告白8
紀子は仕事からの帰り道、喉の奥を何かがつっかえたような、気持ちの悪い違和感に襲われていた。あと少しで何かが見えてくる気がする。
私は昔、虐められていた。
だけど、なぜいじめられたのだっけ。とても些細な理由だったような気がする。
そう、たしか「目立ち過ぎたから虐められた」。
こどもの世界とは残酷だ。少し、みんなと違う、反応が面白いという理由だけで暴力的制圧が起こる。それは大人たちの、みんなを平等に扱おうとする教育方針を逆手に取った行為だ。
「お前って変わってるよな」
「気に入らない」
「ほら、みんな言ってるじゃん。お前ってやっぱりヘンだって。きっとやりすぎなんだよ、やることぜんぶが」
「あんた先生にチクった?」
「だめだよ、そんなこと言っちゃ。先生だって言ってるじゃん。どうとくの時間にさ。みんなびょうどうだって。ヘンな人はだれもいないって」
「触んな」
「なんでのりちゃんってそんなに変なことばっかりするの?」
「自己チュー」
「やめて」
紀子は別のことを考えようとして必死に高校で習った様々な数式を思い出そうとした。だけど記憶の波は止まらず彼女の頭蓋を揺らす。
言葉の暴力が次第に拳の暴力に変わったのはいつからだろう。それはきっと、とある男の子が私を蹴ったことから始まった。そう、たしか私を使って遊ぼうとしたのだ。
「こいつ、今からサッカーボールな」
そう言って笑いながら私を蹴った男の名は。
小城裕也。
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