no41...ガイコツ騎士団
「ベネッサ。このガイコツさん名前が、ドラストリアなんだけど」
(まさかドラストリアの領主一族のご先祖様……?)
めちゃ強いドラストリアのガイコツ騎士とカグラが戦っていると、上の階から何本も矢が飛んできた。
「蜘蛛糸!」
矢程度なら私でも止められる。空いた左手から蜘蛛糸を出して、投網上の蜘蛛糸を作って飛んできた矢を全て絡めとった。
私はすぐ様、攻撃してきた上階を見るため光魔法ルーメンを上に向けると、驚くことに上階には百体を超える鎧を着たガイコツが剣や弓を構えていた。
「げっ! 何この数」
びっくりするのと同時に、チャンス!と手当たり次第に《すごい鑑定》で確認すると、私の知る領地名がチラホラ散見された。
「こっちは、ルーカス・フェルトグランに、あっちはミルスティア・オスティニア……。どのガイコツも名前に領地名が入ってるよ?!」
『このガイコツ騎士の鎧。我がいた時の時代の騎士団のモノだ』
カグラがガイコツ騎士の猛攻を捌きながら分析してくれる。余裕そうに見えるけど、結構すごいキンキンしてる。
(つまりガイア帝国が滅びた後、騎士団の子孫が中央のレティーナを含めた八つの領地を建設したという事ですか?)
『恐らくな……。このガイコツ騎士、本当に強いぞ』
(その先祖がなぜこのような場所で、しかも魔剣のしもべなどと……。それに誰がリナティス女王を倒したのでしょうか……)
『やはりさっきのあの感覚……。魔剣カグラが目覚めたのかもしれん』
「え、魔剣カグラが? やばいんじゃない?」
(涼音さん! 上!)
次の瞬間。上階の百体を超えるガイコツ騎士が一斉に魔法や弓を私に向けて放ってきた。
「やば!《形状変化》カグラシールド!」
ぐにゅんとカグラの刀身が歪むと広がって、私を包み込み盾となり、攻撃から私を守ってくれた。
『このまま一旦奴らの攻撃が止まるのを待つのだ!』
「わかった!」
しかし、直ぐに終わると思った攻撃は、一切手が休まらない。ドゴン!バコン!と無限に矢や魔法が飛んでくる。
いつまでこうしてれば……。あ、ポッケにおいし草がまだ残ってた。むしゃむしゃ。私が百体のガイコツの猛攻に耐えてる間にも、地上からは悲鳴の実況中継が流れてくる。
〉うわぁぁあ!
〉きゃぁああ!
〉やられてばかりいられるか!
〉サンダーボルト!ぐあっ!
〉どんだけスキルを持ってやがる!
〉無敵かよ!
「もしかしてなくても、魔剣カグラが目覚めてる?」
『可能性は高い。我の目覚めに呼応したのかはわからんが……』
「でも、この攻撃が止まないと……」
『これだけの物量で来られると動けぬな……』
気になってカグラを《すごい鑑定》を行うと、耐久値が減ってる事に気がついた。
「カグラ。耐久値が[すごい]から[なかなか]に下がってるよ?」
『恐らく攻撃受け続けると耐久値が減るのだろう。自動回復が追いついておらん』
「これ耐久値無くなるとどうなるの?」
『恐らく砕けて使えなくなる。武器の死だ』
「やばいじゃん……!」
数分経ってもガイコツ騎士団の攻撃は止まない。むしろ激しさを増している。
「カグラ、耐久値が[まぁまぁ]まで下がってるよ?!」
『まずいな……。このままでは……』
その時だった。甲高い男性の声が、私の歩いてきた背後から聞こえてきた。
「ベネッサァァァアアアア!」
「え? え? 誰か来た? 後ろから?」
「どぉこだぁああああ!」
『あれは……』
(フェルリオル王子?!)
私の後ろからマントを燃やしながら走ってきたのは、金色の髪にエメラルドグリーンの瞳をしたこの国の王子様。フェルリオル王子だった。彼を見た時、胸がキュンとした。
頬も高揚して熱くなる。どうしたんだろ。王子が恋しくてたまらない。私にはカグラがいるのに……。ふと、手に持った食べかけの【おいし草】を《すごい鑑定》してみたら、その原因が判明した。
=======================
惚れ草:すごくおいしいが、次に会った異性に惚れる
=======================
おおぅ……。やっちゃったよ。ベネッサに見つかる前に早く処分をと思ったら、王子が追いついてきた。
「ベネッサか?! 貴様ら! 私のベネッサに何をするッ!」
百体を超えるガイコツ騎士から攻撃を受けてる私を見るや否や、王子が私の頭上に飛ぶと腰の剣を抜いた。
「奥義――王命八剣!」
目を疑った。王子が腰には一本の剣しかないのに、その剣を抜くだけで、まるで手が増えたように何本もの剣が次々と放たれた。
「炎剣ドラストリア!」 周りの百体のガイコツが燃える。
「氷剣フェルトグラン!」 周りの百体のガイコツが凍る
「水剣オスティニア!」 周りの百体のガイコツを水で穿つ。
「草剣ロアルヴィア!」 周りの百体のガイコツが草で縛られる。
「石剣ユーロポルカ!」 周りの百体のガイコツが石化する。
「闇剣ディスライア!」 周りの百体のガイコツが闇に包まれる。
「鉄剣ザードクロス!」 周りの百体のガイコツが切り刻まれる。
「熱剣ワートリンデ!」 周りの百体のガイコツが熱で溶ける。
「――王剣レティーナ!」 周りの百体のガイコツが真っ二つになった
強い……。ベネッサの過去の話でも、王子は最強だと聞いたことがある。噂だと王子は八本の剣を操るって言ってたけど、実際には九本だった。
「ベネッサ!」
「わっ!」
王子が私を力強く抱きしめた。
「ベネッサ! 生きてるか?!」
「え? ええ、まぁ……」
「こんなにボロボロになって……」
あ、これはやばい展開だ!映画でよくあるやつ!浮気は出来ないので逃げます!
「交代〈スイッチ〉」
(え、ちょ涼音さん?!)
ぐわっと引っ張られる感覚が起こり、私はベネッサと入れ替わった。次の瞬間、私の予期して出来事は起きた。
「な、なにこの気持ち……」
「ベネッサ! よくぞ無事で!」
「ああ、王子ッ! ――んむ」
フェルリオル王子がベネッサに熱いキスをした。めっちゃ濃厚なやつだ。ベネッサも惚れ草の効果でノリノリなのか、王子の首に手を回して抱き寄せてる。
「ぷはっ。ベネッサ!」
「はぁはぁ、おうじ……んむ?!」
目がとろんとしたベネッサ。さらに王子がベネッサの唇を奪うが、どうやら本気モードになってしまった。だんだんとベネッサの足腰に力が入らなってきて、ふにゃふにゃになってきた。
しかし、倒れるのを許さない王子がベネッサの腰に手を回して支えると、ベネッサの身体が宙に浮いて足が真横まで上がった。イリュージョンキッスだ。
ベネッサの身体の奥に引っ込めば、惚れ草の効果は私の魂にまでは届かないらしい。別に王子を見てもなんとも思わなくなった。ベネッサが王子の胸をドンドンと叩くと、ようやく王子が唇を離した。
「し、死ぬ……はぁはぁ」
「すまん。ベネッサ、つい」
肩で息をするベネッサを、王子が優しく介抱する。それにしてもこんなところまで助けにくる王子、まじ、王子。
――配信累計時間:9時間35分
―――――――――――――――
この作品を読んで頂きありがとうございます
執筆の励みとなりますので、フォローと★で応援お願いします。
「面白い!頑張れ!」と思ったら★3を
「まぁまぁかな」と思ったら★1をお願いします。ペコリ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます