no26...2in1の弊害
喉が乾いたので、蜘蛛糸で作ったコップで反魂の泉の水を飲みつつ二人に説明していると、突然アナウンスが流れた。
【配信累計時間が6時間を超えました】
【配信魔法のレベルが3へ上がりました】
なんかレベル上がったけど、いまは説明が先だよね。確認は後にしようかな。
私はベネッサとカグラに元いた世界の話を少しと、この世界に来てからの話。特にカグラには聞こえてなかった、コメントの話も混ぜて説明した。
(そうですか。やはりここが伝説の反魂の泉でしたか)
『なるほどな ここの水を飲んだから 死んだベネッサの魂が呼び戻されたのか』
「そうみたいだね。フェニックスの尾みたいな水だね」
『なんだそれは?』
「ああ、気にしないで前世の話」
『それでベネッサは なぜ殺されたのだ?』
(それがあまり思い出せなくて……。申し訳ありません)
ベネッサは復活した代償なのかわからないけど、話してみると記憶の欠如がひどかった。私が見た夢の話は鮮明に覚えていたみたいだけど、その後の記憶が飛び飛びらしい。
「あ、ちょっとごめんね。さっき配信魔法のレベルが上がったんだよね。まずは私のステータスを《ちょっと鑑定》」
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名 前:ベネッサ・ユーリーン
種 族:人間(テイマー★) レベル:105
固 有:王家の血筋
スキル:ちょっと鑑定Lv2 モブテイムLv1 光魔法Lv3 配信魔法Lv2 超級神剣術 神剣献上 雷神魔法Lv1 煉獄魔法Lv4 蜘蛛糸Lv7 操糸Lv6 悪食Lv2 水魔法Lv1
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あれ……。おかしい。あれだけストリングタラテクトを倒したのに、レベルは上がってるけどスキルレベルが一つもあがっていない。詐欺だ。
「ねぇねぇ。私のスキルが一個も上がってないよ?」
『お前は倒してないだろう』
「え? でも、ベネッサが倒したでしょ?」
『だから お前は倒してないだろ』
「はい? もしかして、私が表に出てる時に倒さないとダメなの?」
『当たり前だ』
えー! 納得いかない! ベネッサの人格が倒してても、それって結局私じゃないの?! お前の経験値は俺のモノ的な感じかと思ったのに!
(えっとですね。これはこの世界の常識といいますか、スキルは魂に宿るというのが定説なのです)
「ふむふむ?」
(レベルは肉体に宿り、スキルは魂に紐づいているので、涼音さんが倒さないと……)
「え、そういうこと? スキルは魂に紐づいてるから、ベネッサはサモンテイムが使えた。逆にカグラの神剣献上はベネッサの魂は持って無いから、モンスターを倒してもスキルを奪えなかった?ってこと?」
『そういうことだ』
ベネッサがカグラを持てば、勝手に私も強くなっていく楽々コースは無し?!
「ガーン! え、じゃあ待って? もしかして、ベネッサの肉体のテイマーって★ついてるけど……」
(★はマスターの意味でして、これ以上スキルレベルが上がらない事を意味してます)
「ダブルガーン! じゃあ私がいくら戦闘してもテイマースキルはこれ以上あがらない?」
『正解だ たまには賢いじゃないか』
「oh……」
なんてこった。エンドフィッシュをテイムしまくって、後で呼び出して食べる計画が……。そうだ! 良い方法がある!
「ベネッサ! ちよっと交代〈スイッチ〉するよ!」
(ごめんなさい。まだ少し体調が……)
「少しだけだから」
(わ、わかりました)
「ありがと。ちょっと待ってね。《蜘蛛糸》!」
私は蜘蛛糸でエンドフィッシュを一匹捕まえると、交代〈スイッチ〉を唱えた。再度ぐわっと後ろに引っ張られる感覚に襲われ、ベネッサに交代〈スイッチ〉。二回目だけど、心臓がヒュッてする感覚はまだ慣れない。
「あの、何をすれば……この魚は?」
(それをテイムして欲しいの)
「?? わかりました。《モブテイム》」
パァと光ると、エンドフィッシュのテイミングが完了した。
(じゃ、逃がして良いよー)
「? はい。わかりました」
『まさか そこまでして食べたいのか』
「え? 食べる? え? ……まさか」
(後でお腹空いたら呼び出して食べたいの!)
「え”」
『おい ベネッサが酷い声を出してるぞ』
ベネッサがぶるぶる震えてる。そんなに酷いこと言っちゃったかな? あの魚、美味しいのに……。
「まさかテイムした従魔を食べるなんて発想が……」
(大丈夫。食べるのは私だから。はいもう良いよー交代〈スイッチ〉しよ)
「それ私も食べますよね。物理的に……うぅ。わかりました。交代〈スイッチ〉」
ぐわっと前に押し出される感覚でまた私は肉体の支配権を手に入れた。どうやら表に出てる人格が交代〈スイッチ〉の意思を示さないと交代〈スイッチ〉出来ないらしい。
「そういえば、配信魔法もレベル上がったんだよね。どれどれ。ふんふふ〜ん」
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配信魔法
Lv1:コメ視聴:コメントが聞ける
Lv2:ゆっくり配信:ゆっくりになる
Lv3:記憶配信:指定した者の記憶を映し出す
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記憶配信? ふーん。あとで何かに使えるかな。
「あ、そういえば、ネルフィム様ってどうなったの?」
確か夢の中では、ベネッサがネルフィム様を治療してたけど、なんやかんや邪魔されてゴーレムを呼び出して蹴散らして……カッコよかったなぁ。
(記憶が怪しいのですが、確かネルフィム様は一命を取り留めました)
「あ、そうなんだ。よかったぁ〜」
(ですが、私は毒殺犯として逮捕されてしまって)
確かに、他の者から見たらネルフィム様に毒を盛り、邪魔をされたらモンスターを呼んで暴れたようにしか見えないよね。
(ただ、そこの記憶がやや曖昧でして……)
「あー! そうだ! それをこの《記憶配信》魔法で映し出せば、ベネッサの忘れた記憶をみれるんじゃないかな?」
『ほう それは便利だな』
(そんな便利な魔法があるのですか、私も気になります。お願いします)
「よし、やってみよー!《記憶配信》ベネッサ」
すると、空中に小さな画面が現れて、何やら映像が流れ始めた。どうやら牢屋のようだ。血が渇いてパリパリになったドレスを着たベネッサが、力なく横たわっているのが見えた。可哀想……。
〉なんだあれ? なんか見てるぞ!
〉配信魔法っぽいな。遠すぎて見えん
〉配信スライムの奴もっと寄ってくれよ
〉ちくしょー! 気になるなー!
どうやら小さすぎて、外の人達からは見れないみたいね。そういえばここにくる前、これの大型版に私の様子を写してたけど、あれってどうやってるんだろ
そんな事を考えていたら、若い男の声が聞こえてきた。
「ベネッサ・ユーリーン。出ろ、釈放だ」
おっとビックリ。便利な音声付きだ。やったね。
映像の中では、兵士がガチャガチャと牢屋の鍵を開けてる。
(あぁ、思い出してきました。捕えられた私は三日ほど牢屋に閉じ込められて、その間いろいろな調査が行われたと聞いています)
「三日もこんなところにいたの? ひどい……。でも容疑が晴れたなら良かったね」
(それが、そうでもないのです……)
トーンの落ちたベネッサの声からは、悲しみの色が滲み出ていた。
「あ、まずい……」
映像が流れ始めてしばらくしたら、意識が朦朧としてきた。さっきの舞踏会の夢を見た時と同じだ。
私は咄嗟にカグラを握ると、意識は夢の中へと吸い込まれていった。
――配信累計時間:6時間25分
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