あなたの、ゆらぎ

当日は曇りだったと思う。

いつもなら集合前に駅で一服つけて行くのだが、なぜか躊躇いがあってそのまま合流しようと足早に現地へ向かう。

大学生の頃によく通ったゲームセンター前での待ち合わせに少し早く着いた。


「木下です、覚えてないかもしれないけど」

見知った顔を数名認め、控え目に声をかける。


何名かは覚えてくれていたようで、少ないながら思い出話に花が咲く。

話していくうち、その中の一人だけ、雰囲気は柔らかいのに何か不安になるゆらぎを感じさせる人がいた。

確かエミといったな、と思い出す。

私は昔からどういうわけか人のゆらぎにはよく気付いてしまうようで。

時折陰の差す表情、どこか芯のない声、貼り付けたような笑顔。

それらが記憶の中のエミとは違っていて、妙に気になった。


訳あって仕事以外で他人に深く関わらないよう、それが当たり前になるよう過ごしてきた私にとって、そうして以来初めてのことで我ながら戸惑い、頭を振って気を取り直す。


ひとしきり遊び、雰囲気もよくなった後の食事会で、集まったうちの一人からよい報告があった。

周りから「どっ」と祝福の声が上がった中、私はどうしても気になることがあった。


まただ。

エミだけ様子がおかしい。

頭の端のほうがチリチリと火花を上げる度、その変化に気付いてしまっていた。


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