第13話 始まり

十三 始まり


瑠璃の素直さに女神も思わず微笑みながら瑠璃に告げます 。


「瑠璃、さあ あなたの待っていた十一夜ですよ。ここにいる、オルゴール達もあなたを待っていたのです。」

「オルゴール達?」

「そうです。あなたと十一夜を祝うオルゴール達。あなたがこのホールにいるオルゴール達に命を吹き込むのですよ。」

「私が?」

「そうです。」


女神を見つめる瑠璃は不思議そうに尋ねます。


「それが、十一夜? オルゴール達と十一夜をするのですか?」

「瑠璃。今宵 あなたが、命を吹き込むオルゴール達と祝いの刻を過ごすのです。

そしてオルゴールの中から一人だけ。あなたの夢と同じオルゴールを見つけるのです。そのオルゴールにそれを。」


女神様がそう言って微笑むと、瑠璃の右手の中に光が水のようにこぼれだします。


「あ、わあ、あ、ああ〜」


瑠璃が驚いて思わず右手を見ると手にゼンマイをまくようなカギが。

それはガラス、いいえ まるで星刻町から見える海のように透明で透き通っている。カギにはこぼれ落ちた光のような金色の鎖がついています。

金色の鎖がなければカギが手にあるのかさえ分からないほど透き通って。

驚いて女神を見上げると


「さあ、瑠璃。オルゴール達に命を そして見つけるのですよあなたの夢を。」


女神に言われた事の半分も分からなかってけれど、瑠璃は、うなずいてそして自分の手の中を見つめます。


「マリ、あなたもです。いいですね。あなたのはそこに。」


そう言って女神はオルゴールに視線を送ると、うす暗い中に淡い光が


「はい。」


そう言って、マリは視線の先にあるぼんやりとした光に近づいていきす。 瑠璃は、手にしたゼンマイを握りしめていると、執事が


「瑠璃さん、さあ。」


そう言って瑠璃をオルゴールの所に導き、台座の辺りを指して


「ここにそのゼンマイをまく鍵を。」


近づいってみるとオルゴールは、瑠璃と同じくらいの大きさでした。

その大きさに驚きながらも瑠璃はうなずき、膝をついて鍵を差し込むとゼンマイをまきだします。

ギーギーと錆びた音がして、思ったよりも力が必要。まき切るまで鍵を回しきると、背中から見ていて執事が


「瑠璃さん、次のオルゴールも。」


そう、声をかけられると、今度はにっこりと執事を見上げて


「はい。」


なんとも言えないくらいの透き通る声で返事をして、隣にあるオルゴールに小走りで走り寄り、さっと膝をつき 今度は手慣れたように鍵を差し入れてゼンマイをまきはじめます。

やはり、ギーギーと錆びた音。

瑠璃は次々とオルゴールたちの元に行きゼンマイをまきます。

うす暗い中にあるオルゴールは、四つ。あっという間に全部まき終わります。

瑠璃は少し離れたところでその様子を見ていた執事の所に走り寄り、ちょこりんと隣に立つと


(全部まいたと思うけど、、、)


何も起きないよっといった顔をして執事を見つめます。


「壊れちゃってるのかな。」


ギーギーとしていた音が気になり、執事に問いかけます。


「瑠璃さん。」


執事は、微笑みながらオルゴールの方に視線を送り、瑠璃もうながされるようにオルゴールを見ると。

ゆっくりと動き出すオルゴール達。

メロディーもゆっくりと響きだします。

四つのオルゴール達が奏でるメロディーは、まるで四重奏のように重なり合って美しくホールの中を踊るように流れます。

オルゴール達も音に合わせてクルクルと台座の上で軽快に動き。

いつの間にか薄暗かったホールに四つのスポットライトが落ちてきて、光に包まれています。

瑠璃に命を吹き込まれたオルゴール達はお城で繰り広げられている舞踏会のようクルクルと光をまといながら踊っているよう。

そしてメロディーが鳴り止むとオルゴール達も止まり。


「あっ、止まっちゃった。」


執事を見て


「もう一度まくの?」


そう尋ね、オルゴール達の元に行こうとすると


「待ってください。」


執事は、瑠璃の方にそっと手を伸ばし引き留めます。

静止を促された瑠璃が、執事の方を振り返って見ていると


コトン


と音が。瑠璃は、オルゴールがある方に視線を戻します。するとそこには、、、

バレリーナの姿をしたオルゴールが台座から降りて瑠璃に近づいてきていました。


「えっ」

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