第15話

本を読んでいると時間はとっくに過ぎてしまうもので、下校時刻のチャイムがなるまで不自然な体勢で本を読んでいても腰が痛くなっていることには全く気がつかなかった。

「ああ、よく読んだ!」

「……いいお湯だった、みたいに言うね」

「だって実際そうじゃん?」

「そうかもね」

何がいいお湯なのかさっぱりわからないが、紺野さんは納得しているらしいのでよしとしよう。

「ねえ、早くー門閉まっちゃうよー」

「さすがに閉まらないでしょ」

「そんな呑気なこと言って本当に閉められたらどうするの?学校ってほら、出そうじゃない?」

「紺野さんこそすごく嬉しそうにしてるけど、、僕はさっさと帰ります」

「えー、違うでしょ。そこは、俺が守るっ、でしょ」

くだらないことばかり言ってちっとも椅子から降りないから不安になって振り向くと、ニコッと笑う彼女がいた。

「……帰らないの?」

「帰るよ、帰る。そんな悲しそうな顔しないでよ」

「……してない」

「いや、絶対してた!私見たもん」

「……見てない」

「見た!」

「……眼科行きなさい」

「私視力どっちも2.0ありまーす!」


彼女といる時間は尊くて、切ない。

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