第19話
「おかえりー。おーおー、なんか重そうな荷物持っちゃって。買い出し?」
「……ただいま。食べ物で使う砂糖を買ってこいって言われて」
「いいねえ、買い出しなんて高校の文化祭らしいわ。あー、あたしもやったなー、飲み物だったけど。いやー、楽しみだね。いつだっけ?二週間後とか?見に行くからね、、、やっぱいい歳してお姉ちゃんに文化祭来られたら恥ずかしいか、、やっぱりやめるわ。」
「うん」
「あたしが高校生の頃はね…」
大学生になって自動車免許を取った姉は高校生になった僕の送り迎えをする係となった。初めの頃は学校まで送り届けてくれる勢いだったが、僕に友達ができていなさそうだということを鋭い勘で悟ると、学校から駅までは人と歩いて交流を深めな、と送り迎えは駅までになった。僕の前ではいつも明るく振る舞って話しているが、本当はママっ子で母親がいなくなったことを一番悲しんでいたのは彼女だっていうことも知っている。でも怒りや悲しみやどうしようもない胸の苦しさを僕に見せることはなく、いつでも僕の背中をさすってくれる人だった。
「ねえー、聞いてる?」
「あー、うん。聞いてる、聞いてる」
「もーう。それ絶対聞いてない人が言うセリフなんだけど」
「ごめん、ごめん」
家に着けば姉さんは僕のためにご飯を作ってくれる。夜遅くに帰ってくる父さんの分も忘れずに。
「……あのさ、姉さんは……」
ご飯も食べ終わり、姉さんがお皿洗い、僕がタオルで拭いて棚にしまうといういつも通りの流れの中で聞くつもりだった。母さんを失ってから僕の第二の母のように世話をしてくれて本当に満足しているのか、いや、してるわけはないんだろうけど。だって姉さんは家族のためにと、夢に見ていた看護師を諦め、大学進学もやめようと思っていたところに学力優秀者の奨学金が受け取れる制度を知ってようやく大学に行くことを決意したくらいなのだから。今だってバイトをいくつか掛け持ちしている中で僕の送り迎えも、家事もある。ご飯作りなら、と一度挑戦してみたこともあるが、結果キッチンを無残な姿にしてしまったことから、ご飯作りも禁止された。
「うん?何かあった?」
「……ううん。なんでもない」
「……そう?何かあったら言うんだよ。」
「うん、分かってる。姉さんもね……」
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