって、変よね。でも住んでるって感じ
が良くわからないんだけど、住んでいるの
かな〜。ずーっとここにいると思うから、
住んでいるっていうんだと。」
「ずーっと?ずーっとってどれくらいずーっ
となの?」
「ずーっとは、ずーっとよ」
「ずーっと、、、ね」
瑠璃は、わかったような。いえ、正直に言うとまったくわかりませんでしたが、まあそれはどうでもいいやとおもい、話を続けます。
「テリーゼ、あなたはオルゴールなのにどう
して、その、、、歩けるの?」
「瑠璃が私に十一夜の刻をくれたのよ」
「私が?」
ハッとして。瑠璃は自分の手の中カギを見て、女神様の言葉を思い出していました。
「私、カギを回した。そっかそれでテリーぜ
に命が、、、これが十一夜なのね」
わかったっと納得していると、執事が
「ちょっと違います。」
「違うのー」
だって女神様が言ってたじゃんっとほっぺたを膨らませて執事をじっと見つめます。
「ちょっとです。ちょっとだけ違うんで
す」
「ちょっとだけってどれくらい」
「これくらい」
そう言ってふざけたように親指と人差し指で示すと、瑠璃と執事は吹き出して笑い出してしまいました。笑顔の執事がカギを瑠璃の手からとり、瑠璃に斜めがけにしながら
「瑠璃さんが命を吹き込んだのですが、で
も、テリーゼに命が吹き込まれたことが十
一夜ではありません。」
「じゃあ、十一夜って?」
瑠璃は、じれったい想いに掻き立てられるように早口で執事を問い詰めます。そんな瑠璃を諭すように
「瑠璃さんは、お母様と十一夜のお話をよく
していたんですよね。」
「うん」
「では、よーっく思い出してください。」
「えっと。誕生日が満月の日で。アミュレッ
トグラスが赤の子で。刻の執事が来て。え
っと、自分の事とか、将来の事とかを考え
る刻がもらえる、、、かな」
執事は良くできました。とまるで小さい子供を褒めているように手を叩いて言いました。
「それと、テリーゼとどんな関係がある
の?」
なんだか馬鹿にされてるみたいと不満なた頬を膨らませながら執事に尋ねると
「それはね」
耳元で穏やかな話し方のテリーゼとは違う、華やかな声がしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます