第四章 私とカグラ

no40...異変と出口

「なるほどねぇ。こうしてカグラは、あの岩に刺さりましたと」


(涼音さんがカグラさんと会うまで、いったいどれほどの時間を有したのでしょうね……)


 確かに何百年前の話なんだろ。それにしても最強の剣を持ったリナティス女王がいるのに、ガイア帝国は何故滅んだのかな、何があったんだろ……。


『なるほど……。おかげで全て思い出した』


「あ、カグラ意識が戻ったの?」


『ああ――。って、なんだこの形状は?』


 あ、やっば。爪切りにしたまま戻し忘れてた。


「あはは、なんでもないよ。カグラが反応ないから、ちょっと試してだけ! それにしても、なんかカグラの喋り方が流暢になった?」


『うむ……。記憶配信を見たせいか、ぼんやりしていた自我が戻ってきたようだ。頭はすっきりしている』


「よかったね。カグラ」


『うむ。そして我の魂はカグラというより、マサラの方かも知れん』


「どういうこと?」


(魂乃精錬でカグラさんとマサラさん、二つの魂が混ざったようですけどマサラさんの方が強く残ったのですね)


『そうだ。不思議な感覚だが、我はカグラでもありマサラでもある』


「ん。じゃぁ、マサラって呼んだ方がいい?」


『ややこしいだろう。カグラのままで良い』


「おっけー」


(しかし、魔剣カグラにリナティス女王、ガイア帝国ですか、フェルリオル王子を始めとする王族ならもしかしたら……)


 やっぱり、ベネッサも黒カグラの話やリナティス女王を知らないらしい。なら、黒カグラはガイア帝国が滅んだ時に壊れたか、どっかいっちゃったんじゃないかな。


『ちなみに――。この蜘蛛糸作品はなんだ?』


「え? あー」


 私たちの周りには映画館用チェアーが所狭しと並んでいた。


「あはは、ちょっとね!」


『……どうせ、最初の戦闘シーンで飽きてモノづくりを始めたのであろう。片付けておけ』


「はーい!』


 って言われても、一度出した蜘蛛糸ってどうやって戻すの? 魔力を物質に変換? みたいなことを無意識にやってると思うんだけど、わかんないね。うーん。燃やしちゃう? 蜘蛛糸すぐに燃えるし。


「えい! 煉獄魔法スプレットバースト!」


(涼音さん?!)


『バカモノ! ここは植物が多く――』


「あ! どうしよ!」


 水魔法はチョロチョロすぎて、とてもじゃないけど消せない。そうこうしてるうちに、【よく燃え草】に燃え移ったのか、火は一瞬で広がり次々と木に燃え移ってる。


 蜘蛛糸の作品もとても燃えやすく、いい燃料になってる。


「ああああ! 私のおいし草がー」


『仕方ない。ここはダメだ。地上に向かうぞ!』


(涼音さん! 先に進みましょう!)


「うううう……」


『全く余計なことを――』


「ご、ごめんなさーい」


 私は蜘蛛糸を木々の間に張ると、空間機動を駆使してピョンピョン飛びまわった。幸い巨大シェルロックリザードがモンスターは食べてくれていたみたいで、モンスターはいない。


 その後もカグラの指示に従いひたすら進むと、ついに植物エリアを抜けた。ここまでくればもう大丈夫かな?辺りは小さな岩でゴツゴツしてきた。最下層の岩は黒かったけど、この辺の岩は赤茶色をしている。


「はぁ、疲れた。カグラ、出口まで後どれくらい?」


『もう直ぐのはずだが、昔と地形が変わっていて、ここから先はわからんな……。どこかに上へ抜ける道があるはずだが』


「そういえば、だんだんモンスターが強くなってるけど、やっぱり昔と比べてモンスターの分布が変わってるの?」


『ああ、真逆と言っていいだろう。本来最下層が強く。上層階は弱いはずだ』


(絶死のダンジョンの入り口は無いと言われてます。恐らくガイア帝国が滅んだ時に入り口が塞がり、唯一の入り口が処刑所のみとなったことが、関係あるかもしれませんね)


『そうかもしれんな』


 なんか流暢に喋るカグラ、かっこいいな……。ちょっと年上の男性と喋ってるみたいで、ドキドキしちゃう。


 本当はめちゃくちゃおじいちゃんだけど、それは言わないでおこう。


『む。なんだ……? 嫌な気配を感じる……』


「ど、どうしたの?」


 まさか。私がおじいちゃんなんて思ったのを感知された?!

 ごめんよカグラ。悪気はな――

 その時、アナウンスが私の頭の中に流れた。


【配信累計時間が9時間を超えました】

【配信魔法のレベルが4へ上がりました】


 なんかレベルが上がった。


「あ、そういえばずっとコメント切ったままだった」


(コメント……ですか?)


「うん、地上にいる人の声が聞こえる魔法があるんだけど、うるさいからオフにしてたの。付けてみよっと《配信魔法》:コメントオン!」


〉ぎゃあああああ!

〉早く逃げろーーー!

〉なぜ俺たちをー!

〉王は民を捨てるのか!


「え? なんかすっごい悲鳴が聞こえてるけど……」


(地上で何かあったのでしょうか?)


 どうやら地上で何かが起きてるのは確かだけど……。でも、何が起きてるか確かめる術は無いし。出口が近いなら急ぐしかない。


 だんだん狭くなる道を進むと、岩に大きな亀裂を見つけた。地震か何かで最近割れたように見えて、中を覗いてみた。するとそこには、まるでお城の地下神殿みたいな場所だった。赤茶けた石で作られたその神殿は、あちこちに支柱があり、さらに上へと続く階段が見える。


『ここだ! 始まりのダンジョンの入り口だ!』


「え! もうゴール?! やったーー!」


(長い旅でしたね)


 その時だった。暗闇からガシャンと金属音が聞こえたと思ったら、突然ゴォオオという音と共に明るくなり火炎弾が飛んできた。


(涼音さん!)


 私はとっさにカグラを構えて火炎弾を弾き飛ばすと、その影から鎧を着たガイコツが剣を構えて飛び出してきた。


「ひっ! なにこのガイコツ!」


『このようなモンスターは見た事がない』


「でも現にいるよー!」


『強いな。こいつ、ただのガイコツではないぞ!』


 カグラが手こずるほどの手練れのガイコツ騎士、顔が骨なのでめちゃ怖い。でも絆が一定を超えたお陰か、いつの間にか下半身までカグラが動かしてくれてる。……うん。暇です。にっこり。ガイコツの顔怖いし、目を瞑っていたいけど、流石に悪いよね。今のうちに鑑定でもしておこうっと。


「えい。《良さげな鑑定》!」


【《良さげな鑑定》のレベルが上がりました】


【《良さげな鑑定》は《すごい鑑定》へ進化しました】


 ここにきて鑑定が進化した。草をたくさん調べたからかな? これで詳しい情報が……。


=======================

名 前:バルトルム・ドラストリア

種 族:人間 レベル:310

状 態:不死 固 有: ―

スキル:剣術Lv10 火魔法Lv10 体術Lv10 状態異常耐性Lv5 高速戦闘Lv4

攻撃値:すごい 耐久値:あんまり 機動値:すごい 賢さ:あんまり 魔力:あんまり

=======================


「え? ドラストリア……?」


 襲ってきたガイコツ騎士の名前には、何故かドラストリアの文字が刻まれていた。


――配信累計時間:9時間15分


―――――――――――――――

この作品を読んで頂きありがとうございます


執筆の励みとなりますので、フォローと★で応援お願いします。

「面白い!頑張れ!」と思ったら★3を

「まぁまぁかな」と思ったら★1をお願いします。ペコリ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る