神の手

ヘッドカメラ映像記録より

　00:00:00/15:29:22

　真っ暗な状態から切り替わり、手が映り、上下にぶれる。

【ノイズキャンセリング起動状態】

音声［うん、よし］

　02:16:45/15:29:22

　銃を抱えて座り込む兵士が立ち上がって、ぶれて景色が市街地へと切り替わる。家を示す手が映り、映像が前進してしっかりとしたレンガ造りの花壇に銃がのせられ、マズルが光る。閃光が画面に幾度か映って右に映像が回転、銃を持った男が正面に入り込む。

音声［（銃声）］

　画面下部から閃光が少しだけ映り込み、すぐさま男は肩に衝撃を受けて怯んだ。数秒後には胴体に4発被弾して倒れた。

　周辺の映像へ断続的に切り替わる。

音声［ローリー?］

音声［大丈夫ですか?］

音声［大丈夫、驚いただけだよ］

　05:58:03/15:29:22

　複数の兵士達の背中が映り次々と建物の壊れたドアへと入って映像も室内へ侵入した。

　06:10:21/15:29:22

　銃口を前方に向けながら廊下の奥へとスクロールしていたが、大きくブレて揺れ続け止まる。

　ブレの落ち着いた画面は先程の廊下であり、扉から銃を持った者が飛び出した。空中に上げられて何度かふらふらした手は画面下部へと消え、銀色の物体を握ってまた現れて画面上部へと消え、高速で画面奥方向へと伸ばされた。一直線に手に握られていた物は、廊下に立つ男の頸部へと沈んだ。

　手はそのまま下がってフレームアウトした。

　映像の高さが変わって廊下の奥へと進んで男の死体側の扉で回転、部屋の中にいた数名が何発も銃弾を浴びて床に伏した。

音声［作戦参加者に貴方の名前は無かったと思います］

　誰もいない室内に向って発言。左右に映像が揺れる。

音声［ホールデン!　無事か?］

音声［何してる。まだ敵はいるんだぞ］

音声［わかった］

　07:59:43/15:29:22

　黒煙の立ち上るレンガ造りの質素な家々が地を埋め尽くす光景。

　回転して無人の室内。

　08:00:57/15:29:22

音声［ドッグタグは多分、もう見つかりませんよ］

　08:01:05/15:29:22

音声［どうして、あんな事を?］

　08:01:09/15:29:22

音声［罪を重ねなくても良いでしょう］

　08:02:12/15:29:22

音声［一線は超えてませんよ。銃口を向けられない限りは］

　08:02:22/15:29:22

音声［安全装置もない暴発銃なんて信用できません。でしょう?］

　映像が僅かに揺れて右方向へ回ってから、窓の方へ。青い空が腐った木の枠の向こうに見える。

　窓とは反対へ回転して進んでいたが止まる。

音声［じゃあ、もう会うこともないでしょう］

　08:37:18/15:29:22

　握られた右手がフレームイン。開かれた手には何もない。

　再び握られた手は投擲の様相でヘリコプターの開けられたドアの方へと伸ばされる。同時に握られていた手は開かれていた。

　両の手が映り、手を腿に打ち付けて埃を払う。ゆっくりと画面が動いて青い空と砂に巻かれた街が映った。

音声［ふう、終ったか］